軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ②

リソースは有限なんだから、それは確かに無視できない部分だな。

「・・・すでに城壁内の冗長性が低下しているのですね・・・」

「畑は、どうするんだ?」

お母様からのツッコミに、頭を抱えたくなる。

うーん・・・。現状でも土地は有るのに土地が無い?

治癒魔法術師の育成施設は将来的な規模の拡大が予想できるしなあ。

スライム畑もだけど、欲しい施設は治癒魔法術師のものだけじゃない。

「・・・それなんだよね。ピーシーズの増員だけじゃなく、アスクレーお兄様の側近も育てる必要が有るだろうから、男女を問わない騎士の育成施設も必要じゃないかと思ってたんだけど」

ピーシーズの増員規模も考えれば、最低でも100人規模を受け入れられる騎士育成施設が必要になるんじゃないかな。

可愛い甥っ子の名前が出て、お母様とお婆様が顔を見合わせる。

主体はピーシーズだけど、多めに育ててアスクレーくんを守って貰わないと・・・。

あれ?

そう言えば、レティアへ帰ってきたのにアスクレーくんの顔を見てないな。

気付いて私はハッとする。

もしや、呆れて逃げられた!?

喪女の気配を察知された!?

いや、待て。家族会議で決まった私のお相手としてアスクレーくんを前提に全てが動いているのに、セリーナ様やお婆様がアスクレーくんを逃がすとは思えない。

ちょっと聞くのが怖いけど、聞くしか無いよね。

「・・・あの。そう言えば、アスクレーお兄様の姿をまだ見ていないのですが、どこに?」

「アスクレーなら、ファーレンガルド領へ帰っているわ」

「・・・そ、そうなのですか?」

それは、実家へ帰らせていただきます、的な?

「今、ファーレンガルド領では“珍しい魔獣”が出ているらしくてね」

「・・・そ、そうなのですね」

私の体から滲み出る陰気な空気に当てられて実家へ療養しに帰ったわけでは無い、と。

アスクレーくんのことは、ずっと放ったらかしだったしなあ。

別に嫌って放ったらかしにしていたわけでは無いし、ホッとしている私がいる。

私の心中を見抜いてか、クスリと笑みを漏らしたお婆様が話を軌道修正する。

「アスクレーの側近については、すでに数人の候補者を挙げてはいますが、もっと増やしておくべきでは有るわね」

「領軍の規模を大きくするつもりなのであろう? 質の底上げも狙うなら、多めに育てて領軍の指揮系統に組み込みたいところだな」

お母様たち以外も頷いている。騎士養成施設の構想自体は、みんな概ね賛成なんだね。

「・・・採掘場もだけど、治癒魔法術師と騎士の育成施設で、どのぐらいの敷地を取られると思う?」

「騎士団やアカデミーの例で言うなら、小さな町ひとつ分ほどの土地が使えなくなるぞ」

えっ! マジ!?

「・・・そんなに必要なの!?」

「学舎に、宿舎に、訓練場に、厩舎に、馬場に、そこで働く者の宿舎も必要なんだぞ?」

驚く私の前に手を翳して、お母様は指折りして数え上げてみせる。

治癒魔法術師量産計画の方は採掘場で実技を教え込むつもりだったから、採掘場の拡張と生徒が寝泊まりできる宿舎を建てるぐらいで済むと考えていたけど、私の見積もりの甘さを指摘された。

よくよく考えると、騎士を育てるってことは、レティアの領主館周辺の施設と同じぐらいのものが新たに必要になるんじゃ。

「・・・うええ。それはスライム畑用の土地が、完全に足りなくなるなあ」

「限られた土地を有効に使うのも領主の務めだ。収容人数から算出して、よく計画を練れ」

「・・・うう。分かった」

お母様と私のやり取りに、お爺様の目がお母様へと向く。

「フレイア。スライム畑とは何の話だ?」

「農地にスライム避けの魔石を埋めるだろう? アレを低価値な魔石でやれないものかと、研究したいんだ」

お母様の簡潔な説明で、聞き手に回っていた全員の目に理解の色が見て取れた。

ただし、何がしたいのかは理解して貰えたみたいだけど、出来るかどうかは別問題だ。

難しい表情になったセリーナ様が、こめかみをぐりぐりと揉み始める。

「それは、今、しなければいけないことなのかしら」

「そうね。塩と干し肉での好況で資金に余裕は有りますが、無限にあるわけでは無いのですよ?」

むむ。セリーナ様は反対?

お婆様もセリーナ様と同意見かな?

「・・・もちろん、それは分かっているのですけど、治癒魔法術師量産計画と同時に広めた方が情報拡散の効率が良いと思うのですよね」

「情報拡散だと?」

ハインズ様とお爺様も怪訝な表情になる。

あ、しまった。スライム畑って王都で思い付いたことで、レティアに居たハインズ様たちからは、まだ了承を貰ってなかったっけ。

「・・・クローゼリス家も研究に前向きで、ご協力いただけるそうなのですが、良い成果が確認できれば、テレサと王妃様を通じて領地経営に苦しんでいる“融和派”にも広めていただく予定になっているのです」

“融和派”という言葉に、室内の空気がザワリと揺らぐ。

「“融和派”にも広めるだと?」

「既に王家を巻き込んでいるのか」

ハインズ様もお爺様も、セリーナ様もお婆様も、ついでにエゼリアさんたちもポーションを一気飲みしたような表情になった。

エゼリアさんたちの前で、この話はしていなかったけな。

「ちょっとお待ちなさい。どういうことなのか分かるように説明なさい」

「・・・食料生産率を向上させる情報を王家を通じて流布することで、恩を売ると同時に王国全体の国力向上にも繋げられるのでは無いかと思い付きまして」

私の真意を測りかねているのか、みんなが、それぞれに問うような目線を交わし合っている。

頭痛が酷くなった様子のセリーナ様は、女性らしくお上品に片方のこめかみを揉むのを諦めて、手のひらでご自分の目元を覆って両のこめかみを同時に揉み始めた。

ルナリアがお母様によくやられてる、このプロレス技の名前って、" 脳天締め(アイアンクロー) "だっけ?

いやまあ、セリーナ様がプロレスファンなわけも無いし、違うのは分かってるけど。