軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

解毒魔法 ②

私の答えにセリーナ様は片眉を上げる。

「まだ、ね」

「・・・思い付くとは限りませんが。どういう仕組みで毒が人間の体を壊すのか、どういう形で介入すれば上手く毒を取り除けるのか、何か方法が無いかと考えています」

「仕組み、か。そういう考え方をしたことは無かったな」

お爺様が唸る。お婆様の親友で、お婆様から治癒魔法を習ったはずのセリーナ様も興味を持ったようだ。

政治的な意図ではなく、純粋な興味のように見える。

「どんな仕組みだと考えたのかしら」

「・・・例えば、触覚ヘビの毒だと、肌に付けば肉を浸透して体内に入り、鼻で嗅ぐだけでも痺れます。短時間なら毒に触れた部分だけが影響を受けますが、数分間も触れていれば毒が全身に回って意識を喪失します。これって、血の流れに乗って毒が回るのだと思うのです。つまり、毒は血に溶けて雑じる、ということですよね?」

「噛まれたり服毒した場合は、もっと直接的だな」

確認する意味で聞いたら、お爺様は深く頷いた。

「・・・血は液体です。盛られた毒も液体だとして、液体から液体を分けて離す―――、分離できれば効果的に毒を無力化できるのではないかと。今日、考えたのは、ここまでです」

「それは難しいな。桶の飲み水に指先ほどでも泥が混じれば、それは泥水だぞ」

首を振るハインズ様に私も頷く。

「・・・そうなのですよ。でも、上手く具体的に想像できれば、魔法で何とかなるのではないかと思う部分も有って」

「そうね。不可能では無いでしょう」

「魔法術式とは、自由なものですからね」

私の考えにセリーナ様もお婆様も同意してくれた。

興味深そうに聞いていたテレサへとセリーナ様の視線が移る。

「ほんの1時間ほどだったけれど、頑張ってみたテレサは、どう感じたのかしら?」

「私は毒を消そうと考えていましたわ。フィオレが言うように、血液に溶けた毒を取り出す考えは有りませんでしたから、取り組んでみる価値は有るように思います」

望んだ回答だったのか、目を細めて一つ頷いたセリーナ様の視線がルナリアへと移る。

少し厳しい目になっているということは、お小言か。

「ルナリア。貴女は、二人が解毒に取り組んでいる間、剣術の訓練をしていたようだけれど、貴女は修得しようとする意志が無いのかしら?」

「わたしは上手く出来る方法が見つかったらフィオレに教えて貰うもの!」

「・・・そうだね。それで良いよ」

清々しく言い切るルナリアに、くすりと笑ってしまった。

おっと。厳しくなった目が私へ戻って来たぞ。

「貴女、ルナリアに甘すぎない?」

「ええ~? そんなこと無いわよね?」

この状況で私に同意を求められてもなあ。

まあ、フォローはするんだけど。

「・・・向き、不向きです。試行錯誤で余計に混乱するよりは、効率の良い方法が見つかってから覚える方が、すんなりと覚えられる人も居るのではないでしょうか」

「言うわね。まあ、―――そうかも知れないわ」

ルナリアとハインズ様を見比べてセリーナ様は苦笑する。

「うん?」

「何だ?」

ティーカップを手に首を傾げる孫娘と祖父の仕草は、そっくりだ。

「それにしても、雑じったものを取り出す、か。想像しにくいな」

ティーカップを手に何となく天井を見上げたお爺様もまた、首を捻る。

「・・・最初は、布で漉し取る風にできないかと考えたのですが、雑じった液体の中から特定の液体だけを漉し取れる結果が想像できなくて、その方向は諦めました」

「確かにな。それは想像できぬ」

「・・・ですから、別の方法を探す必要が有るのですが、何か案が無いものかと」

正直、煮詰まっている感が有るから、本気で何かアイデアが有ったら出して欲しい。

「ううむ・・・」

「液体と液体を分離する方法ですか・・・」

「分離する、というだけならば、“ 笊(ざる) ”だが、液体となると思い付かんな」

「パッと思い付く物では無いわねぇ」

お爺様、お婆様、ハインズ様、セリーナ様と、顔を見合わせて順に首を振る。

「・・・ですよね。もう少し考えてみます」

取っ掛かりが無いなあ。

日本の技術だと、液体や不純物の分離は色々な方法が色々な産業に実用されていたはずなのに、知っているようで知らない。

もっと色々なものに興味を持って技術の概要だけでも知っていれば、発想の幅は広がったのだろうか?

いやいや。知識だけ有っても私に発想力が無ければ無意味か。

何か、ヒントというか、閃きというか、取っ掛かりが欲しいなあ。