作品タイトル不明
解毒魔法 ③
昨晩、大人たちと話した通り、毒の分離を試みて私たちは頑張った。
うん・・・。頑張ったんだよ。
「市場を覘いてみるのは、どうかしら!」
「そうですわね・・・。何か手がかりが見つかるかも知れませんわ」
「・・・そうだね。ノーアも市場は初めてだろうし、行ってみようか」
体を動かしてスッキリしているルナリアは元気いっぱいだけど、午前中から試行錯誤し続けて、グッタリと疲れただけで成果が無かったテレサと私は、何とか返事をする。
今日はまた偶発的に触角ヘビを狩って食肉加工場へ搬入したから、市場は直ぐそこだ。
夕方近くで生鮮食品を扱う店は店仕舞いした後だろうけど、道具類を扱っている店や食べ物の屋台はまだ営業しているはずだ。
疲れているはずのピーシーズのみんなや騎士団の人たちは、何も言わず私たちの寄り道に付き合ってくれる。
申し訳なさで疲労感が増した気がするよ。
「あっ! あれ、美味しいのよ!」
「あっ! ルナリア様! お待ちください!」
市場に着いた途端、ルナリアはノーアの手を掴んで揚げ菓子を売っている屋台へと突撃していった。
まだ元気が残っているルナリアの剣術の訓練に付き合っていた面々が慌てて追い掛けていく。
持たせて貰っている私たちのお小遣いを預かっているのはピーシーズなのだから、ルナリア一人で突撃していってもお金を持っていないだろうに。
私のお小遣いを預かってくれているオーリアちゃんは、私たちの傍に残ってくれている。
「ルナリアは元気ですわね・・・」
「・・・そうだねえ」
「お爺さんとお婆さんみたいな口調になっていますよ」
「・・・そっかあ」
なかなか踏み込んだツッコミに、テレサは苦笑しただけだったけど、一応、テレサはお姫様だからね? オーリアちゃん。
市場を見回していたテレサが不意に足を止めた。
「あら。珍しいですわね。魔法道具のお店ですわ」
「・・・えっ? そうなの?」
「高価な魔法道具が市場に並ぶことなんて無いと思っていましたわ」
「・・・見に行ってみようよ」
「良いですわね」
お。テレサも、ちょっとだけ元気が出たみたい。
互いに目配せした私たちは、暇そうな店主が欠伸をしている道具屋へと連れ立って足を向けた。
「・・・見せて貰って良いかな?」
「へい、いらっしゃい! どうぞ、見ていってくんな! うえっ!?」
近くで見ると、店主は二十歳過ぎに見える線の細い男だ。
人の気配に慌てて欠伸を引っ込めた店主が威勢の良い営業スマイルを私たちへ向けた直後、顔を強張らせて仰け反る。
テレサの後ろには王都騎士団の強面の騎士様たちがぞろぞろと付いて来ていて、常に油断なく周囲を警戒しているから、まあ、これは仕方ないね。
テレサの身の上を察したらしい店主の挙動が固くなる。
「きょ、今日は、どういった物をお探しで?」
「・・・何か面白い物は無いかな、と」
「そ、そうですか。どうぞ、ご自由にご覧になってください」
「・・・ありがと。テレサも、何か気に入った物があったら言ってね。あんまり高い物は無理だけど、レティアでの思い出に贈るよ」
「あら。よろしいのですか?」
「・・・私、お小遣いって、殆ど使わないから」
食べ物に対する執着が強いことを自覚している私は貧乏性も持っているから、買い食いには興味が薄くてルナリアが一人で突撃することが多い。
私は、ちまちました買い食いよりも、食べるならガッツリと食べたい派だ。
間食なら干し肉を持ち歩いているしね。
ウォーレス領全体に関わるような出費は領主館に請求が来てピーシス家からお金が出るから、私自身がお小遣いを使うことは滅多に無いのだ。
とはいえ、金貨で数枚程度は常に持ち歩くようにと持たされている。
テレサやルナリアのために使うなら、手持ちのお小遣いで収まる範囲の出費は構わない。
友だち同士で贈り物をする感覚はイマイチ私には分からないけど、修学旅行で土産物を買う学生の心理ぐらいは理解しているつもりだ。
「・・・だから、遠慮しなくて良いよ」
「そうですか。では、遠慮なく」
嬉しそうに微笑んだテレサが店頭に並んだ商品へと向き直る。
大人の腰丈の高さに設えられている屋台には、装飾品の形状のものが多いようだ。
店主の顔を見て、屋台の端っこに並んでいる飾り気の無い黒い石を指す。
「・・・これって、何?」
「へ、へい。それは 雷石(らいせき) です」
「・・・どういうもの?」
「雷系の術式で加工した石で、金属に引っ付くんですよ」
「・・・へぇ」
要は、磁石か。こっちの世界にも磁石って有るんだな。