軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ④

唸る私の頭に、お母様がポンと手を置く。

「だからこそ研究するんだ」

「・・・うん。そうだね」

背中を押してくれるお母様に頷いて返す。

「やってみる価値は有りそうだが、どう調達する?」

「あそこが有っただろう。死霊系の迷宮が」

ハインズ様の問いに、お爺様が答える。

いつものやり取りだけど、聞き捨てならない単語が有ったよ!

「・・・めいきゅう?」

名弓? 逸品の弓? いやいや、「めいきゅう」って、まさか・・・。

私の向かい側に座っているルナリアが目をまん丸にしている。

きっと、私も今、ルナリアと同じような顔をしていると思う。

私たちの反応にチラリと視線を投げて目元を緩めながらも、ハインズ様はお爺様との意見交換を続ける。

「“嘆きの迷宮”か?」

「自前で調達すれば安くは上がろう」

お爺様も目元を緩めながらハインズ様に答える。

「・・・迷宮!? ふおおおおおお!」

「わたしも行ってみたいわ!」

何てことだ。予想外の単語が出てきてワクワクが止まらない。

ダンジョンが近くにあるのか!

「お前たちは、まだダメだ」

ファンタジーの代表的要素の一つに興奮するルナリアと私を、バッサリと斬って捨てたのはお母様だ。

「「え~っ!!」」

私たちの声がハモる。

「どうして!?」

「討伐する以前に、死霊系の魔物と相対するには、先ず、防御術式を身に付ける必要が有るんだ」

ルナリアの抗議に、お母様は明確な回答を示す。

「・・・防御?」

「死霊系の魔物は命ある生物に反応する性質が有るのだ。生気を吸い取られるから防御術式が使えんと戦うことも出来ぬ」

お母様の回答にお爺様が補足を加えてくれる。

生気を吸うってことは、ファンタジー系でよく有る“ 生命吸収(ドレイン) ”系の攻撃を受けるのか。

それって、幽霊にしてみれば、ただの捕食行為?

魔物の性質よりも、分からないのは、こっちだ。

「・・・死霊系にも防御魔法は有効なの?」

「多少は弱められるが、ゴッソリと吸われることは防ぐことが出来るぞ」

ギュッと固めた魔力なら吸収率が落ちる、と?

「・・・取り憑かれたりするの?」

「憑かれると異常行動を取ったりはする。だが、殺されなければ、体を乗っ取られるというようなものでは無い」

ハインズ様が、気になる言い方をする。

「・・・殺されなければ?」

「生気を吸われ尽くして衰弱死すると、そのまま 不死者(ゾンビ) の仲間入りだ」

「よって、憑かれる前に討伐せねばならん」

憑き殺されるのか。

どんな結末を迎えるのかを教えてくれたお爺様の後を、ハインズ様が引き取った。

日本的な幽霊よりも、西洋的なイメージ?

いや、どっちも似たようなものか。

ルナリアが首を傾げる。

「剣や魔法で倒せるの?」

「普通は無理だな。スケルトンやゾンビのように実体がある種類には効くが、実体の無い霊体系は、剣も魔法も素通りして効かぬ」

「・・・はー。魔法も効かないのか」

火でも水でも風でも土でも、魔法の効果とは最終的に物理現象だ。

つまり、物理的効果では倒せないってことになるね。

ルナリアが難しい顔になる。

「そんなの、どうやって倒せば良いの?」

「普通は、光術式を使える者に浄化させるのだ」

「私の剣なら斬れるんだがな」

「硬化術式を使える者なら殴り倒すことも出来るぞ」

ハインズ様とお母様とお爺様が、それぞれに違った答えをくれる。

傷口のバイ菌と同じように消毒するのと、魔力を通した剣で斬るのと―――、こうか? 効果?

「殴る」ってことは「硬化」、かな。

幽霊って殴れるんだ?

物理攻撃無効なのに硬化させれば有効とか、禅問答かな?

光魔法も、私のイメージだとバイ菌が傷口で増殖する前まで戻す感じなんだけど、普通の治癒魔法術師なら魔力でのゴリ押しで「消えろ~」って念じるんだろうね。

魔力の消費効率がメチャクチャ悪くなりそうだけど、テレサが初めの頃に言っていたイメージと同じなら、そうなるんだと思う。

だとしたら、私のイメージで「浄化」は難しいかな。

バイ菌なら紫外線照射での滅菌でもイメージ出来そうだけど、幽霊が紫外線で死ぬとは思えない。

無いよね?

お母様の剣でなら幽霊も斬れるって理屈も謎だな。

私と違った意味で方法論に思考を引かれたらしいルナリアが、首を傾げながら質問を投げ掛ける。

「こうか術式って、何?」

「身体強化術式の一種だ。力を強化するのではなく、こう、体を鎧のように硬くする」

グッと握って見せるハインズ様の、ごっつい右拳に魔力が集中するのを感じる。

体内の魔力を集めて固める感じかな?

魔石を通した魔力の手では私の体内で魔力を固められるんだろうか?

後で試してみよう。

身体強化に関してルナリアに大きく後れを取っている私としては、もうちょっと情報が欲しいな。

「・・・全身を?」

「いいや。全身を固めるには体内魔力が足りん」

百戦錬磨のハインズ様でも、そうなのか。

体全体を硬化させて全身甲冑みたいなイメージで身を守るのは魔力消費的にムリと。

身体強化魔法って、結構、体内魔力の消費量が大きいものね。

やっぱり、ルナリアの方が、これは得意なんじゃないかな。

身体強化魔法みたいに、部分的に手足や防御箇所を硬化させる。

私の場合は、魔力の手で自分を包み込んでガードした方が早いのかも。

ギュッと固めた魔力の手で殴れば攻撃も通りそう?

硬化魔法を実演して見せてくれたハインズ様が再び渋い顔になる。

「ううむ・・・。しかし、“嘆きの迷宮”か。結構、深いぞ?」

「・・・深い、というのは、深い迷宮なんですか?」

大きな迷宮だったらおカネになったりする?

宝箱とか見つかったりするんだろうか?

誰が宝箱を置くのか、って疑問は拭えないけど、やっぱり、ワクワクするよね。

「いいや。迷宮自体は3層ほどしか無い浅いものだ」

「・・・うん? すると、深い、というのは?」

なぁんだ。一気におカネの臭いがしなくなったよ。