作品タイトル不明
王城・地下探検! ⑩
和やかにテレサと雑談していたらしいお母様が、戻って来た私たちに気付く。
「・・・お母様。答え合わせ、良い?」
「ふむ。この剣は?」
ゴトリ、と、閲覧台に置いた剣が固く重い音を立てる。
「・・・私が選んだもの」
「ルナリアは選べなかったのか?」
お母様から向けられた視線にルナリアはぺったんこの胸を張る。
「フィオレの結果を参考にするわ!」
「ものは言いようだな」
目を細めてお母様が笑う。
この切り換えの早さはルナリアの美点だよね。
お母様の目が私へと向く。
「で? フィオレ。この剣を選んだ理由は?」
「・・・華美な装飾をレティア卿が好むとは思えないから」
これはレティア卿のイメージから。
レティアの町を見れば、レティア卿が質実剛健を好んだのでは無いかと考えた方が良い。
「他には?」
「・・・魔力切れの状況でも女性が振り回せる剣なら短剣か、それに近いものだと思った」
これは剣の長さから。
筋力は身体強化魔法で補えても、手足の長さが伸びるわけじゃ無い。
どこまで行っても女性は女性の骨格で、女性の体格なのだ。
「ふむ。それだけか?」
「・・・特殊な鍛冶技術で作られたものじゃないかと思ったのが、決め手」
これが本命の理由。
ルナリアが首を傾げる。
「特殊って?」
「・・・剣を抜いて、明るい場所で、剣をよく見てみて」
「こう?」
剣に手を伸ばしたルナリアが、明かりの真下で鞘から引き抜いた、薄い金色の輝きを反射する剣身に目を凝らす。
「わっ! 何、この剣!?」
光の反射で木目に似た模様が見えたらしいルナリアが驚きの声を上げる。
ルナリアの傍へと移動したテレサもルナリアの肩越しに覗き込む。
「あら。よく見ると、縞々なんですのね」
「・・・たぶん、複数の金属素材を積み重ねた構造になってるんだと思うよ」
何の金属を使っているか、までは分からないけどね。
普通の鉄製の剣よりも重いと思うから、ルナリアに扱えるかどうかも分からないし。
「それで、“特殊な鍛冶技術”だと」
「ほえ~」
テレサとルナリアが驚きの声を上げた。
さて、答えを貰わないとね。
お母様に向き直る。
「・・・お母様。判定は?」
「正解だ。よく見つけたな」
お母様がフッと表情を緩めた。
キラキラした目で手のした剣を見ているルナリアが、不思議そうに首を傾げる。
「でも、この剣、そんなに長くないのに、普通よりも重たいわね」
「オリカルクが使われているから重いそうだぞ」
気のせいじゃ無かったか。
重たい理由が分かってるんだ?
素材って意味だろうし、重たい理由がその素材ってことは、その素材自体が鉄よりも重たいのだろう。
でも、初めて聞く名前、だよね?
「・・・オリカルク?」
「大昔に黒龍山脈で採掘された鉱石から精製していたという、稀少金属の名前だ」
へえ、稀少なんだ。
ルナリアも首を傾げている。
「・・・大昔って?」
「まだドワーフ族の国が有った頃だから、500年近く昔だろうな」
「・・・おお。ドワーフ族!」
やっぱり、金属と言えばドワーフ族なのか。
「オリカルクと言いますと、魔鋼の類いですわね」
「ああ。見た目は黄銅に似ているが、魔鋼の一種とするのが定説ではあるな」
ん? 黄銅って真鍮のことじゃなかったっけ?
魔鋼って何だろう? 鋼なんだから、鉄?
いや、ファンタジー金属の名前がオリカルク?
オリ何とかって似たような名前のファンタジー金属が無かったっけ?
オリ・・・、オル・・・、オリカル・・・、オリハ・・・? ああ。オリハルコンか。
確か、ローマ帝国だったか、古代ヨーロッパの文献に名前が出て来て、結構、昔の日本でも知られていた名前のはず。
地球上でもリアルにファンタージ―金属の代名詞じゃん。
それよりも分からないのは、あっちだ。
「・・・魔鋼って?」
「昔のドワーフ族が使った土術式で作ることが出来たとされる金属の総称だ」
「・・・総称」
首を傾げたままの私にお母様が補足してくれる。
「鋼と言っても鉄とは限らんそうだが、元になる金属の種類によって魔力特性が違うらしくてな。実のところ、よく分かっていない」
「・・・今は作れない?」
お母様が「昔の」ってわざわざ付けるってことは、そういうことのはず。
「作れないのか、作らないのか。少なくとも、今の時代のドワーフ族に生産できるという話は聞かんな」
「・・・ドワーフ族に訊くしかない?」
どういうことだろう?
ダマスカス鋼みたいに失伝した?
「訊いて分かるものかどうか、怪しいんじゃないか?」
「・・・なんで?」
やっぱり失伝したっぽい?
「南方の数ヶ国には幾らかのドワーフ族が残っていると聞くが、その数ヶ国でも魔鋼製の武器は生産できていないからだ」
「・・・出来ないって分かるの?」
間諜の情報かな?
「その数ヶ国の一つがカリーク公王国だぞ? 生産できるなら戦場に投入してくるだろう」
「・・・そっか。なるほど」
ということは、生産方法を失伝した可能性が高いなあ。
勿体ない。