作品タイトル不明
採掘場防衛戦 ②
今まで失敗したプロセスを分解して考えると、「空間の固定」・「可燃性ガスと酸化物の生成」・「圧縮」の3つを同時に行っていることになる。
「投擲」まで足せばプロセスは4つだ。
これを離れた場所で実行しようとするから魔力制御が甘くなって失敗する?
だとしたら、どこかを半自動化して1つでもプロセスを減らすことが出来れば魔力制御に集中する余裕が生まれないだろうか。
「空間の固定」を減らせば「圧縮」も出来なくなって、ただデカいだけの炎になる。
「可燃性ガスと酸化物の生成」を空気中の酸素を使用することで「可燃性ガスの生成」だけに限定すれば、いくらかの負荷軽減は出来るだろうか。
それでも、「生成」のプロセスは残るから、大きく軽減は出来なさそうだ。
何より、「燃焼物」が無ければ「酸化還元反応」は起こらないはず。
残るは「圧縮」のプロセスか。
圧縮せずに燃焼温度を上げられる?
思考の端を過ぎったのは「核分裂」だけど、ウラン元素なんかの原子核と中性子を高速で衝突させると連鎖的に膨大な熱量を伴う核分裂反応を引き起こす。
放射性崩壊で核汚染なんて、原子核モデルや中性子を明確にイメージ出来るなら起こせてしまいそうな気がするから考えるのを止めよう。
私自身が「歩く人間核爆弾」なんて嫌すぎる。
でも、「連鎖反応」には惹かれるよね。
切っ掛けを起こす必要は有るから「半自動」だ。
プロセスのどこかにファンタジー要素を織り込めば、何とか出来ないだろうか。
「 空想世界(ファンタジー) 」とは妄想だ。
私の解釈では、妄想力の強さと具体性こそが魔法の根幹だ。
自分の妄想力の低さに失望を覚えながらも考える。
足りない妄想力は、うろ覚えの物理法則で補うのだ。
閉鎖空間内で酸素も無しに燃え続けるようなモノって、ロケットエンジンの他に有ったっけ?
思い付かないから、魔石を掲げ、もう一度最初からイメージを構築し始める。
体内の魔力を伸ばして魔石の魔力を掌握し、魔石の先の空中に閉鎖空間を作り出す。
気化したガソリンと空気中から取り出した酸素をイメージして閉鎖空間に詰め込んでいく。
気化したガソリンとは炭化水素のことだ。
あくまでイメージであって、魔力を変化させているのは炭化水素ではなく「水素」。
私は化学畑の人では無い無実の一般人だから、「水素」と言われれば炭化水素なんて正体不明の物質では無く「水素なんでしょ?」と、なる。
いや、化学畑の人を悪く思って居るわけじゃ無いよ?
詳しくない人から見ると、意味不明で正体不明な怪しいモノを扱う現代の魔法使いみたいなものだ。
単に「水素」って言われても目に見えている実感も無く、手に触れている実感も無い。
そんな曖昧な「水素」ってイメージで「水素っぽい何か」が生成されてしまっているけど、本当に水素なのかどうかは分からないし調べようが無い。
不思議だねえ。
ビバ、ファンタジー。
細けえこたあ良いんだよ。
水素原子と酸素原子を酸化還元で結合させると残るモノは「水」だよ。
「H2O」。
水素2:酸素1の割合で閉鎖空間に詰め込んで加熱し着火すると、熱エネルギーと生成物の水だけが残るエコ仕様。
私が魔法で生成した「水素っぽい何か」と「酸素っぽい何か」を混合して燃やした後に「水っぽい何か」が残っているのは確認したから、たぶん「水」なのだろう。
燃焼の余韻の熱で綺麗に蒸発して「水っぽい何か」も消えたから、水なんじゃ無いかな。
敵が倒せて恵みの雨まで降らせることが出来るなんて、お亡くなりになる敵もニッコリじゃないかな。
ニッコリじゃないなら王国に攻めて来なければ良いんだよ。
どこの誰かも分からない敵の命よりも、私は私の家族が大切。
私の大切な人たちを奪いに来る奴になんて容赦はしない。
どれだけの恨みや憎しみを買おうとも、私は私の家族のために全力を尽くす。
水素の着火温度は500度以上だったかな。
生成した酸素と水素の混合気に「熱」のイメージを加える。
“ 火(フィア) ”の着火と同じく火打ち石のイメージを足せばいい。
火花の温度は1000度ぐらい有ったはずだから火種には十分だ。
一旦、火が点けば500度なんて、あっという間で、生成した全ての水素に引火する。
酸化反応で消費される速度よりも供給速度が上回れば火は消えずに燃え続ける。
朱色の光球が煌々と森を照らし、熱を放出する。
直径1メートルほどの小さな太陽が生まれたような幻想的な光景に、うっとり―――、なんてする心理的余裕が有るはずも無く、魔力制御と術式の維持に全神経を集中する。
・・・ん? 太陽?
