軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ⑦

掛かれば、ヨシ。

掛からなくても、採掘場への接近を阻止できれば、それもまた、ヨシ。

犬系はイノシシと同じぐらい鼻が利くけど、餌の臭いが人間の臭いを掻き消してしまう環境を作ってしまえば鼻は潰せるはず。

鼻さえ利かなくしてしまえば犬系の動物をワナに掛けるのは難しくない。

犬系って視力はそんなに良くないからね。

人間の視力検査で言えば、0.2とか0.3とか、そのぐらいだったはず。

経験して学習すればワナを避けるようになる可能性は有るけど、所見で避けられるかな?

ただでさえ魔獣は警戒心が薄いし、きっと掛かると私は踏んでいる。

もしも、初見でワナに気付いて避ける賢い個体が居たとしても、総数を削れればリスクを抑えて討伐に取り掛かれる。

せっかく向こうから来てくれる火属性の魔石を逃がしてなるものか。

「なるほど。餌か」

「採掘場のバイコーンを使うのだな。ヨシ、それで行くとしよう」

ハインズ様とお爺様が目線を合わせて頷き合う。

合意を見届けたハロルド様が口を開く。

「そっちの話が終わったなら、領地に話を戻そう」

「委任統治の縄張りか?」

ハインズ様からの確認にハロルド様が頷いて返す。

「陛下から、ヴァンス家とライアー家の昇爵を指示されていてな」

「エゼリアとアンリカを出させたことに対する補償か」

片眉を上げるお爺様にお母様が要求を提示する。

「他の傍系も主だった家は併せて昇爵させておきたい」

「ふむ。新領地の騎士との区別か」

お爺様へ頷き返しながら、お母様の目が私へと向けられた。―――、私?

「移民対策でも有るな」

「西部―――、いや、エクラーダの流出民か」

お母様の目線を追ったお爺様が、私の顔を見て小さく頷く。

ああ、そっちか。

お母様は「来る」と予想してるんだな。

ハロルド様も頷いている。

西部地域からの移住民が期待したほど来ていないから、エクラーダ王国の流出民も話半分だと思っていたけど、大人たちはみんな「来る」ものだと考えているらしい。

地続きの大陸国だと、そう見るのが当たり前ってことかな?

日本は海に囲まれていたから難民や流出民なんて現実感が無かったけど、ネット上のニュースでは珍しく無かった気がする。

私も、いい加減、感覚を切り替えなきゃね。

今は良くても、そのうち人の流入に頭を悩ませる未来が来るのかも。

「末端が増えるなら、頭を抑えておく必要が有る」

「良かろう。フレイアの側近たちには此度の戦役でも苦労を掛けたしな」

ハロルド様が指摘した必要性にハインズ様も頷いた。

それって、新人を指導させるのに肩書きを与える的な?

ハインズ様の承諾を見届けたお爺様が次の指示を出す。

「ワールター。案を固めてくれるか?」

「新領地の財政状況と収穫高の精査を踏まえた上で、と、考えてよろしいでしょうか?」

「ああ。頼む」

ワールターさんに目を向けられたハインズ様が、お爺様の指示を追認する。

方針の確定を得てワールターさんがニッコリと笑う。

「フィオレ様が旧領主勢力を相当に削っていただいたそうですから、多少はマシな案が出せるかと」

こちらこそ、だよ。ロス家の人たちには細々と助けて貰ってるし。

ここは、推しどころかな?

通るかどうか分からないけど、お願いするだけしてみよう。

「・・・ハインズ様。昇爵と委任統治領の割り当てには、ロス家も対象に含めていただけませんか?」

「む? ロス家をか?」

ハインズ様が意外そうな顔をする。

ロス家はウォーレス家の直臣だから、ピーシス家の私が差し出口を挟むのは出しゃばり過ぎなんだけど、義理に報いて引き寄せておきたい。

今後もお世話になる気マンマンだし。

「・・・はい。王都に居る間、ヘイナーさんを含めたロス家の方々には助けていただきましたし、今後はロス家の負担が増えると思うのです。現状でも、ここ数年は手が足りずに、作付けの監督にも目が届かなかったと聞いています」

困っている状況が耳に入った以上、放ってはおけない。

小麦の消費量を増やす消極的対策だけで無く、積極策との両面で状況の打開を図った方が確実性を追求できる。

「フィオレ様・・・」

「・・・人を育てるにも先立つものが必要でしょうし、目立たない部分で支えてくださっているロス家に報わせていただければと」

感動した面持ちのワールターさんと私の顔を見比べて、ハインズ様が目を細める。

「どうする? ワールター」

「フィオレ様のお心遣い、有り難く頂戴できればと」

「ヨシ。レスリーとライアスとも相談して割り当て案を出してくれ」

「「「は」」」

ハインズ様の指示に、ワールターさんだけでなく、レスリーさんとライアスさんも同時に応えた。

ハインズ様の承認を得られたから、領地の件は処置できたかな。

ワールターさんのことは信頼しているし、後顧の憂いが無くなれば、私は前だけを向いて突き進める。

ところが、これで話は終わらなかった。

「ハインズ様。返礼のような形なってしまって心苦しいのですが、私からも相談がございまして」

ワールターさんが居住まいを正してハインズ様に向き直る。

ハインズ様が首を傾げる。

「礼? 何のことだ?」

「ヘイナーに付けておりました配下の内、数人が、フィオレ様の下に付きたいと強く申し出ておりまして。お許し頂けるなら、フィオレ様にお預けできないかと」

ん? また、私?

面白そうに目元を笑わせたハインズ様がワールターさんから私へと視線を移してくる。

「ほう? ルナリアではなくフィオレの下に、か」

「この度、フィオレ様は側近の中で最年長のアリアナを失われましたので、穴埋めをする必要もございましょう」

「・・・むー。失ってないよ?」

いくらワールターさんでも、それは聞き捨てならないな。

アリアナさんが「居なくなった」なんて既成事実を定着させられては私が困る。

アリアナさんは出向しているだけで、ウチの社員だよ。

むくれる私にワールターさんが目を細める。