軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王城・地下探検! ⑭

宰相さんが目を伏せる。

「カレリーヌ殿と君がぶつかったことも聞いた。ウォーレス家に負担を強いていることを心苦しくも思っては居る。だが、信じるに値する者が王国内には少ないのだ」

「・・・私が想像するよりも、王国内はガタガタだったのですね」

これ、構造的なところまで踏み込まないと、どのみちテレサの身が危うくなりそうだぞ。

正直、過剰な負担だとは思ってたし、交代制の護衛部隊創設を王様たちが飲んだこと自体がおかしいんだよ。

ウォーレス家に対する”期待”が、あまりにも過ぎる。

“保守派”、“中立派”、“融和派”の三つの勢力が同等ずつだと思っていたけど、“中立派”も腐敗体質側だとすれば、まともな貴族が少数派ということになる。

「マシになって、この状態」って言ったよね。

よく崩壊せずに残ってたな、王国。

お母様が容赦なく“中立派”領地を攻め落としてから西部地域へ向かったのも、“中立派”も信用できないからだったのか。

うわあ・・・。これ、かなり厳しい状況だわ。

国内を何とかしなきゃ、勇王国と戦うどころじゃ無いよ。

本心では多くの領地貴族を入れ替えたいけど、貴族を減らし過ぎると統治が緩んで侵略を受けるのかな?

だとしたら、西部地域の貴族を減らした今回も結構ヤバかったんじゃ。

この現状を打開するには、どうすれば良い?

優秀な人材を新たに貴族へ取り立てる?

そんなことは今までにも手を打ってきたのだろうし、統治って知識もノウハウも必要だよね。

入れ替えるにも入れ替えられなかったのか。

国外へ目を向けさせつつ、統治のノウハウを持っている貴族の中から忠誠心が高い人を育てる?

それが先王陛下が目指した「求心力を高める」政策かな?

上手く行ったようには思えないけど。

先人に倣うなら、ピーシーズ追加人員のモラル教育と、裏切り者を出さないシステム作りも徹底しなきゃ。

それとも、入れ替えやすいシステムかな?

そんなに腐敗しやすいのなら、メンテしやすいシステムじゃ無きゃ、歴代の王様と同じ轍を踏むことになっちゃう。

メンテしやすいシステムと言えば思い付くのは江戸幕府かな。

難癖を付けては有力大名を潰しまくった。

ただ、あれは大名の財力を削って国内の勢力争いと叛乱を防ぐのが目的で、日本列島という、海に守られて外敵の脅威がほぼ無い環境だから成立したシステムだよね。

“島原の乱”が王国のあちこちで起こると考えれば、江戸幕府の統治システムを持ち込むだけでは、王国の現状に対処できない。

どうするかなあ。

領地が増えたから、ウォーレス領だって他人事じゃ無くなる可能性が有るんだよね。

まだまだ“魔の森”にも手を付けたいし。

そうなると、さらに領地が増える。

治癒魔法術師量産計画が公表された以上、今後はレティアの町も他領や他国の人間の出入りが確実に増える。

防諜体制の構築にはワールターさんたちの協力も必須になる。

思考に飲み込まれそうになる私を、宰相さんは、じっと見ていたようだ。

「王都から遠く、レティアの地に居ては分かりにくいのだろうな。―――、いや。外敵と向き合い続けてきたウォーレス家だからこそ、緊張感と忠誠心を保ち続けることが出来たのか。それ故、君らには期待している」

うーん。宰相さんも「期待」と来たか。

「・・・私とルナリアですか?」

「殿下も含めた、君ら三人に、だ」

「・・・なるほど」

宰相さんが欲しい人材の判断基準は、“王国にとって役に立つかどうか”だよね。

これはテレサのお兄さんに対する態度の答えだ。

要するに“使えるヤツ”なら良いのか。

カレリーヌ様と似た考え方の人だと思って良さそうだ。

実現する方法論はこれから考えなきゃいけないけど、宰相さんが何を重視するかを探れただけでも収穫だよ。

方法論の違いが有るかも知れないし、細かいところでは摺り合わせが必要だろうけど、今は、敵じゃ無いことが分かったのだから、それで良いや。

テレサの護衛部隊が育つまでの間だけでも“融和派”を抑えられれば、みんなの負担を減らせるし。

もしかすると、カレリーヌ様やミリア叔母様の間諜では得られない情報が、宰相さんルートで得られる可能性も有る。

治癒魔法術師量産計画には“融和派”も組み込むからこそ、“融和派”の怪しい動きが前もって掴めるだけでも、私としては、すごく助かるんだよね。

宰相さんも曲者だし、丸呑みで信用するのは危険だろうけど、空手形でも言質は取っておくか。

「・・・では、ご協力いただけそうですね?」

「協力とは、治癒術師のアレか?」

宰相さんが小さく首を傾げる。

「・・・はい。私の思惑はお聞きに?」

何の思惑とは言わない。

言わなくても宰相さんは真剣な表情で頷いた。

「ああ、オーグストから聞いた。実現できるなら西方の圧力に対抗できる目も出て来よう。馬鹿者どもが少しでもマシになるなら喜んで協力しよう」

「・・・きっと実現しますよ。テレサも王妃様も、そのおつもりです。カレリーヌ様も、そうだと思います」

探るように、私の顔を見つめていた宰相さんが問うてくる。

「本気のようだな」

「・・・はい。私一人で戦うわけでは有りませんから」

そらそうよ。

本気も本気、めちゃくちゃ本気だし、今の私には協力してくれる人たちが、たくさん居るからね。

何より、お母様たちの期待は裏切れない。

口角を僅かに上げて宰相さんが頷く。

「ヨシ。一人、連絡員を付けよう。他にも協力の必要が有るときは言ってくるといい」

「・・・えっ? 連絡員?」

「もう、部屋へ戻ると良い。子供は寝る時間だ」

さっさと踵を返した宰相さんが肩越しに手を挙げて歩きはじめ、先導メイドさんが慌てて先導の仕事に戻って行く。

「・・・むー」

最後の最後に子供扱いされるとは。

まあ、実際、子供なんだけどね。

宰相さんたちの背中を見送った私に、先導メイドさんが首を傾げる。

「予定通りに向かわれますか?」

「・・・あー、いえ。部屋へ戻ります」

「かしこまりました」

結構、長く立ち話をしていた気がするし、何か、ドッと疲れちゃったよ。

よく考えたら、今日はカレリーヌ様とケンカして、アンリカさんとアリアナさんがケンカして、結構、疲れていたはずなんだよね。

宰相さんの連絡員についてもお母様たちに報告しておかないとなあ、などと考えつつ部屋へ送り届けて貰った私は、テレサとルナリアの隙間に潜り込んだ途端、眠りに落ちていった。