軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

猫耳ニンジャ爆誕 ⑩

「分かった、分かった。降参だ」

「・・・では、お爺様?」

「庶子の扱いで、将来は嫁に出す前提でなら、フレイアの 養女(むすめ) とすることを認めよう」

「ワールター。周知させておけ」

苦笑するお爺様を見て、こちらも苦笑したハインズ様の指示に、話し合いの様子を見守っていたワールターさんもまた、苦笑して一礼で応えた。

「庶子」とは、非嫡出子のことだ。

正妻の子では無いから相続権が与えられないのが普通だけど、子は子。

これでノーアはお母様の義娘として、私の妹として、家族に認められた。

説得できたよ! お母様!

「・・・ありがとうございます。お爺様、お婆様、叔母様。セリーナ様も、ハインズ様も、ありがとうございます」

ノーアに捕まっていて立ち上がれないから、座ったままだけど深々と頭を下げる。

ことの成り行きを黙って見守っていたテレサが、ほぅ、と溜息を吐いた。

「妹ですか。羨ましいですわね」

「・・・羨ましいの?」

「私もルナリアと同じ、末っ子ですから」

「そうね」

私の反対側に居るルナリアを覗き込んで、テレサは互いに苦笑を交わす。

正確には知らないけど、王妃様って、お母様と変わらないぐらいの歳のはずだよね。

お母様よりも一つか二つ上って聞いた気がするから、まだ30歳になるか、ならないか、ぐらい。

テレサが生まれたのは、王妃様が25歳ぐらいの頃か。

テレサが生まれるのが遅かったのは、王様が、かなり年上なせいかな?

それとも、当時は第1王妃様が居た影響なのかも。

こっちの世界の女性って結婚適齢期の常識が早いから、3児の母のミリア叔母様だって、まだ24歳。

日本だと30歳ぐらいで結婚するOLなんて普通だったよ。

子供の一人や二人、まだ、ぜんぜん産めるじゃん。

「・・・国王様と王妃様に、頑張って、って、お願いしてみれば?」

「お父様とお母様にですか? ですが、お母様はご体調が・・・」

悲しそうに笑みを浮かべるテレサの肩にポンと手を置く。

問題無いよ。

元々、テレサの頑張りの根底に有る望みが“それ”だってことぐらい、私たちは気付いている。

手探りだけど、そんなものは諦める理由には、ならない。

諦めきれないから、テレサはコツコツと頑張り続けてきた。

だから、きっと、テレサなら、折れないように支えてあげれば、やり遂げる。

「・・・テレサが完全に治してあげれば良いんだよ」

「私が・・・、私に出来るでしょうか?」

「・・・練習するための毒も練習台も私たちの手元にある。でしょ?」

王妃様が患っているのは、毒を使った暗殺未遂事件の後遺症。

毒によって効果は違うだろうけど、投薬と治癒魔法は根底に有る治療の概念が、どこか違うことに私たちは気付いている。

投薬では治せなくても治癒魔法なら可能性は有る。

魔力という暗黒物質が万能物質と仮定するならば、やって、やれないことは無いはずだ。

王妃様の”生存”ではなく、”完治”を目指そうじゃないか。

ハッとしたテレサの目に決意の光が宿る。

「そうですね。私、頑張りますわ」

「・・・うん。私も手伝うから、一緒に頑張ろう」

「わたしも手伝うわよ!」

腕を伸ばしてルナリアの髪を撫でながら、空いた手で口に立てた指を当てる。

「・・・ルナリア? ノーアが寝てるから静かにね?」

「あ。(わ、わたしも手伝うわよ!)」

「・・・ヒソヒソ声で言い直さなくても良いってば」

私の口から笑い声が漏れる。

ルナリアも笑みを隠せていないってことは、さては、わざとか。

この遣り取りが、ルナリアの中で旬のネタになっている可能性が有るな。

「フィオレに妹ができて、テレサも弟か妹ができるのね。わたしも欲しいわ」

「・・・ハロルド様もまだお若いし、お嫁さんを貰えばルナリアの弟や妹は作れるんだよね」

考えてもいなかった様子で、ルナリアはコテリと首を傾げた。

「お父様の新しいお嫁さん? わたしの新しいお母様ってこと?」

「・・・そうなるね。ルナリアは平気?」

その状況を想像しているのか、ルナリアは宙に視線を泳がせる。

「う~ん。叔母様なら良いかなぁ」

「・・・ふむ」

そうか。

ルナリアはOKなのか。

押せばイケる?

ハードルは有りそうだけど、「家」として、どう考えているんだろう。

状況から考えて否定的では無いはずなんだよね。

「・・・ハインズ様、お爺様。ルナリアは、こう言っていますが、その辺り、どうなのでしょう?」

「む? フレイアをハロルド様の後妻に、ということか?」

ノーアの件が一応の決着を見て、ティーカップを手に取っていたお爺様が目を丸くする。

ちゃんと向き合ってくれて子供の戯言と軽くあしらうことをしないお爺様は、カップの中で揺らいでいるお茶に目を落としつつ、しばし吟味する。

「フレイアが当主を退いた後ならば、可能と言えば、可能では有るな」

「・・・そうですか。可能なのですね」

ふむふむ。

貴族家の慣習の全てをマスターするのは、私には理解が難しいけど、隠居していれば良いんだね。

どこから手を付けたものかと考えていたら、セリーナ様が咎めに来てくれた。

「フィオレ。貴女、何を考えているのかしら?」

「・・・お母様の幸せです」

「フレイアの幸せ?」

即答した私の答えが予想外だったのか、セリーナ様が目を丸くする。