軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ファーストインパクト ④

「ふ、ふふふ、ふざけるな!」

虚勢を張ったつもりかな?

HAHAHA! 何を言っているのやら。

「・・・ふざけて無いよ? あなたたちは何重にも重罪を犯している。私は国王陛下から領地を下賜された領主として、あなたたちのような犯罪者を捕縛し、適切に裁いて領地の治安を維持する義務が有るんだよ。特に、国王陛下の承認をいただいていない爵位の偽称。これはもう、どうしようも無いよね。二度と帰って来られなくなると思うけど、王都へ送ってあげるから、王宮に訴えてみる?」

土塗れの顔に鼻血を垂らしたリーダー格の守備兵が毒づいたところで、私は現実を伝えてあげているだけだ。

そこへエゼリアさんたちを引き連れたお母様が馬を進めてきた。

完全に楽しんでいる顔で口角が引き上がっている。

「手伝ってやろうか?」

「・・・うーん。もうちょっとだけ自分でやってみるよ」

「そうか」

小物感、満載だし、“大人の時間”にご招待するほどの人たちじゃないと思うんだよね。

現に、お母様の顔を見ただけで血の気が引ききって真っ青な顔をしてるし。

「ふ、フレイア・ピーシス・・・」

「それじゃあ、本当に子爵家は・・・」

土で汚れたせいじゃなく顔色を悪くした守備兵たちが、呆然とした声を漏らす。

どのみち重罪は重罪なんだけど、これって、やっぱり誰かに唆されたっぽい?

仕方ないな。利益は最大化したいし、どこかの大統領じゃないけど 取引(ディール) してみるか。

「・・・最初に、そう言ったよね。 騙された(・・・・) あなたたちが正直に答えれば、減刑を考えてあげても良いけど、どうする?」

末端っぽい守備兵の一人が、提示してあげた“逃げ道”に、早速、食い付いた。

「こ、答えます! 答えますから、家族の命だけは助けてください!」

「・・・良いよ。 事情(・・) は、ちゃんと考慮してあげる」

素直に取引に乗ってくれた守備兵に頷いて返す。

命令者への義理を通すつもりがない、というか、元々、義理なんて感じていなかったっぽい守備兵が必死な形相で情報を口にする。

「コーニッツ子爵の傍系、コーニー家のご当主様の命令です!」

「・・・コーニー家って、分かる?」

「ああ。騎士爵家ですね。確かに元子爵の傍系です」

黒幕の名前をメモっているネイアさんに聞いたら、ネイアさんの声じゃない答えが直ぐ耳元に返ってきて、私の両肩が跳ねる。

び、ビックリした・・・。

今の今までネイアさんの傍に居たはずなのに、私の背後に、いつ移動してきたのか気付かなかったよ。

ミセラさんの姿は視界に入っていたはずなのに、目の前で移動したことに気付かないって、どんな技術なんだろう。

「・・・み、ミセラさん。あ、ありがと」

「いいえ」

邪気のない笑顔でニコニコと笑ってるけど、脳の9割は邪気で埋まってるよね?

“何とかメーカー”ってアプリで言うなら、「邪」の文字で埋め尽くされた真ん中の一文字だけが「戯」って感じで。

まあ良いや。今は、お掃除の時間だ。

「・・・じゃ。あなたたち、領都で、領民たちの前で証言してくれる? 私が満足できる証言をすれば、苦役だけで許してあげる」

「本当に、減刑してくれるのか?」

およ? ようやく折れたか。

リーダー格の守備兵が疑わしげな目を向けてくる。

「・・・この領地の領主は私だもの。出来ない約束はしないよ? あなたたちが私との約束を守るなら、私も約束した以上は守る」

「分かった。証言する」

見定めようとするように、じっと私の目を見上げている目を真っ直ぐに見返して答えると、溜息と共に目を伏せたリーダー格の守備兵もまた、私に降伏した。

「武装解除しますか?」

「・・・武器だけ取り上げておけば良いよ」

メリーナさんのの問いに答えると、今度はミセラさんに問われた。

「よろしいのですか?」

「・・・鎧や防具を脱がしちゃったら、この人たちの立場が分かりにくいから。見た目で分かりやすい方が効果が有ると思うし」

私の答えにミセラさんが首を傾げる。

この人たちは、釣りエサを釣りエサたらしめるカードだからね。

後は、釣りエサを獲りに行かなきゃいけないんだけど。

「コーニー家の捕縛に向かいますか?」

「・・・居場所が分からないから明日かなあ」

出来れば今日中に釣りエサを調達しておきたかったけど、もうすぐ日が暮れそうだし、明日に回すしかない。

そう思って諦めようとしていたのに、ミセラさんは諦めさせてくれなかった。

「分かりますよ? 居場所」

「・・・分かるの!?」

隣領の、たかが騎士1人の自宅まで把握してるの!?

「その程度、メイドの嗜みですよ?」

「・・・そんなわけ―――、いえ、何でもありません!」

ニッコリと笑うミセラさんに、それ以上、深く掘り下げてはいけない気がして撤回する。

スッゲーな、ロス家・・・。

「すぐそこですから、ちゃっちゃと捕縛しちゃいましょう」

「・・・分かった。―――、あっ、えーっと・・・」

思考を放棄して了承したは良いけど、必要な戦力が分からない。

今、ピーシス家の戦力は手元に2000騎居るけど、数人を捕縛するのに2000騎は多すぎる。

私が何に困ってるかを正確に読み取ったエゼリアさんが横合いから答えをくれた。

「50騎も居れば十分でしょう」

「・・・ありがと。エゼリアさん」

お礼を言うと、エゼリアさんが目を細める。

「50騎は、どう抽出しますか?」

「・・・むむっ」

母親のように微笑まし気な目を向けてくるエゼリアさんの問いに、また答えに困る。

そこで頼りになる援軍を派遣してくれたのは、お母様だ。

「捕縛に行くならマリッドを連れていけ」

マリッドさん? 誰だっけ。

お母様が目線で示す先には、見覚えの有る騎士様が居る。

「・・・あ。エゼリアさんのお兄さん」

「はっ」

呼びに行かせてくれたのか、お母様の傍で馬を下りた長身の騎士様がフッと笑って返事をくれる。

エゼリアさんとよく似た色の金髪を、お爺様やハロルド様と同じように撫で付けたマリッドさんは、お爺様の配下でハロルド様の側近を務めている歴戦の騎士様だ。

部隊長を務めている人でもあるから、豊かな経験は頼りにして余り有る。

「アンリカ。お前も付いて行け」

「はっ」

短く返事を返したアンリカさんもヒラリと馬を下りた。