軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

猫耳ニンジャ爆誕 ⑭ ※アンサンブルキャスト面

「ラムレースやポルロッカが、どうやって落ちたのか知らないんでしょうか?」

「父祖から受け継いだあの城塞に、余程の自信が有るのだろうさ」

「知った上での籠城ですか。バカな上に面倒くさいですね」

首を傾げるトリアにフレイアがヒラヒラと手を振り、ノイエラが本音をぶっちゃける。

つづら折りの山道を登り切った先に有る城門は大手門と搦手門の2箇所。

あの手の城塞都市は侵入ルートが制限されるので、ウォーレス領軍が得意とする騎馬を利用した機動戦が使えずゴリ押しが難しい。

常道で攻めるなら、大規模な軍勢で複数方向から攻め寄せて城壁を突破するか、食糧が尽きて干上がるまで包囲し続けるかだ。

―――、あくまで、常道では、だが。

大昔の大戦期に造られた古い城塞なので奇襲部隊を送り出すための隠し通路のようなものを備えている可能性が排除できず、包囲している側の連合軍もそうそう気を抜けない。

とはいえ、西部国境の守りを担う“保守派”の一角だったアムシェリー侯爵家が“融和派”に転んで100年近く。

軍事予算をケチって十分に練兵されていない烏合の衆を相手にするなら、たかが3万程度―――、2倍の兵力差で精強なウォーレス領軍が押し負けることなど無い。

敵が城塞から討って出て来てくれれば楽に戦えるのだが、戦力評価の目までは腐って居なかったのか敵は穴蔵から出て来ない。

「城壁を破って攻め込んじゃダメなんですか?」

「あの蟻塚に頭を突っ込むのか? 双方に死人が増えるだけだから止めておけ」

「蟻塚ですか。上手く言いますね」

本当に面倒くさくなったらしいディーナにフレイアは首を振る。

エゼリアは直ぐそこに在る敵本拠地へと目を遣る。

野戦ならば目の前の敵兵を磨り潰せば良いだけだが、増築を繰り返した果てに密集した複雑怪奇な街並みが出来上がった城塞だ。

ゆったりと土地を使うレティアの対極にあるような狭い土地に、数多の人間がぎゅうぎゅうに肩を寄せ合って暮らしている。

地の利は当然、敵方に有るし、棲み家を荒らされれば非戦闘員の領民も、わらわらと湧き出して老若男女を問わず妨害や抵抗をしてくるだろう。

単純に倒すべき敵兵力が3万から8万に膨れ上がるのだ。無闇に押し入るのは悪手となる可能性が高い。

「じゃあ、どうするんですか?」

「いつも通りだ。ただし、巣を突っ突かれた蟻が飛び出して来るまで、念入りにドアをノックしてやるのが良かろうよ。御大と親父殿も機会があれば戦術として試すようにと早馬を送ってきているから、その旨はハロルドにも伝えてある」

「念入りにノック・・・?」

フレイアが言った意味を少し考えて、エレーナがポンと手を打った。

「ああ、なるほど。遠くから延々と“紅蓮”を放り込み続けるんですね?」

「そういうことだ。全てが瓦礫になっても閉じこもり続けるなら、そうさせてやれば良い」

フレイアの次に“紅蓮”の修得に熱心だったエレーナは宙を見上げて記憶を探っている。

「聞き覚えの有る戦術ですね。え~と。“準備砲撃”・・・でしたっけ?」

「何だっけ? それ、どこかで聞いた気はするんだけど」

「覚えておきなさいよ。昔、シェリア様の授業で、散々、絞られたでしょうが」

腕組みで眉根を寄せて目を瞑るディーナに、エレーナが呆れた目を向ける。

エレーナが与えた切っ掛けでノイエラとイディアは直ぐに思い当たったようだ。

「確か、三代前か四代前のチキュウ世界で兵士だった勇者が伝えた戦術、ですよね」

「あ~。よく分からないけど、こっちの技術体系では“使えない”って言われてるヤツ?」

「突撃する前に“術式で攻撃して敵を減らす”んでしたっけ?」

「少し違うが、概ね、そうだな」

エレーナから向けられた視線にフレイアが頷き、イディアが目を丸くする。

「えっ? でも、“使えない”んじゃ?」

「試してみる価値は有る。少なくとも、有用性は感じられたぞ」

フレイアは楽しげにニヤリと笑う。

この笑みは、数々の実証実験を行うときに浮かべていた笑みと同種のものだ。

もちろん、ハロルドやハウマンとも作戦の概要は共有してある。

「これ、フィオレ様の提案なのよ。“紅蓮”や“白焔”の爆発力なら有効なはずだ、って」

「攻め込まずに敵が音を上げて降伏するまで延々と術式を放り込んではどうか、なんて、エグすぎて笑っちゃったわ」

エゼリアとアンリカは苦笑を交わす。

フレイア宛の私信ではあるが、フィオレからの手紙はエゼリアたちも側近として見せて貰っている。

あの小さな少女はフレイアの本調子を引き出すのが本当に上手い。

長年、フレイアに仕えてきたエゼリアたちも舌を巻くほどだ。

「巻物みたいに分厚い手紙だと思ったら、そんなことまで書いていたんですか?」

「どうやら、心配させてしまったようでな」

ハインズが送ってきた早馬が持たされていた手紙には、いつもの如くフィオレからの手紙が添えられていて、ハインズからの手紙よりも添え物で有るはずのフィオレの手紙の方が数倍も厚みが有った。

目と口を丸くするディーナにフレイアも苦笑する。

ちまちまとした書類仕事が苦手なディーナからすると、「分厚い手紙」の時点で書くのも読むのも苦行なのは理解している。

「近況報告や検証結果だけでなく、あれやこれやと、驚くぐらい幅広く書いてましたよね」

「私の気晴らしになりそうなものを片っ端から書いて寄越したのだろうさ」

通り一遍の気遣いや励ましの言葉を連ねるよりも、実用的で興味を引く提案を連ねるフィオレの「気遣い」は独特の感性で、魔獣の飼育のように何故そうなったのかと首を傾げたくなることも多いのだが、その感性こそがフレイアの心を軽くしてくれる。

まだ向こうへ到着していない時点で書かれた手紙なのか、ノーアについて何も触れられていない文面からは、言葉にせずともフレイアの身を案じているフィオレの心の裡が在り在りと感じ取れた。

さらに、フィオレの手紙に同封されていたルナリアとテレサからの手紙も面白い。

フィオレと共に行動していて感化されたのか、物事の捉え方に視野の広がりが見えて大きな成長が見える。治癒術式の考察からフィオレが光術式を「時間に作用する」などと仮定した下りなど、常識から外れすぎていて、術式研究者として興味が尽きなかった。