軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ①

「そう・・・。アリアナを出したのね」

「・・・貸しているだけですよ? アリアナさんは、うちの子です」

お婆様が感情を抑えたように情報を反芻する。

細かな指摘かも知れないけど、やんわりと指摘しておく。

アリアナさんは、あくまで出向社員だ。

拡大解釈で済し崩しにアリアナさんの所属を王宮に移されては困る。

アリアナさんという存在がテレサの傍に在ることで、万一の際に介入の口実にするんだから。

「そうね。そういうことに、しておきましょう」

私の言い草に、お婆様が苦笑する。

いくらお婆様でも、ここは退けない部分だよ?

「しかしまあ、あの叔母様とケンカをするなんて、大したものだわ」

「・・・もう、勘弁していただきたいです」

セリーナ様は呆れたように首を振るけど、そこはアリアナさんと負けずに説得しきった私を褒めて欲しい。

その状況に至った経緯はお母様が最初に説明してくれたから、私の”出自”が判明したことについても情報共有はできている。

セリーナ様の反応は、全ての経緯を聞いた上でのものだ。

私の”真の出自”を知っている、私の両隣に座っているハロルド様とお母様が苦笑する。

3人掛けのソファーに並んで座っているセリーナ様とお婆様の間には、半月ぶりに手元へ戻ったルナリアとノーアが捕獲されていて、“お手つき”みたいにシュパパパパっと手のひらを合わせ合って遊んでいる。

お手つきにしては手の動きが速いな。

あれって、お手つきじゃなく、ボクシングのミット打ちみたいな猫パンチ打ちなんだろうか?

まあ良いや。

ルナリアたちを意識の外に置くようにしてセリーナ様へと目線を戻す。

私だって好き好んでケンカしたわけじゃないから、自己弁護というわけではなく、正直な心情のみを表明しておく。

済んだことだし、カレリーヌ様とは和解できたと思うから、それ以上は言う必要もない。

私の言い分に、ハインズ様の後ろに控えているワールターさんが笑いを込み殺している。

ハインズ様とお爺様は諦め顔?

夕食の場に引き続いてティールームで行われている今夜の家族会議は、ウォーレス領と新ピーシス領の2領地の指針を確認するためのものでもあるから、エゼリアさんたちと、エゼリアさんとアンリカさんのお父さんであるレスリーさんとライアスさんも参加していて、拡大会議のようなものとなっている。

10脚も追加の椅子が持ち込まれているから、ゆったりと余裕がある広さのティールームでも、まあまあ人口密度が高い。

改めて、セリーナ様の目が私へと向く。

「それで。叔母様が、レティアへいらっしゃるのね?」

「・・・王妃様にも改めてお願いしましたので、ほぼ間違いなく、そうなるかと」

セリーナ様の確認に私の所見を伝える。

色々と準備しておかなくてはいけなくなったウォーレス領にとって重要な情報だ。

その場の勢いで私が勝手にお誘いを掛けたのだから、叱られる覚悟をしていたけど、そうはならなかった。

私の答えに、ハインズ様とセリーナ様だけでなく、お爺様とお婆様も痛ましそうな表情になる。

「カレリーヌ様ご自身にとっても、王都から離れるのは良いことでしょう」

「そうね。離れる気になってくれたのなら幸いだわ」

やっぱり、セリーナ様もお婆様も、カレリーヌ様の様子を気にしていたんだな。

気にしていたからこそ、女性騎士を出せという要求を受け入れたのかも。

そうならそうと教えてくれれば良いのに。

いや。前もって伝えられていたとしても、結果は何も変わらなかったかな。

思うところは有っても、全ては、すでに決着したことだ。

指向を切り替えて次の段階に取り掛からなくちゃ、間に合わなくなる。

「・・・ピーシーズ増員計画が最優先ですが、治癒魔法術師量産計画の下準備も急いだ方が良いと考えています」

「アマリリアと陛下に加えて叔母様まで前向きなら、計画の規模が大きくなりそうね」

セリーナ様から向けられた確認する目線に頷いて返す。

たぶん、そうなる。

ミリア叔母様が動くだけじゃなく、口コミは舐めていられないものだ。

実際に治癒魔法術師が増える様子を目の当たりにすれば、きっと、人が人を集めて計画は加速する。

情報伝達速度が遅いことで多少の時間的猶予は生まれるだろうけど、時間的な余裕は無いと思う。

「・・・幸い、新領地を下賜いただけたので、治癒魔法を学びに来る人たちの受け入れ施設を建設したいと考えているのですが」

「必要だろうが、新領地に作るのか?」

お母様の懸念は防諜面かな?

難しい顔で問うお母様に首を振って返す。

「・・・怪しい人が混じるのは阻止できないと思うから、出来れば隔離したいかな」

「隔離というのは、城壁外、という意味か?」

思惑を読み取ってくれたハロルド様に頷いて返す。

通り抜けるだけとか買い物に来るだけなら兎も角、レティアの町中や新領地の領都内に怪しい人たちの拠点を作らせたくない。

「・・・はい。レティアの町と新領地の領境付近の原野に新しく建てるのは、どうでしょうか?」

「“魔の森”を拓くよりは、容易ではあろうが・・・。ううむ」

うん? ハインズ様は否定的―――、いいや、何か問題点が有るのかな?

もう一押ししてみるか。

「・・・学びに来た人たちが逗留するということは、領内に拠点を作られるのと同じだと思うのです。町の外なら、怪しい動きが有ったときに施設ごと封鎖して制圧しやすいのではないかと」

「そうだな。城壁外に置いておけるのなら、その方が脅威は小さくて済む」

ハロルド様は前向きかな。

でも、ハインズ様とお爺様の表情は渋いままだ。

「しかしなあ。余り近くに置かれると、将来的にレティアの拡張の余地が無くなるぞ」

「・・・拡張ですか?」

まだレティアの町を広げるの?

お爺様の言葉に私の首が傾ぐ。

「西部国境地域からの移住民も、まだ来る可能性が有るのであろう? 規模は読めぬがエクラーダからの流出民が来る可能性も有るとなれば、レティアの拡張も視野に置いておかねば受け入れられなくなるぞ」

「そうだな。城壁内の余剰農地も住居用に転用しておるしな。籠城時の持続性に鑑みれば、これ以上の農地を潰したくない」

そっか。移住民の住居用地で農地が食われているのか。

レティアの町は、長期の籠城戦を想定して城壁内に多くの農地を残している。

城壁内の農地の減少は継戦能力の低下に直結する。