軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

解毒魔法 ⑤

揚げ菓子の屋台へと向かうと、丁度、大量のお菓子を手にしたルナリアとノーアが戻ってきたところだった。

「買ってきたわよ!」

「・・・お帰り。夕食前なんだから食べ過ぎないようにね」

「大丈夫よ、このぐらい!」

「・・・だろうね」

下手をすると私の2倍ぐらい食べるルナリアたちが、揚げ菓子ぐらいで夕食を食べられなくなる未来は想像も出来ない。

「テレサとフィオレは、どこに行ってたの?」

「フィオレに、これを贈っていただきましたの」

「ブローチ?」

テレサの手元を覗き込んだルナリアが首を傾げる。

私と同じで装飾品などにルナリアは興味が無いからね。

「・・・レティアでの思い出にね」

「あっ!」

思い付きもしなかったらしく、しまった! って顔をする。

結構、市場で買い食いをしているルナリアの手元に、そんなにお小遣いは残っていないだろうに。

「気にしないで。私は、これ一つで十分ですから」

「ダメよ! 私の分をテレサにあげるわ!」

「夕食前ですので私は―――、い、いただきますね」

善意しか無いルナリアに押し切られたテレサは揚げ菓子を受け取ってしまった。

「良いのよ! ノーア、ちゃんと食べられる?」

「にゃ」

やりきった感のあるルナリアに笑顔を向けられたノーアも、機嫌良さそうに尻尾を揺らしている。

「・・・ゴメンね? テレサ」

「いいえ。お気持ちは嬉しいですから」

テレサと苦笑を交わしていると、ノーアを構いに行っていたルナリアが戻って来た。

「そういえば、フィオレ。何か面白そうな物は有ったの?」

「・・・うーん。強いて言えば、雷石っていう魔法道具かな」

私たちはヒントになる物を探しに市場へ足を運んだので有って、面白い物を探しに来たわけじゃないんだけどね。

「雷石って何だっけ?」

「・・・鉄とか金属に引っ付くんだよ。雷系の魔法を使って加工した石なんだって」

「引っ付くだけ? そんなの、何に使うの?」

「・・・色々と使えるんだよ。例えば、砂鉄を集めたり―――、あっ! 砂鉄!」

そうか! その手が有った!

「砂鉄? 鉄の粉ですわね? それがどうかしましたの?」

「・・・集めるんだよ!」

「「うん?」」

「・・・ちょっと見てて!」

腰の鞘からナイフを抜いて手ぬぐいを取り出した私は、手を切らないように気を付けながら、ナイフの腹を手ぬぐいでゴシゴシと擦り始める。

ルナリアには言葉で伝えようとするよりも現物を見せた方が早い。

テレサだって目で見た方が明確にイメージできるはず。

「・・・こうやってね。こう」

靴の踵で土の地面をガリガリと引っ掻いた後、掘り返された土に静電気を帯びた即席の磁石―――、ナイフの腹をスッと当てる。

町の土に砂鉄が含まれていなくても、微細な土の粒子は静電気で吸い付けられてナイフの腹に引っ付く。

「あっ! 分かりましたわ!」

「えっ? 何? どういうこと?」

「・・・毒を吸い付けて体外へ出せば良いんだよ」

「出来るでしょうか?」

「・・・テレサは、毒から触覚ヘビの魔力を感じ取れてる?」

「バイコーンの体から、何となく、バジリスクの魔石と同じ魔力を感じるとは思っていましたわ」

「・・・その魔力を帯びているものが毒なんだよ。その魔力を掌握して引っ張ってくれば毒だけを分離できる―――、と良いな?」

まだ私もイマイチ確信は無いんだよね。

でも、 閃き(アイデア) なんて、そんなものだ。

「鍵は、毒と魔力が分離してしまわないようにしながら掌握できるか、ですか」

「・・・出来そうな気がしない? 何の毒が使われたか分からない場合は、患者さんの魔力とは違う異物が毒だと考えることも出来る」

「出来るかも知れませんわ」

しばし目を伏せて考えたテレサが意志の籠もった目を上げる。

「・・・領主館に帰って、お婆様たちに相談してみよう!」

「ええ!」

頷き合った私たちは帰途につく。

毒の実験は危険を伴うから、テレサが主体である以上、新たな試みはお婆様たちの許可を得る必要が有る。