軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ファーストインパクト ⑤

おや。エゼリアさんではなくマリッドさんで、今度はアンリカさんか。

共に、ピーシス家麾下の中核となる、ヴァンス男爵家とタイアー騎士爵家の長子だ。

これは多分、委任統治を前提とした新領地での実績作りだな。

両家の現当主であるお父さんたちは、レティアの領主館でハインズ様とお爺様の補佐をしているから、この場には居ないし。

問題を片付けてから割り振って実績作りに取り掛かるよりも、直接の統治担当者が最初から手を下した方が二度手間にならないもんね。

名義上の統治者で有る私は、その場に立ち会って正統性を担保するだけでいい。

「ご当主様。ご命令は如何に?」

「・・・爵位偽証、および、諸々の疑いで、コーニー騎士爵家の郎党を捕縛します」

作戦行動の目的を伝えると、小さく頷いたマリッドさんが問う目差しを向けてくる。

「どこまで、やりますか?」

「・・・統治しやすいところまで。 そのつもり(・・・・・) で、やってください。ただ、どうにでも扱える小物は労働力として残しておきたいです」

私の要望にマリッドさんは思案する様子を見せた。

「爵位持ちは全て始末しておきたいところですが」

「・・・その方が統治し易ければ、それで構いませんよ? ただ、領民に、領主が代わったことを認識させると同時に、民心を引き寄せておきたいんですよね」

邪魔になる旧勢力は例外なく排除しておきたいだろうね。

私もそのつもりだし。

ただ、上官命令に従うだけの末端の騎士や兵士となると、排除するほどの意味も無いと思うんだよ。

だから、前領主から騎士爵を与えられていた「騎士」の篩い分けに、一工夫が必要になる。

私の思惑に、マリッドさんが守備兵たちへと目を向ける。

「それで、この連中を 使う(・・) のですか?」

「・・・この人たちに言ったように、誰の命令で悪事を働いたのかを公に証言するなら、手先になった小物は苦役で済ませても構わないと考えているのですが、どう思いますか?」

甘すぎるかな?

でも、塵も積もれば山となるんだよ。

領軍も労働力の一つなのだから、極力、労働力は減らしたくない。

西部地域からの避難民が想定よりも少ない数しかレティアへ辿り着いていないし、エクラーダ王国からの流出民も、来るか来ないかなんて未知数なんだからね。

前科持ちが反抗的に振る舞うなら、そのときは見せしめに使えば良い。

「厳格さと同時に、寛容さも示しておきたい、と」

「・・・そういうことです」

「承知しました」

穏やかに笑みを浮かべたマリッドさんが頷いてくれた。

方針が決まったと見て取ったミセラさんの下へ、工作任務に従事していたと思われるザル―――、ゲフンゲフン。マーシュさんが馬を牽いてくる。

颯爽と馬に跨がった案内役のミセラさんに続いて、マリッドさんとアンリカさんも騎乗する。

「では、ご案内しますね」

「50騎、付いて来い!」

「「「「「おうっ!」」」」」

マリッドさんの指示にピーシス隊2000騎の中から騎馬部隊の一部が迫り出してくる。

50騎ってことは、ざっくり2個小隊か。

多くもなく、少なくもなく。

こう言った必要人員の目処を付けるのも経験だよね。

部隊運用の実例として、すごく参考になる。

ウズウズした感じのルナリアがシュバッと手を挙げた。

「わたしも行くわ!」

「行くのは良いが、これは領主の初仕事だ。手出しするなよ」

釘を刺すお母様に、ルナリアは大きく頷く。

部隊運用を学ぶべきなのはルナリアも同じだから、私たちは機会が有れば、実働部隊に引っ付いていくべきだ。

「分かったわ! あなたたち、行くわよ!」

「「「はい!」」」

オーリアちゃん、アイシアちゃん、ナンナちゃんがルナリアに応えて追随する。

メリーナさんとネイアさんも騎乗して私の馬に追随してくる。

駆足で走ったのは5分少々だろうか。

距離にして1キロメートルちょっとだから、本当に「すぐそこ」だった。

「この家ですね」

「・・・これが騎士爵家の家?」

何か、無駄にデカい。

そして、ゴテゴテと建物の外壁に装飾が付いていて、玄関先に小太りの男がふんぞり返っている彫刻? 石像のようなものが立っている。

どういう趣味なんだろう・・・?

周囲は小麦畑だったらしい収穫後の切り株だけが残る寒々しい畑なのに、畑の中にポツンとミスマッチな屋敷が建っている。

移動してくる道中も、平屋建ての質素で小さな木造家屋しか見掛けなかったから、この屋敷の存在感というか、違和感が半端ない。

「一族揃って悪趣味ですねー」

「ミセラ嬢。当主の名前は何と言ったかな?」

アンリカさんと一緒に嫌悪感丸出しの顔で屋敷を眺めていたマリッドさんが、気を取り直して再起動した。

「セーガン・コーニーです」

「承知した。ご当主様、始めても?」

ミセラさんの答えに頷きで応え、マリッドさんは確認を取ってくる。

「・・・やっちゃってください。日が暮れる前に終わらせたいので、すぐに出て来ないなら家ごと吹き飛ばします」

「あの家屋を再利用するご予定は?」

ええ? ヤダよ。

私も嫌そうな顔になってると思う。

マリッドさんへの回答は一択だ。

「・・・有りません。残しておくと領の評判が悪くなりそうなので、売り飛ばして資金回収できそうな資産を差し押さえた後は更地にします」

「では、最初から吹き飛ばしても良さそうですね」

私の答えにホッとした様子のマリッドさんがイイ顔で笑う。

「・・・生かして捕縛できるなら、構いません」

「承知しました。―――、アンリカ。手伝ってくれ」

「はーい」

踵を返したマリッドさんに呼ばれて、アンリカさんも私に手を振ってから踵を返す。

二人で何か言葉を交わしていたから、何をする気かと思ったら、アンリカさんが、いきなり“紅蓮”を発動した。

傾きつつある日差しよりも明るい火球が周囲を照らして、滑るように宙を飛ぶ。

屋敷の大屋根に触れて大爆発を起こし、ズドオオオオオオン! と、大きな爆発音が夕闇が迫る冬の空気を震わせた。

轟音と共に激しい火炎と熱と爆風を撒き散らす。

「・・・おー」

吹き寄せてきた熱気と風に私たちの髪や服がはためく。

近くで初めてちゃんと見た“紅蓮”って、オレンジ色の綺麗な炎がキノコ雲を作るんだなあ。

ハリウッドのアクション映画でガソリンタンクが爆発するシーンの、黒煙が出ない、環境に優しいクリーンバージョンっぽいビジュアルだった。