軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

採掘場防衛戦 ⑪

「・・・テレサ。それ、教えて」

「では、私にも“紅蓮”を教えていただけますか?」

「・・・うっ!」

ニヤッと笑ったテレサに、たじろいでしまった。

「・・・そ、それは、私の一存では約束できないな・・・」

「冗談です。フィオレを困らせるつもりは有りませんよ。色々と教えて貰っていますしね」

「・・・ううう。ごめんね」

私はテレサが“紅蓮”を覚えても問題無いと考えていたけど、テレサに対する“紅蓮”の流出は、王宮に対するウォーレス領の 優位性(アドバンテージ) を失うことを意味する。

歴代一族の遺産とも言える魔法を、軽々しく流出させることは出来ない。

逆に言えば、光魔法の情報を持つアドバンテージは王家歴代の遺産ということになる。

興味に駆られて交渉するべきでは無いし、無神経だった。

頭を下げた私にテレサは首を振る。

「いいえ。私が強力な攻撃術式を身に付けても自己満足以上の意味が有りませんし」

「・・・そんなこと無いよ。切り札を持っているのと持っていないのとでは、万が一の時に生き残れる確率が大きく変わる」

これは私の本心。

身を守る術の有無は生存率に直結する。

私がテレサも攻撃手段を持つべきだと考えているのも本心だった。

「あら。いざというときには助けてくださるのでしょう?」

「・・・それはそうだけど」

クスクスと笑うテレサへ返す言葉に困る。

「わたしも助けに行くわよ!」

「ありがとう、二人とも。ともかく、私に“紅蓮”は必要ありません」

胸を張るルナリアにテレサは嬉しそうに微笑む。

でも、そのぐらいで不屈の精神を持つルナリアは引き下がらない。

「身体強化術式は覚えておいた方が良いわ! 襲われたら返り討ちにするのよ!」

「う~ん。護身術という意味では、格闘術や暗器の扱いを覚えたいですわね?」

「・・・ああ、確かに。魔法や剣術だけでは足りないかも」

テレサのように前へ出ることが許されない立場だと理に適っている。

テレサを脅かす者が「敵」だけだとは限らないのだから。

異論が出ても、めげないルナリアはニッと笑う。

「やることが多いわね! 頑張って覚えるわよ!」

「・・・うん。全部やろう」

「お二人の、そういうところ、好きですわよ」

私も好きだよ。

心に負担が少ないポジティブシンキングは素晴らしい。

ポジティブなルナリアだからこそ気になることが有る。

「ところで、ルナリア」

「なに?」

「・・・なんで剣術だったの?」

「うん? なんで、って何が?」

何が「なんで」なのか、本気で分かっていない感じ?

「・・・ルナリアは“紅蓮”を先に覚えたがると思ってたから、ちょっと意外だった」

違和感が有ったんだよ。

ルナリアもテレサも、今までは私がやっていることを同じようにやりたがったのに、今回の採掘場籠もりの間、二人とも各自で別々のことに挑んでいたみたいなんだよね。

自分のことだけしか考えていなかった私が、そのことに気付いたのは、レティアの町に帰ってきてからだった。

キョトンとしたルナリアが首を傾げる。

「だって、術式を使っている間、フィオレって石像みたいに動かなくなるじゃない」

「・・・あ。私を守るために」

そうか。それでか。

絶句した私に、破顔したルナリアが太陽みたいな笑顔を向けてきた。

鼻息も荒く、グッと拳を突き出す。

「わたしが守ってあげるから、フィオレが敵をドカーンとやっつけるのよ!」

「ルナリアとフィオレがケガをしたら、私が治してあげますね」

目を細めてルナリアを見たテレサも柔らかな笑みを向けてくる。

胸にグッと来た。

「・・・そっか。二人とも、それで・・・」

反省しなきゃ。

二人は私を心配してくれていたんだ。

ただ心配するだけで無く、胸を張って私の隣に立つために、私が自分のことしか見えていない間も一緒になって頑張っていてくれた。

お母様からの手紙が切っ掛けの一つだったかも知れないけど、戦争が近いと気付く前から、私は自分一人で戦って、自分一人で全てを守ろうとしていたんじゃないだろうか。

私一人で生き抜こうとしていた森の中と、レティアで暮らす今は状況が違う。

敵が攻めてくるまで時間が無かったのは確かだけど、私一人で戦争なんて出来るわけが無い。

意識していなかったけど、私は焦っていたのだろう。

これは良くない。

手の中に得た幸せを守るために抗う意志は変わらないし、私の大切なものを何ひとつ譲るつもりは、今も無い。

独断専行の全てが悪いとは思わないけど、独断専行が状況を悪くする事例は多いのだ。

地球の歴史にもロクでも無い愚将の失策と記録された独断専行は多々あった。

一瞬の判断が生死を分けるであろう戦場で身勝手に突っ走ったりしたら、きっと誰かを巻き込んで自滅することになるだろう。

私が護るべき二人に心配を掛けてフォローして貰うなんて、周りが見えなくなるのは良くない。

日本に居た頃と違って、今の私の周りには、私を守ろうとしてくれる人たちや、私の背中を支えてくれる人たちや、一緒に頑張ってくれる人たちが居ることを忘れちゃいけない。

「・・・ありがとうね、二人とも」

両腕で二人の首っ玉を掴まえて抱きしめたら照れくさそうに身を捩るけど、ダメだよ。

逃がさないからね。