軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

採掘場防衛戦 ③

「・・・やってみよう。―――、あれ?」

そこで、はたと困る。

そう。「やってみよう」と考えたのは良いけど「重力」って、何?

いや、知識としての理屈は分かってるんだよ。

これでも一応、高校卒業までは日本の教育を受けたからね。

重さが「重力」を生み出す?

じゃあ、どのぐらい重ければ「重力」って発生するの?

物理学的な言語で言えば、「重さ」と「質量」は違うんだっけな。

具体的には単位が違ったはず。

日本語的な「重さ」だと「 g(グラム) 」や「 Kg(キログラム) 」なんかの重量単位で表すけど、物理学的には、この重量単位は「質量」を表すもの、だったかな。

物理学的な「重さ」を表す重量単位は・・・、何だっけ?

まあ、いいや。

私の日本語的思考法の中においては「重さ」イコール重量単位で構わない。

惑星規模の「重さ」なんてスケールが大きすぎて具体的なイメージが湧かない。

地球の海抜に近い地上での重力が1Gだよね。

「G」って何の定義で重力を表す単位だっけ?

ゴキブ(ry―――、イカンイカン! アレを思い出すのはNGだ!

アイツら、どこにでも出るから、ヘッドライトを点けて夜道を歩いていたら、顔を目掛けて飛んできたりするんだよ。

何だっけ? そうだ! 「G」だった!

一般相対性理論?

「重力」は「時空に作用する」ものって定義が有った気がする。

うああ、分からん!

「時空」って何だよ!

頭を抱えて転げ回りたくなるけど、本当に転げ回ったら、ただのヘンな人だ。

何なのか分からないものを具体的にイメージするのは難しい。

魔法術式の構築呪文が文節に区切って説明するような構成になっていた理由がよく分かるよ。

それが「何か」の知識を持たない人に事象をイメージさせるのは、滅茶苦茶難しいことなのだと実感する。

こっちの世界の大昔の魔法学者さんが、どれだけ偉大な人たちだったのか、今、初めて心の底から尊敬した気がする。

広汎な知識を極めたというお婆様や世界屈指の魔法使いだというお母様も、もちろん尊敬しているけど、「無から有を生み出す」行為の難しさは、全く違う 方向性(ベクトル) で偉大なんだなあ。

「・・・うーん・・・」

星―――、太陽をイメージする?

太陽って地球の何十万倍もの大きさが有るんだよね。

そんな大きな物を魔法で作れるとも思わないし、作れたとしても、そんな物をぶつけたら、敵どころかこの世界そのものが壊れちゃう。

そもそも、地球上の地面に立って遠くを見ても、ほんの数キロメートル先までしか見えないんだよ。

夜空を飛んでいるISS―――、国際宇宙ステーションだっけ。

肉眼でも見える近さの有人宇宙ステーションでも、飛んでいる高さは数百キロメートル上空で、その宇宙ステーションから見下ろしている画像でも全景が見渡せないぐらいに地球は大きかった。

そんな馬鹿デカい物なんて作れるイメージが湧かない。

そりゃあ、そうだ。

地球上の70%が海で、残りの30%の面積に70億人近くもの人間が住んでいても、地球上を人間で埋め尽くすには程遠かった。

こっちの世界がどの程度の大きさの惑星上に有るのか知らないけど、「星」という概念は有るし、「宇宙」という存在も未確認の夢物語ながら認識されている。

暦と時間の概念が有るのが、その証拠だ。

数十年ごと、定期的に地球上から拉致されてきているという異世界人―――、勇者が地球の知識を伝えているのだろうから、星や宇宙が認識されていることに不思議は無い。

「・・・星、・・・星なあ」

太陽まで行かなくても、星の全景を明確にイメージするには、どうすれば良い?

惑星の全景といえば、アポロ何号だか忘れたけど月面旅行で撮ってきた宇宙の真っ暗闇の中に青く浮かぶ地球の写真、夜空、地球儀、天球儀、太陽系模型―――、ん? 模型?

私は変に実物が馬鹿デカいと知っているからイメージしにくいのかな?

天球儀に描かれている星座なんて、ほぼ全部が恒星で、夜空に見れば針の先で突いた「点」のようにしか見えないけど、実際には太陽よりも数百倍デカいとか数万倍もデカいとかって星が、まさに星の数ほどある。

だったら、私は米粒よりも小さな「核」を生み出して「これは滅茶苦茶重いんだ」と自己暗示を掛けて「重い」と信じ込めば良いんじゃないの?

金属だって比重が違って、同じ大きさの金と鉄を並べれば、金は鉄の2.5倍近くも重い。

見た目のイメージと実際の大きさが大きく異なることなんて普通に有るのだ。

何を根拠に言っているの知らないが、地球人類が知っている物質は全体の5%程度で、残りの95%は 暗黒物質(ダークマター) と呼ばれる未知の物質だなんて学説が有ったはずだ。

ゴマ粒よりも小さくても太陽と同じぐらい重たい物質だって存在するかも知れない。

私が知らないだけかも知れないなら、「在る」と信じれば良いんじゃないのか。

それならイメージできそうな気がする。

「・・・ヨシ」

何も無い空間に「重力」の中心が存在するのはイメージしにくいから、核となる芥子粒ほどの「すごく重たい物質」を生成する。

掲げた魔石の向こう10メートルも先に芥子粒ほどの核を生み出しても私の目では「核」そのものは見えない。

身体強化魔法の延長線で「目を強化」して視力を良く出来る方法は教えて貰ったから、「核」の姿を見てみようと目を凝らしても、遠すぎてぜんぜん見えない。

まあ、電子顕微鏡で原子や分子の姿を見ることが出来ても肉眼では見えないしね。

「そこに在る」と信じるしか無い。

「すごく重たい物質」を宙に浮かせるために結構な魔力が消費されている感覚が有るから、きっと「核」の生成には成功しているのだろうね。

じゃあ、「核」を「水素」で包み込んでみて―――。

「・・・あ。魔石の魔力が切れ―――」

無意識に私の口から出た独り言を言い終える前に握っていた魔石から「力が失われた」感覚が有って、ほぼ同時に魔法を発動していた辺りの巨木が揺れた。

「ズン!」とブーツの底を通してでも分かる振動が足の裏に感じられて、10メートル先の地面を下から突き破って、メキメキと破断音を響かせながら、ぶっとい木の根っこが持ち上がる。

予想しなかった突然の事態に独り言が途切れたまま呆ける。

「フィオレ様!?」

「何ですか!? 敵襲ですか!」

飛んできたオーリアちゃんが、半口を開けて目を剥いていた私を庇って背中から抱きしめ、一拍遅れて駆けつけたアリアナさんと共に周囲を警戒する。

私の目は、「やあ!」と、手でも挙げたように地面から突き上がった根っこに向いたままだ。

これは・・・アレかな。

魔石の魔力切れで地面に落っこちた「核」―――、「すごく重たい物質」が地中の根っこを直撃して、テコの原理でへし折られた根っこが持ち上がったのかな?

「・・・あー・・・。あの、アリアナさん?」

私の胸の辺りを後ろから抱きしめているオーリアちゃんの腕をポンポンとタップし、剣を抜いて見えない敵の姿を探して臨戦態勢を取っているアリアナさんの背中に声を掛ける。