軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

採掘場防衛戦 ⑩

「・・・あれ? 剣なんだ」

「フィオレが頑張っている間、ルナリアも頑張っていましたのよ」

「・・・そっか。そうだよね」

私たちは同志なんだから、私が自分のことに必死で周りが見えていなかった間も、ただ、じっと待っているわけが無い。

況してや、ウォーレス気質のルナリアだ。

ルナリアはルナリアに出来ることを全力でやっていたはずだ。

ルナリアに付いて行ったのがアリアナさん並みに脳筋度が高いアイシアちゃんという時点で方向性の予想は付くけど、ルナリアが何を身に付けたのかが気になって、私も前のめりになる。

甲冑とルナリアの距離は、おおよそ5メートルぐらいだろうか。

普通に剣を振り回しても届かない距離だ。

さて、ルナリアは何を見せてくれるのか。

鞘を腰の 剣帯(ベルト) に掛けたルナリアが剣を抜く。刃渡りが60センチメートルほどあるショートソードで、体が小さなルナリアが持つとロングソードほどの対比になる。

大人サイズの剣を右手1本で握り、左手を前にした半身に構えたルナリアが、膝を柔らかくして腰を落とす。

ルナリアが構えを取ったことで騒いでいた群衆がスッと静まる。

片手で剣を構えた時点で身体強化魔法が発動しているのだろうことは私にも分かる。

私と違うことをしている間に、ルナリアは身体強化魔法を特訓して修得していたのだ。

採掘場に籠もるまで、私たちは魔法以外は基礎訓練ばかりで武器を使った訓練までさせて貰えていなかった。

それが、たった6日ほどの間に、なかなか堂に入った構えを取れるようになっているのだから、どれだけ真剣に取り組んできたのかが伝わってくる。

元が素直で真っ直ぐなルナリアだからこそ集中力が有って物覚えが早いのは、風ジェットカッター魔法を教えていたときから私は実感していた。

活発なルナリアが体を動かすことが好きなのも、一緒に乗馬の訓練を始めたときから知っていた。

地味で、しんどい基礎訓練は嫌がっていたみたいだけど、その基礎訓練で体力が付いて体内魔力保有量が増えたルナリアが、脳筋度を高めて脳筋の先達から教えを受けたなら、一体何が起こるのか。

すごく楽しみだ。

呼吸を整えたルナリアの集中力が高まったのを感じる。

ゴクリと息を呑んだのは、私か群衆か。

「ハァッ!」

ルナリアの姿がブレた、と思った瞬間、「ガアアアアン!」と、金属的な衝突音が響いて、数メートル先にルナリアの姿が有った。

映画のフィルムがコマ落ちしたような移動速度。

腰を捻って右肩を前へ出したルナリアは右腕を真っ直ぐに伸ばしていて、握った剣が甲冑どころか支柱の杭まで貫いている。

衝撃で吹き飛んだ兜がクルクルと回転しながら放物線を描いて数メートル先に落ちた。

「・・・うわっ! スッゴい!!」

固唾を呑んで見守っていた群衆が爆発したように沸く。

チラリとこっちを見たドヤ顔のルナリアに向けて、私も群衆に負けないように拍手する。

避けないし止まったままの標的とは言え、板金甲冑の胸当てだけでなく、中の丸太まで貫く突きなんて、どれだけの貫通力だったんだろう。

銃火器大国・アメリカとかだとストッピングパワーって言うんだっけ?

薄い金属板を成形した甲冑は兎も角、直径10センチメートルは有る丸太を貫通するとなると、ライフル銃弾並みの運動エネルギーを突き込んだということだ。

身体強化魔法が普及している、こっちの世界の白兵戦が、どんな光景になるのかは想像できないけど、ルナリアの突きが、人体を破壊して敵兵を行動不能にするのに十分な攻撃力を持っていることは、十分以上に証明できただろう。

本当に凄いなあ。

物理攻撃では完全にルナリアが一歩先んじている。

出来るような気はしないけど、私も出来るようになれ、って言われるんだろうなあ。

ん? もしかして・・・?

