軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

光魔法というもの ⑥

「違うのかしら?」

「・・・いいえ! 腑に落ちました。ありがとうございます!」

あ~、スッキリした! セリーナ様にガバッと頭を下げる。

セリーナ様は、笑顔の私に、余計に怪訝な顔をする。

「どういうことか、説明しなさい」

「・・・あ、申しわけ有りません。光属性とは“何に作用するものか”と、昼間に考察していて答えが出なかったものですから、嬉しくて」

「何に作用・・・、術式の属性と行使の結果に偏りが有ることの研究は昔からされてきたものだけれど、面白いわね。フィオレは、どう考えたのかしら」

興味を引いたのはセリーナ様よりもお婆様の方だった。

採掘場の開発と戦争で、みんなが忙しくて座学の授業が減り気味だったから、お婆様に私の考察を聞いて貰えるのは嬉しい。

お母様が居れば私の考えを聞いてくれて教えて貰えるのだけど、お婆様に借り出して貰った領主館の蔵書を手空きの時間やルナリアたちが寝た後に読むだけでは、魔法の理解を深めるのにも限界を感じていたんだよ。

「・・・他の属性は、“物質に作用する”けれど、光属性は何か“違う”と感じたのです。テレサの治癒魔法が“逆回し”で効果が上がったことにも違和感を感じていて、その違和感の原因が解明できれば、治癒魔法が使える魔法術師を量産できるんじゃないかと」

「ほう? 治癒魔法術師を増やせるのか」

「・・・まだ、可能性の段階ですが」

ハインズ様が食い付いたのは軍事的目線かな?

でも、それだけじゃないよ?

日を改めずに許可が貰えそうなら、プッシュするに決まってる。

理屈は色々と考えてきたし。

「・・・神教会が治癒魔法でボロ儲けしていることも聞きましたから、神教会の資金源を潰せれば良いなぁ、と。それに、大陸中に治癒魔法が広まれば、みんなが助かりますよね?」

「あら。良いわね、それ」

セリーナ様も食い付いた。

こういうの、好きだと思ったんだ。

綺麗事が好きな上流階級が乗りやすい大義名分は社交界で大いに使えるはず。

地球でも先進国の上流階級層や知識層が大好きで、共産主義活動家が利用していた「偽善」だよ。

私たちからお母様たちを引き離してお母様に辛い思いをさせた連中を、私は絶対に許す気が無い。

え~っと、アレだ。絶許?

「神教会の権益喪失は勇王国の戦略にも影響するか」

「治癒魔法術師が沢山増えれば、殿下が目立たなくて済むわね」

「治癒術式の寡占は神教会の教義の源泉でも有る。影響力低下は免れまい」

あ。神教会の教義は知っておきたいと思ってたんだ。

いつか衝突するだろう敵の情報は早めに知っておくべきだからね。

確か、神教会が奉じているのは光の神様だったはず。

「・・・教義? “治癒魔法が有るのは光の神様のお陰”とでも?」

「その通りよ。“勇者を召喚できるのは光の神のご加護”とも喧伝しているわね」

「・・・なるほど。勇者召喚が必要かは疑問ですが、光魔法を大陸中に普及させれば、多少なりとも神教会の勢力を 殺(そ) ぐことは出来そうですね」

神秘性は信仰の源泉で、地球でも科学技術の発達で“神が世界を創造した”とする教義との整合性が取れずにキリスト教が苦労したのは有名な話だ。

神秘性を喪失させられれば、私の思い付き以上に効果が期待できそうだよ。

「神教会の恨みを買うであろうが、技術の開示を上手く使えば、親・勇王国諸国を引き剥がせるかも知れぬな」

「そういった外交工作はサリトガの得意分野なのだがなあ」

派閥の粛清で敵対したから使えないと?

自業自得だとは思うけど、敵は少ない方が良いよね。

一度は敵対した相手を動かすのに、エサは必要かな?

「・・・報告を受けた王家の指示でウォーレス領が惜しげも無く情報を開示した、とか、どうでしょうか?」

「利を与えることでサリトガと“融和派”を動かして、王家とウォーレス領に対する粛清の風当たりも抑えられる、と?」

「筋書きは悪くないわ。宰相閣下の出方によっては、治癒魔法術師の育成を“融和派”の残党に任せても、王国に害は無いでしょう」

「・・・私も、そう思います」

そもそも、王国内で最も光魔法の情報を持っているのは王家だ。

ウォーレス領で独占することは出来ないし、するべきでも無いだろう。

現時点で分かっている範囲の情報で、光魔法に強力な攻撃力が有るとは聞かないし、任せても直接的な脅威にはならないはずだ。

「本当に治癒魔法術師を増やせるかを検証するためにも、魔獣を使って治癒術式の実験をしたいのだな?」

「・・・はい」

「分かった。ただし、身元の怪しい者を殿下に近付けるわけには行かん。治癒師の身元が明らかになるまで少し待て」

「・・・承知しました」

ヨシ。許可ゲット!

裁可に頭を下げて応じた後、引き続き、ハインズ様と向き合う。

「・・・それと、一つ教えていただきたいことが有るのですが、もう少しだけ、お時間を戴いてもよろしいでしょうか」

「儂に、か?」

「・・・はい。出来れば、お爺様の見解も、併せてお聞きできればと」

ハインズ様の軍事的目線で思い出したから、お二人に聞いておきたいことがある。

ハインズ様にチラリと目を遣って、ハインズ様が小さく頷いたのを確認したお爺様が私を見る。