「・・・―――、おっと」
意識が逸れた瞬間に、集中力が切れて閉鎖空間が破れた。
それほど圧力が上がっていなかったので、ぼふん!と大きな炎が一瞬広がっただけで消滅した。
光球が消えて一気に照度が落ちたので、まだ日中で日影程度の明るさは有る森の中が実際よりも暗く見える。
「・・・太陽。 星?」
巨木たちの枝葉に覆われた頭上を見上げる。
木々の生存競争でより多くの日光を奪い合うために目一杯伸ばし合って重なり合った枝葉が日光を遮り、さわさわと風に揺れる枝葉の隙間から垣間見える青空が瞬く星空のようにも見える。
夜空に瞬く星の正体は、何千光年も何万光年も遠くの宇宙空間に浮いている恒星―――、言わば「太陽」だ。
太陽って閉鎖空間じゃ無いよね。
でも、球形に固まって燃え続けている。
太陽が燃える理由は「重力」だ。
細かい理屈までは知らないけど、巨大で重たい物体は、それそのものが重力を発生させて周囲の物を引き寄せる。
地球のような惑星で言えば、いわゆる「万有引力」だ。
リンゴが木から落ちるのを見たニュートンさんが発見したという、アレ。
圧力を上げたり閉鎖空間を作らなくても、魔力で「重力」を生み出せば、そこに物が集まって圧縮され、圧縮されれば原子レベルの摩擦が発生して熱エネルギーが発生するはずだ。
断熱圧縮だっけ?
宇宙船が大気圏内に再突入する際に「圧縮された空気」との摩擦熱で燃えるヤツ。
あれって1万度を超える超高熱になることがあるって聞いたことがある。
1万度って、鉄でも石でも地球上のあらゆる物質が蒸発してプラズマ化する温度だとか。
太陽って莫大な重力による圧縮で熱核融合が起こって燃えているんじゃなかったかな。
怪しい記憶を探って思い出す。
確か、中心核が発する重力が掴まえて置ける範囲内に留まった炎が球形なのであって、惑星みたいに太陽そのものが球体の地殻を持つ星では無かったような。
まあ、炎って言うかプラズマって教わったはずだけど。
炎も一種のプラズマなんだったか。
物質は温度で固体・液体・気体と形態を変えて、そこから更に、高温か電磁場で分子が電離状態を起こしたものがプラズマだっけ。
雷やオーロラもプラズマで、夜の町でピカピカ光ってるネオン管の中身で起こっている現象もプラズマだったはず。
地球の世の中、プラズマだらけだったんだな。
「重力」って魔法のファンタジーパワーで作り出せないかな。
新星だったか超新星だったかは、水素が重力で集まって発光しているんじゃなかったっけ。
同じ水素でも何か細かく違った気はするけど水素は水素だよ。
たぶん、大して変わらない。
よく覚えてないな。
きっと似たようなものだろう。
魔法って 曖昧(ファジー) だからファンタジーで何とかなるはずだ。
核反応までは引き起こす気は無いけど、「重力」と「水素」だけ生み出せば3つのプロセスを2つに減らして燃焼させられるのでは?
重力が消失して圧縮圧力が開放されれば、きっと爆発が起こる。
プロセスが違っても、結果として城壁を噴き飛ばせるぐらいの大爆発を起こして超高温の炎をまき散らせるなら、それはもう“紅蓮”と呼べるものなのでは?
イケる? イケそうかな?