軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西部国境地域討伐軍 ③ ※アンサンブルキャスト面

「あの子らに、このことは?」

「伝えていない。お義父上とお義母上やハインズ様たちの意向も有るだろう? それに、本人たちの相性は、何も言わずに会わせてみた方が早い」

「お前たちに任せる。お袋殿たちと相談して決めてくれ」

アレイオスにフレイアが応え、ハロルドも頷く。

「良いの? 私たちが決めても」

「いずれ血族の中から婿を取らせることは、フィオレにも伝えてある」

「ちゃんと心の準備をさせているのね」

姉らしい気遣いにミリアは目を細める。

貴族令嬢の許婚など、家の事情で一方的に突如として降って湧くものだ。

ミリアは押しつけが気に入らなかったから、許婚を決められる気配を察知して先手を打った。

実は、ウォーレス領でミリアの暴走とされている熱愛劇に陰で手を貸したのはセリーナだ。

「王都での影響力低下はウォーレス領にとって好ましくない」とセリーナを説得したのだが、フレイアにピーシス家を継がせるためにウォーレス領を出る決断をしたミリアの思惑に、セリーナは気付いていたはずだ。

フレイアも何も言わないが、ミリアの想いに気付いていたのだろう。

懐かしそうにフレイアが笑みを浮かべる。

「賢いヤツだからな。お前のように拒絶反応は無かったから問題無かろう」

「私はアレイオスを愛していたもの。今も愛しているわよ」

フフンと胸を張ったミリアが、バチコーンとアレイオスにウインクを飛ばし、苦笑したアレイオスが頷いて返す。

痴話喧嘩と惚気話は犬も食わない。

フレイアはヒラヒラと手を振る。

ハロルドも聞き流す体勢だ。

「分かった、分かった」

「大事にしているのね。フィオレちゃんのこと」

「可愛い娘だからな」

「ちょっと妬けちゃうわね」

「どの口が言う」

娘に怖がられるのを恐れて逃げようとするマルキオをフレイアとシェリアの二人で取っ捕まえてミリアと馴染ませ、馴染んだら馴染んだでマルキオに猫かわいがりされて育ったのがミリアだ。

シェリアは厳しくも有ったが自らが腹を痛めて生んだ娘を可愛がらないわけがなく、物怖じせず聡いミリアをセリーナも可愛がり、フレイア自身も4つ年下の妹を可愛がりまくったのだから、愛されて育ったと言うなら、ミリアほど恵まれて愛されて育った娘も、そうは居まい。

人の機微にも敏感だったミリアは甘え上手でも有り、敵を作らない立ち回りを身に付けて以降は無敵の人でも有った。

あのセリーナがミリアを可愛がるわけだ。

譲れない部分では命懸けで抗おうとするフィオレが影響を受けてミリアのようになるとは考えにくいが、自分たちの身を守る技術としてミリアから学べるものも有るだろう。

それは正面から当たる生き方しか出来ないフレイアたちには教えてやれないことだ。

この機会に学び取れるだけ学ぶよう、フレイアはフィオレたちへの手紙をミリアに託すことにした。

それに、フィオレには「宿題の念押し」をしておく必要がある。

「いつ、向こうへ行く気だ?」

「王都が騒がしい内に行くのが良いだろう。領地へ逃げ帰っている家も多いから、紛れれば目立たずに済む」

「ほう? 探られると腹が痛い奴等がまだ居るのか」

「そちらは私に任せておいてくれ。誰がどう動いているかは把握している」

目を鋭くしたハロルドとフレイアに、アレイオスとミリアが余裕のある笑みを向ける。

「間諜か」

「だが、王都よりも向こうの方が騒がしいのではないか?」

近いうちにカリーク公王国の侵攻が有るというのがウォーレス領の統一見解だ。

アレイオスの表情が久しく見せなかった凄味の有る笑みに変わる。

「騒がしくなったら、なったで、非力ながら手伝うさ」

「なにが非力だ」

共にドネルクたちに鍛えられたアレイオスの戦闘力はハロルドに比する。

実戦から離れて久しいとは言え、直ぐに勘を取り戻すだろう。

王国貴族の全てに平等に接するべき王宮の文官の顔を持つアレイオスは、表面立って剣を振るいに前線へ出ることが出来ない。

王都騎士団の正騎士だったアレイオスにとって、王国の危機に働けない自身に忸怩たる思いが有るのだろう。

内戦勃発からの避難を名目に訪れたウォーレス領で敵国を相手に剣を振るうなら、アレイオスの行動が王宮に露見しても大義名分が立つ。

王宮とは本当に面倒くさい場所だとフレイアは苦笑する。

「ミリアの夫に死なれても困る。親父殿でも捕まえて、息子たち共々、遊んで貰え」

「助かるが、重たい遊びだなあ」

マルキオはハインズ共々、ドネルクたちの世代の師だ。

ハインズたちの教導の厳しさと激しさは、ハロルドやドネルクたちから散々に聞かされてきた。

冷や汗を浮かべているアレイオスを横目にミリアはフレイアとエゼリアたちを見回した。

常に死が隣り合う戦場。

絶対に無事で帰ってくると信じてはいても、戦前のピリピリした空気は好きになれない。

「姉様たちは、いつ頃出るのかしら?」

「2~3日の内だろう。西部方面隊の準備が整い次第、出る」

ミリアの目にある憂いを断ち切るように、フレイアは断言する。

こうしてミリアの心に迷いを生じさせないよう姉が振る舞うのも、子供の頃から何度も見てきた光景だ。

緩んだ表情で雑談に興じていたエゼリアたちも、一瞬で空気が引き締まる。

アレイオスの合図で、控えていた女中たちが全員のグラスに酒を注いで回る。

アレイオスがグラスを掲げる。

「皆の武運を祈っているよ」

「ああ。お互いにな」

ハロルドの返答を合図に全員がグラスを空けた。