軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ファーストインパクト ⑫

防諜体制の構築も急務だし、やることと考えることが多すぎて頭がパンクしそうになってくる。

そんなことを考えつつ営業用スマイルを貼り付ける作業に勤しんでいたら、また新たにステージ下から声が掛かった。

「ご領主様、失礼いたします」

「・・・あなたたちは?」

今度は、いくらか知性を感じさせる目をした人たちだ。

比較的、若い年齢層の男性たちで、全体的に体格が良くて、身だしなみにも気遣いの跡が見て取れる。

王都で見た騎士団の人たちに似た雰囲気から、彼らが何者かは想像が付くけど、敢えて誰何する。

すすす、と、平民層の領民たちがステージの周りから離れて行って、入れ替わりにぞろぞろと進み出てきた結構な数の男性たちが、ザッと一斉に片膝を突く。

「我々は、旧コーニッツ領、並びに、旧ムーア領で騎士爵を授かっていた者です」

「・・・ふむ。それで?」

旧領主とは血縁関係に無かった一般の騎士様たちかな?

いくら“融和派”領地でも、領民の全てがズレているとは思わないし、これまでの爵位持ちとは雰囲気が違う人たちが居ることに不思議は無い。

「お恥ずかしながら、我らは剣に生きる道しか知りません。我らも閣下の麾下に加えていただきたく、お願いに参りました」

「・・・うーん。ピーシス領軍は、あなたたちの旧領とは、ぜんぜん違うと思うよ?」

厳しいよ? と、暗に伝える。

心構えから生活スケジュールにおける鍛錬に割く時間から、きっと何から何まで違うと思う。

常に戦争に備えているウォーレス領の、中でも、ピーシス家系の戦いに対するストイックさは、彼らの想像を絶するものだろう。

その辺りを指摘したつもりだけど、男性たちは真摯に頷いた。

「はい。骨身に沁みて存じ上げております」

「・・・そっか。じゃあ、近いうちにピーシス騎士団の入団試験を開いてあげるから、しっかりと鍛え直しておくと良いよ」

「「「「「はっ」」」」」

あの人たちは、先日の制圧戦でお爺様たちに、コテンパンに、やられた人たちかな。

一斉に小気味の良く応えた男性たちは、声を掛けてきたときよりも、いくらか良くなった顔色で、一礼して引き揚げていった。

覚悟は有るんだね。

あの感じなら、再利用できそうだ。

彼らは拾い物かもしれない。

ピーシス領軍の平均レベルよりも力量が劣ってるのは明らかだろうけど、数を揃える分には多少の質の低下は許容範囲だ。

電撃的な機動力を持つのがピーシス領軍、というか、ウォーレス領軍だけど、何も、騎馬部隊だけが戦力では無い。

拠点防衛で平民層の守備兵を指揮するのも騎士の重要な仕事だし、治癒魔法実験のときの結果から、騎士様の中からも治癒魔法術師を増やせることは判明している。

お爺様やエゼリアさんたちのような“魔法剣士”的な騎士様の量産を試みるにも、先ずは母数が必要になる。

私たちの遣り取りを、じっと静かに見守っていたマリッドさんへと目を向ける。

「・・・あんな感じで良かったかな?」

「見所がある者なら受け入れる、ということで良いのでしょうか?」

「・・・うん。そのつもりで、使えそうなら領軍に組み込んで鍛えて欲しい」

「承知しました」

私の要望に、目を細めたマリッドさんが頷く。

実際に配下として扱うのはマリッドさんたちなのだから、マリッドさんたちの目で判断すべきだろう。

責任者なんてものは、現場で起こったことの最終責任を取るのが仕事で、現場の仕事は現場に任せておけば良い。

「・・・ヨシ。一旦、終了」

細かな部分を決めて摺り合わせていく必要は有るだろうけど、これで大きな方向性は示せたはずだ。

ひと先ずの処置が終わったと私が宣言すると、黙って見守ってくれていたアンリカさんがマリッドさんに顔を向けた。

「マリッドさん。後を任せても?」

「君はフレイア様の傍を離れるわけには行くまい。うちの父上とライアス殿に、さっさと後の仕置きを決めてくれと伝言を頼む」

「ええ。分かりました」

肩を竦めて軽い調子で言うマリッドさんの態度にアンリカさんが表情を緩める。

片手を挙げ合ってマリッドさんとの会話を終えたアンリカさんと一緒に、梯子を伝ってステージを降りる。

お母様たちのところへ戻ると、表情を明るくしたルナリアに迎えられた。

「終わったの?」

「・・・うん」

ルナリアに頷いて返すと、お母様からのぐりぐりが来た。

「ご苦労さん。上出来だったぞ」

「・・・はああ。良かった」

お母様からの合格を貰って大きく溜息を吐く。

出会い頭のトラブルを逆手に取って一気に領内の大掃除を進める私の判断は、間違っていなかったようだ。

領内に蔓延っていた旧勢力の排除が緊急課題なのは地球の歴史上にも明らかで、いかに血を流す浪費を抑えるかと考えていた甲斐が有ったよ。

権力の移行だけで敵味方に分かれて戦ったところで、両者に損耗が出れば出るほど怨恨が深くなるだけだし、ペテンに掛けてでも穏便に収めたかったんだよね。

卑怯、上等。釣られる方が悪い。

悪態や呪詛を吐かれて傷付かないわけでは無いけど、これもまた平和のための犠牲だ。

ここでグズグズやってしまっては隙を晒すことになる。

落ち着いて眺めれば、ルナリアと私の爵位承継は批判を避けるための茶番に過ぎなくて、ウォーレス家が弱体化するわけでは無いことなんて一目瞭然なんだけど、だからといって私たちが舐められても良いって話にはならないのだ。

野心を躊躇わせることができれば、結果的に犠牲を小さく抑制することができる。

その犠牲が無辜の民になるのか小悪党になるのか、どちらを選ぶべきかと言えば、自業自得で小悪党に責任を取って貰うほか無い。

私の心情を慮ってくれたのか、ルナリアが元気いっぱいの声を上げる。

「じゃあ、帰るわよ!」

「・・・うん! 帰ろう!」

やっとレティアへ帰れる。

これからも大変だろうけど、それはそれだ。

こうして私たちは無事に帰路を終えることが出来た。