軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの対決 ⑰

大きく深呼吸して心を鎮める。

本当に、これでいい?

自分の心に問い掛ける。

私の心に揺らぎは生じない。

深呼吸しても私の思いは変わらない。

この思いは私の本心で間違いないらしい。

じゃあ、守ろうよ。

大切なものを守るために勝つしか無いのなら、勝ち続けるだけだ。

私だって手探りだし問題だらけだけど、今の私の手には、小さくても戦うための力がある。

一緒に戦ってくれる家族が―――、みんなが居る。

「・・・させませんよ。カレリーヌ様」

「させない・・・?」

「・・・同じ悲しみは繰り返させません」

掛けられた声に目線を上げるカレリーヌ様だって、王様たちだって、目指すところは私と同じ。

やり方や考え方は違っても、大切なものを守りたい、この思いは、みんな同じ。

だから、私も、もう一歩踏み込む覚悟を決めよう。

「・・・アリアナさん」

「はい」

名前を呼べば応えてくれる、いつもの遣り取り。

「・・・アリアナさんが志願したこと、“同志”としての約束も有ったんじゃないのかな」

「無いと言えば嘘になりますね。でも、姉様を救ってくださったテレサ様に恩義が出来たのも事実です」

「・・・うん」

腰を上げて真っ直ぐに向き合った私はアリアナさんの目を見上げる。

アリアナさんも真っ直ぐに私の目を見つめ返してくる。

本当にアリアナさんも覚悟を決めているんだね。

だったら、私も、もう迷わない。

ここで迷ったら、アリアナさんの思いを踏みにじることになる。

ここからは、上司としての業務命令だ。

「・・・テレサの護衛任務と、王都に於ける護衛部隊の育成と指揮。アリアナさんにお願いして良いですか?」

「はっ。お任せください」

アリアナさんの隣に居並ぶピーシーズへと視線を巡らせる。

「・・・それと、クラリカさん、メイリスさん、マーミナさん、マーリカさん」

「「「「はっ」」」」

4人の目にも迷いや困惑の色は見られない。

「・・・私たちはレティアへ戻り次第、人員の選出と駐留部隊の創設を行います。部隊の王都到着まで、アリアナさんの交代要員として、しばらく王都に残って貰えますか?」

「「「「はっ。承知しました」」」」

私が下した命令に、カレリーヌ様が目を丸くする。

「側近を5人も出して大丈夫なの?」

都合の良い誤解を与えないように、首を振る。

出来ることは出来るし、出来ないことは出来ない。

ハッキリと明言して、分かって貰う必要が有る。

「・・・4人は応急対処の短期任務ですから。ルナリアと私のレティア帰還は、お母様たちとご一緒できますし、短期的には問題ありません。昼夜の交代も考えれば、ちゃんとした部隊を作らないと、王都に残る交代要員が4人では、到底、足りませんから。この措置は、あくまで応急措置です」

「ふむ。そうね」

私の考えを、カレリーヌ様は真面目に吟味してくれる。

「それに、クラリカさんとメイリスさんは情報を集めるのが上手いですから、ミリア叔母様ともウォーレス家王都邸とも協力して、駐留部隊に必要となる基礎情報の収集を任せたいのです。お願いできるかな? クラリカさん、メイリスさん」

「「任せてください」」

ニコッと笑って応えた二人から、カレリーヌ様の目が移動する。

「そちらの狼人族の子たちは?」

「・・・マーミナさんとマーリカさんは、とても勘が良いのです。“魔の森”での触角ヘビ発見率は突出していますし、初見で私の攻撃から逃げ切った三人の内の二人ですから、暗殺や伏兵への警戒に向いていると考えます。二人はアリアナさんの交代要員としての任務を主体にして貰おうかと」

「そうなのね?」

頷くカレリーヌ様から、私はピッと犬耳を向けている二人に視線を移す。

「お願いできるかな? マーミナさん、マーリカさん」

「「了解しました」」

そっくりな笑みをニッと浮かべた二人は、姉妹だと強く認識させる。

「部下の資質をよく見ているのね」

「・・・私の家族ですよ? 得意分野ぐらい知っていて当然です」

感心するように頷くカレリーヌ様が、最後の一人へと視線を移した。

「貴女の目から見て、アリアナは、どうなのかしら」

「・・・だた強いだけで無く、面倒見が、とても良い人です。それと、人を纏めて戦意を高めるのが上手いですね。心根が真っ直ぐで、己を曲げずに乗り越える逞しさも有りますから、護衛部隊の指揮官に向いているかと」

アリアナさんへと目を遣ると、照れくさそうに、ちょっとだけ頬を赤くしている。

「貴女がそう評価するのなら、間違いなさそうね」

私の評価に、満足そうに頷く。

カレリーヌ様のご要望に添うものだったらしい。

「アリアナ。先ほどは、ごめんなさいね」

「いいえ」

「貴女の遣り方に私は口出ししないわ。協力が必要なときは、いつでも言って頂戴」

おお、意外。

極端から極端にも思うけど、カレリーヌ様は自分から手を引く上に支援してくれるのか。

「はっ。ありがとうございます」

固めた右拳をガツンとブレストアーマーに当ててアリアナさんはカレリーヌ様に応える。

揺るぎない騎士式の敬礼にカレリーヌ様が目元を緩めて頷いて返した。

「・・・テレサも、それで良い?」

「ありがとう、フィオレ。ごめんなさいね」

眉尻を下げるテレサに首を振る。

「・・・ううん。テレサの護衛部隊、すぐに作るから待っててね」

「はい」

ふわりと微笑んで、テレサが素直に返事をする。

あ、そうだ。思い出した。

「それと、騎士団の王女殿下親衛隊に声を掛けてあげて」

「親衛隊?」

あっ、しまった。

勝手に付けた私の中での渾名だから、通じないよね。

ところが、2秒間ほど宙へ視線を彷徨わせたテレサは小さく頷いた。

「ああ。あの方たちですね」

「・・・い、今のは内緒で」

通じた!? おかしな渾名を気に入って、騎士様たちに狂信的な忠誠心で暴走されても困る。

確認の意味でお母様を見ると、黙って見守ってくれていたお母様は、表情を緩めて頷き返してくれた。

ヘイナーさんにも、みんなのことをお願いしておかないとね。

王城内に安全な場所が確保できるまでの間、みんなの寝床は王都邸にお願いしたいし。

護衛部隊への細かな指示は、ピーシーズが行き来するから、後からでも調整できる。

王都騎士団や近衛騎士団の問題は、ハインズ様とも相談したいから今は保留で良いや。

エゼリアさんとのことが有るから騎士団長閣下もレティアへ来るはず。

騎士団のことは、その時に話し合えば良い。

先ずは王妃様とテレサの周りを固めることが最優先だ。

王宮が影響力を及ぼせない護衛部隊と王女殿下親衛隊を設置できれば、当面の安全は確保できるはず。

完全に快復するまでは王妃様が夜会なんかの表舞台に復帰することも無いはずだ。

王妃様にもカレリーヌ様をレティアへ連れて来て貰うようにお願いしておかなきゃ。

王城内では話しづらい話題もレティアでなら安心して話し合える。

レティア側での要人受け入れ体制も急いで整えておく必要が有るよね。

やるべきことは山積している。

ヨシ、私も気を引き締めて掛からないと。

王都残留組の顔を一人ずつ見渡す。

「・・・じゃあ、みんな。ピーシス家当主として命じます。任務を開始してください」

「「「「「はっ!」」」」」

ピーシーズの元気な返事で、王様の執務室に満ちていた不穏な空気は一掃された格好になって、呼び出しの場はお開きになった。