作品タイトル不明
光魔法というもの ②
ピーシーズのみんなから聞き取った事前情報では、“ 光(ルーメン) ”の魔法は太陽をイメージして使うのが普通で、脳裏に空の太陽を思い浮かべて魔力を籠めれば「光」は点る。
もの凄くイメージしやすい魔法だから、簡単な呪文でイメージを補強すれば、結構、誰でも使えて、使えない人を探す方が難しい魔法なのだそうだ。
生活術式と呼ばれる部類の基礎魔法は、この手の「イメージが簡単なもの」を指す。
森でのルナリアとの魔法談義で「イメージこそが重要」と最初に気付いてしまった私は特殊事例で、一般的な生活魔法は難なく修得できてしまって、ピーシーズもテレサも私の生活魔法に違和感を持つことは無かったようだ。
テレサが「光魔法が得意」というのは、この「光」の縮小拡大や明暗を器用に調節できるのが根拠で、「太陽のイメージを崩して変化させる」と考えれば、確かに器用なのかも知れない。
私のように「調光スイッチ付きのLED照明」や「パソコン画像の縮小拡大」なんかを見た経験を持っているのは、筆記試験で試験前に正答を見せて貰ったようなものだろう。
私としては、ありがたく自分の記憶を有効活用させてもらうだけだ。
テレサの物心ついて以来の努力の結果にアッサリと追い付いた私に、テレサは何も言わず微笑んでいただけだった。
黙られると怖いから、テレサのステップアップに全力で取り組む必要に迫られた。
問題は次のステップだ。
治癒魔法の練習は「ケガをした人」を探すところから始まる。
運良くケガ人を捕獲したら、動かないようにお願い―――、いや、正直に「動くな、と命令して」と言おう。
半ば強盗のようなセリフでケガ人を捕獲してから「貴重な患部」に向かって「治れ~」と強く念じるのだそうだ。
さらには、「結構、魔力消費が重たい」んだって。
最初の「治癒」に成功したら、ある程度までは上手くなるのが早いらしい。
最初の「成功」から後はサクサク上手くなる?
それって―――、本当に「慣れ」?
魔法は「慣れ」で上手くなるのは事実だ。
でも、それ以上に「経験」―――、「具体的な視覚的情報を得てイメージが明確になる」ことが重要ってことなんじゃ?
魔力消費量だって、お婆様との森での授業で、「何も無い空間に土魔法で杭を作る」のと「地面に魔力を流して実物の土を材料にする」のとでは大きく違った。
テレサの治癒魔法も、何も無い状態から、ただ「治れ」と念じているだけだから、魔力消費量が多くなっているとは考えられないだろうか。
「・・・・・ふむ?」
ケガ―――、傷口って、どうやって出来るんだっけ?
小枝を拾って、小枝の先を地面に押し付けて引く。
ズリズリズリと引っ掻かれた地面に「傷口」がつく。
「ちょっと、フィオレ? 私が今、教えているんですのよ?」
「・・・うん。分かってる。今、大事な実験をしてた」
「大事? 小枝で地面を引っ掻くのが?」
「・・・もう一度、やるね?」
まだ「傷口」が無い地面―――、人間の素肌に小枝が当たって、肌―――、体細胞を傷付けることで「傷口」が出来上がる。
こっちの世界の人に「体細胞」と言っても通じないだろうから、単に「肌」と説明する。
「・・・これを、逆回しに戻すと、どうなる?」
地面に付いた「傷口」の両脇に盛り上がった土を指先で「傷口」の溝に押し戻して行く。
「溝が無くなりましたわね」
「・・・そう。傷が治った」
私が地面から顔を上げると、ルナリアやピーシーズは首を傾げているけれど、テレサはハッとした表情を浮かべていた。
やっぱ、頭いいわ。テレサは。
動画や映画を見たことも無いのに「逆回し」という概念を一瞬で理解しちゃった。
したんだよね? 理解。