軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの対決 ⑮

大人しくなってくれたのなら良いけど、今は” 締め(クロージング) ”だ。

「・・・レティア側まで含めた私の想定だと、3交代制で3個小隊を作ることになりますね」

王様をはじめとした、大人たちを見回す。

王都とレティアに、常時、1個小隊を置いて、残りの1個小隊が移動する。

増員しなければいけないピーシーズは30~60人ってところかな。

今のピーシーズ9人の配下に置いて、ピーシーズ3人で1個小隊を指揮する。

王都駐留中はアリアナさんの指揮下に入って元祖ピーシーズは4人体制。

レティアに居る私たちよりもテレサ側に比重が掛かっているように見えるけど、レティアにはお母様の側近たちも居る。

油断できない王都の情報は多い方が良いからね。

そう考えると、王都にロス家の人員が置かれている意味が良く分かる。

駐留部隊にもロス家と情報交換させて、連携できる協力体制を構築させておけば、少しは楽に立ち回れるよね。

でも、ロス家はミリア叔母様とも連携しているっぽいから、王宮内の情報をメインに扱っているのかも。

アリアナさんを中心としたピーシーズは王妃様とテレサの傍に貼り付くし、ヒマさえ有れば訓練場で騎士団と戯れに行くのだろうから、王家と騎士団の情報をメインに扱うことになるのだろう。

レティアにはワールターさんが居るから、あっちでの協力体制は大丈夫。

これ、思った以上に、分担として悪く無さそう?

ああ、そうだ。

アスクレーくんの側近も増やさないといけないだろうから、男女の区別なく子供から育てる騎士養成学校的なものを、立ち上げた方が早いかも知れない。

治癒魔法術師量産計画も有るから、養成学校的なものは、どのみち必要だしね。

1日で増えるシカの数も有限だし、騎士の養成と治癒魔法術師の養成で血を飲ませまくる前提なのだから、纏めさせておくに越したことはない。

当初に起こる個人単位の質の低下は時間を掛けて埋めるしか無いのだから、効率性は当初から、考え方の基本として意識しておくべきだ。

真面目な顔で顎ヒゲをしごいていた王様が頷く。

「悪くないな。理に適っておる」

「持続性の懸念も払拭できるだろう」

納得顔の騎士団長閣下を見たハロルド様は、お母様へと顔を向ける。

「4週間の王都勤務でレティア勤務が6週間。移動にそれぞれ1週間の道程か。かなり良い行軍行動の訓練になるな」

「直ぐに帰れると分かっていれば心理的な抵抗も少ないだろう。妥当な提案だと思うが?」

お母様から向けられた視線に、カレリーヌ様が溜息を吐きながら小さく首を振る。

「貴女以上ね・・・。少し文官に寄った考え方をするようだけれど、よく、こんな子を見つけてきたわね」

「見つけてきたのはルナリアだ。人を見極めるのも将の資質だぞ」

フッと口元を緩めたお母様に見つめられて、噛みしめるように何度か小さく頷いたカレリーヌ様が、ルナリアへと顔を振り向けた。

「そう・・・。そうね。よくやったわね。ルナリア」

「ありがとうございます?」

小首を傾げながらお礼を口にしたルナリアに頷いて返した上で、カレリーヌ様が再び私へと目を向けてくる。

じっと見つめられると落ち着かない。

多少―――、いや、かなり、目に険がなくなったね。

「本当に残念なこと。男児だったらテレサの婿に欲しかったわ」

「・・・ええ?」

なんか、凄く失礼なことを言われてない?

「貴女、本当は男児だったりしないのかしら」

「・・・しません! これでも、一応、女の子です!」

「本当に残念だこと」

なんか、ルナリアにも同じようなことを言われた気が。

個人の価値は、それなりに認めて貰えたのだろうけど、女としての価値は否定された微妙な気分になるね。

そこ! なに笑ってんの!

テレサはくすくすと笑っているし、お母様はカレリーヌ様にジト目を飛ばしている。

「やらんぞ」

「分かっているわよ。それに、女児では婿に出来ないものね」

軽く肩を竦めたカレリーヌ様が私に向けてくる目は、敵意や悪意といったものは感じられない、どこかで向けられたことのある、じっくりと品定めするような目だ。

「セリーナが、振り回されながらも貴女を買っている理由が、本当によく分かったわ」

「・・・セリーナ様が、私をですか?」

ああ、そうだった。

この品定めするような目って、セリーナ様がよく向けてくるやつだ。

セリーナ様にも、よく助けて貰っているとは思うけど、私、振り回してたっけ?

肩の力を抜くように息を吐いたカレリーヌ様が、表情を緩めた。

「無理を押し付けようとして悪かったわね。私も、いつまで生きていられるか分かったものでは無いから、焦っていたようだわ」

「・・・ちょっ、頭を上げてください、カレリーヌ様」

ゆるゆると首を振って自嘲するようにしてから、カレリーヌ様は頭を下げられた。

私は分かって貰いたかっただけで、侘びを入れさせるまでの意図は無かったから焦ってしまう。

「テレサの護衛部隊創設と育成は貴女に任せます。王城内の各署との調整は、オーグストとドネルクがやってくれるから、貴女たちは貴女たちの務めだけに集中して、自由にやりなさい」

カレリーヌ様に目を向けられた王様と騎士団長閣下が安心した様子で頷いている。

「・・・自由に、ですか?」

「私の不安を払拭するだけの往く道を示して見せたのは貴女が初めてだわ。私と渡り合うだけの器を見せた子はフレイア以来ね。その器を信じないで何を信じると言うの」

ううっ。今度は重いっ。

お母様が「この上なく面倒くさい方」と言っていたことを思い出す。

メンヘラさんか!

でも、圧力を放たないで穏やかな表情をしていると、カレリーヌ様って、本当にセリーナ様と顔立ちがよく似ているんだな。

セリーナ様の叔母様のはずだけど、セリーナ様にも他国の血が入っているんだろうか?

表に出さないように気を付けながら心の中で緊張を吐き出す。

分かって貰えたみたいで本当に良かったよ。

しみじみと「いつまで生きていられるか」なんて自嘲されたら、放っておけなくなるじゃん。

セリーナ様とよく似ているだけに、軟化されると憎みきれなくなってくる。

「・・・ありがとうございます。カレリーヌ様のテレサを思うお気持ちは、私にも伝わっておりますから、私の全力をもってテレサを守り抜いて見せます。それと、カレリーヌ様にご提案なのですが、王妃様がレティアの町へ療養に来られるのでしたら、カレリーヌ様もご一緒されてはいかがですか?」

「私も? どうしてかしら」

ぱちぱちと瞬いていらっしゃるけど、諜報部門のトップなら知らないわけが無いよね?

人生の残り時間が無いからって焦るなら、その時間を延ばすための努力もしようよ。

秦の始皇帝みたいに水銀を飲んだりまでは、やり過ぎだと思うけど、水銀よりも安心なものが有るよ?

「・・・お耳に入っておられるのでは?」

「レティアというと・・・、あの件かしら。魔獣の血を飲むという」

知っていて行動に起こさなかったと言うことは、信憑性を疑っているのかな。

じゃあ、ここで、アマリリア様も揺らいだ殺し文句をどうぞ。

「・・・セリーナ様と私のお婆様も、体の調子が良いと続けていらっしゃいますが」

「眉唾では無いのかしら?」

カレリーヌ様は不思議そうに首を傾げる。

うんうん。普通、そう思うよねえ。