作品タイトル不明
光魔法というもの ④
「・・・さっぱり分からん」
情報が少なくて考察に繋げられそうな 要素(ファクター) を思い付かない。
お母様なら、何か情報を持っていないだろうか。
王家が持っている資料を読み漁って修得したと言っていたはずだから、テレサも同じ資料を読んだ可能性が高いんだよね。
でも、同じ資料を読んだ結果というのなら、他にも幅広い見識を持っているお母様の考察の方が核心に近いと思うんだよ。
ミリア叔母様は、お母様が、毒を盛られて体調を崩した王妃様に治癒魔法を使って症状を改善させたと言っていたのだから、テレサよりも深く治癒魔法を理解しているはずなのだ。
その魔法の本質を効率的に教えることが出来れば、治癒魔法が使える魔法使いを爆発的に増やせる可能性が有る。
医療は大事だ。
回復薬と併用して治療すれば、生存率の向上やご長寿に繋がるのではないだろうか。
労働力が生産力に直結し国力に資するなら、テコ入れしない手は無い。
夭逝する子供やケガでリタイアする人が減るだけでも労働力は増える。
お爺様やお婆様たちにも長生きして欲しいしね。
それはそうと、ケガ人が居ないと練習できない現状は問題だよねえ。
死んでも代わりが居るシカをモルモットにして治癒魔法の練習に使えないだろうか。
触角ヘビの毒が麻酔に使えれば何とかなるかも知れないけど、アレの研究って治癒師に任せろって取り上げられちゃったからなあ。
取り上げたお母様の気持ちは、ありがたく感じているし、異議も反発も無いんだけどね。
でも、やっぱり、使える物なら、使いたい。
町へ帰ったら研究の進捗がどうなったか確認してみよう。
誰に研究を任せたのか、お婆様だったら知ってるかな?
つらつらと考えていたら、くいくいとルナリアに袖を引かれていることに気が付いた。
「ねえ、フィオレ?」
「・・・うん? どうかした?」
「何か、またヘンなこと考えてない?」
「・・・ヘン、とは酷いな。魔獣で治癒魔法の練習ができないか考えてただけだよ」
「魔獣で練習するの?」
素振りをしながら私たちを見守っているピーシーズにも聞こえたのだろう、ルナリアだけでなくピーシーズも怪訝な顔をする。
「・・・だって、ケガ人が居ないと練習できないし」
「それもそうね!」
ハッとしたルナリアが即座に陥落する。
私を信じてくれている証拠だろうけど苦笑が漏れる。
「・・・解決しないと出来ない問題点が有るんだけどね」
「トドメを刺す前に練習すれば良いんじゃないの?」
「・・・じっとしていると思う?」
「あ、そっか。暴れるわね」
「・・・だから、触角ヘビの毒で麻痺させてから練習台に出来ないかな、って」
「ええ? 毒入りの干し肉なんて、ダメじゃない?」
ルナリアの認識も「魔獣=お肉」になってるね。
私のせいだけど。
「・・・毒の研究をお母様が治癒師に依頼したはずなんだよ。その研究の結果次第かな」
「町へ帰れば分かるの?」
「・・・たぶん? 帰ったら、お婆様に聞いてみるつもり」
「そうなのね!」
私の「考え事」が終わったと見て取ってパァッと顔を輝かせたルナリアが、いそいそと剣を片手に前へ出る。
「じゃあ、身体強化術式の練習をするわよ!」
「・・・そうしよっか。テレサも帰ってこないし」
格好良いところを見て欲しいルナリアが、イイ笑顔で剣を構えてみせる。
左足を前に、半身に立って、立てた剣の柄を両手で持つ、いわゆる八相の構えというヤツだ。
左足を軸に右足を踏み込むことで、剣が届く間合いに入ると同時に体重を乗せて攻撃力を上げることができる。
剣の軌道も、振り下ろし、横薙ぎ、突き、と、バリエーションは有るが、左半身が前へ出ているので、左側、つまり、背中側からの先制攻撃を受けると剣で防御しにくい難点がある―――らしい。
逆に、攻撃モーションの最初の一歩目が完了しているので先手を取りやすい攻撃的な構えなのだそうだ。
日本の剣術みたいなことを言ってるなあ、なんて、よくよく考えたら、昔から日本人が召喚魔法で拉致されることが多かったって言ってたっけ。
拉致被害者が大昔の人たちだったら尚のこと、剣術にも日本の技術が入っていて当然か。
ルナリアの体に力が入ったのが分かる。
「ちゃんと見ておきなさい! こうして! グッとして! バッとするのよ!」
ルナリアの姿がブレたと思ったら、2メートル先に水平に剣を突き出したルナリアが居た。
何度見ても、瞬間移動したかのような速度の突きだ。
これを真似ろと言われると・・・。
「・・・うん。やっぱり分かんない」
「ええ~?」
ビシッと突き終わった姿勢だったルナリアの体から力が抜けて、眉尻が下がった。