「・・・テレサも出来るの?」

「無理ムリ。私は分野が違うもの」

私の隣で手を叩いて喜んでいたテレサを見ると、笑いながらヒラヒラと手を振って否定する。

良かった。

テレサまで脳筋度を上げていたら、私に課されるタスクの脳筋が繰り上げられるところだったろう。

剣身の根本近くまで刺さっている剣を引き抜こうと頑張っていたルナリアが、諦めたのか、鞘だけをアイシアちゃんに返して戻ってくる。

「・・・凄いね! あんなの、よく出来るようになったね!」

「頑張ったもの! 当然よ!」

腰に両手を当てて得意げに小鼻をすぴすぴと膨らませているルナリアが、ぜんぜん当然っぽくなくて可愛い。

頑張ったんだねえ。

テレサと2人でルナリアを抱きしめてヨシヨシと頭を撫でる。

犬の躾じゃ無いけどルナリアは褒められて伸びる子だと思うから、よく出来たときは、しっかりと褒めてあげないとね。

撫でまくっていたら、衆人環視の中では流石に照れくさくなってきたようだ。

身を捩って私の手から逃れたルナリアが、テレサの後ろに回って押し出してきた。

「て、テレサも頑張っていたのよ!」

「あらあら。私?」

背後から背中を押してくるルナリアに顔を振り向けてテレサが苦笑する。

「・・・テレサも、やるの?」

「やりませんよ。私の場合、見せても分かりにくいですから」

「・・・うん?」

分かりにくい、だと?

テレサは自慢や隠し事を、あまり、しない子だ。

事実を事実のままに伝えるか、言質を取られないようにするためか黙っていることが多い。

憶測ではものを言わず、周りが何らかの答えを出すまで黙って聞いていることが多いんだよ。

「隠し事」と、ただ「黙っている」のは、似て異なるものだと私は理解してる。

自分の意見を補強するために「テレサの同意を得たい」とか、テレサから情報を引き出したい者は、テレサの沈黙を勝手に解釈して、勝手に踊ることだろう。

そうやってテレサが「黙っている」ことを私は否定的に捉えないし、自分の身を守らなくてはならないテレサの立場を思えば、沈黙は正しい選択だと考える。

そのテレサが何か出来るようになっていることを匂わせてきたってことは、謙遜しているとか奥ゆかしいとかでは無く、本当に凄さが見て分かりにくいってことかな?

何だろう?

何でも、そつなくこなすテレサがご執心なのは光の魔法だったよね。

「・・・もしや、治癒魔法?」

「まだ、擦りキズ程度しか治療できませんけどね」

「・・・テレサも凄い! お婆様でも難しい魔法だって言ってたのに!」

大昔から神教会が秘匿しているせいで情報が無いのも有るけど、イメージが難しいのか、光の魔法は修得できる人の数が極端に少ないらしい。

具体的には、魔法オタクの魔法術師団や学術研究院でも数人ずつしか使える人が居ないぐらい。

それを自力で修得したなんて、誇るべきことだよ。

さらに輪を掛けて情報が無くて訳が分からないのは闇の魔法なのだそうだけど、闇の魔法で何が出来るのかも殆ど分からないから、あのお母様でさえ、まともに修得できていないという唯一の魔法が闇属性だからね。

光の魔法で出来る代表的なものは明るく照らすことだけど、ケガの治療や体力の回復、解毒や呪いの解除なども、光属性の魔法の範疇だそうだ。

まあ、現代日本人的にはテンプレな光魔法のイメージ通りだね。

少ないとは言え、お母様やお婆様のように王宮が持っている少ない情報を研究して独力で修得にまで至る人や、たまたま使えるようになった人も希に居るわけで、テレサは、そっち側の特殊な人の仲間入りをしたわけだ。