軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西部国境地域討伐軍 ② ※アンサンブルキャスト面

「姉様、エゼリアたちは?」

「先に迎賓館へ案内されている」

「晩餐は、エゼリアたちも一緒で構わないでしょう?」

幼少の頃からフレイアの側近として侍っていたエゼリアたちもまた、彼女らに囲まれて育ったミリアにとって姉のようなものだ。

ウォーレス領に居た頃はフレイアがミリアに構いまくっていたお陰で明確な区分が有るようには見えなかったが、エゼリアたちはフレイアの側近であって、侯爵夫人になってしまった今では、ミリアが親交を温めるのは私的な場でしか難しい。

「済まんな。あいつらも喜ぶ」

「なかなか会えないもの。私も嬉しいわ」

アレイオス一家にハロルドとフレイア、綺麗どころばかりが揃った側近たち8人が加われば、晩餐は華やかで賑やかなものとなった。

戦場にドレスなど持ってくるわけは無いので作業着を兼ねた乗馬スタイルなのだが、衣服に色気が無くても衣服の中身は成熟した女性たちである。

代わる代わる抱かれているアンリをはじめ、兄2人も美人なお姉さんたちに構い倒されて真っ赤になっている。

晩餐を終えた兄弟たちは就寝を促されて辞し、ティールームへ移動した大人たちは表情を改める。

女中が淹れたお茶に口を付けたフレイアがミリアを見る。

だが、女中たちがグラスや酒瓶を用意し始めると、エゼリアたちが軽口を言い合って騒がしくなった。

目線を合わせたミリアとフレイアは同時に吹きだした。

かつて知りたるファーレンガルド家なのでエゼリアたちに遠慮は無いし、ミリアもアレイオスも少し羽目を外したぐらいで気分を害することもない。

ウォーレス領では騒がしいのが当たり前だし騎士団も似たようなものだった。

ここは「家族」の家であって敵地ではない。

フレイア自身は、あまり酒を嗜まないが、側近たちが安心できるミリアの屋敷で気を緩めているのを咎めるつもりは無かった。

お陰で重たい雰囲気にならず話せるだろう。

「で? 今度は何を企んでいる?」

「酷い言い草ね。兄様にも姉様にも、父様にも母様にも、悪い話じゃないと思うわよ」

「ふむ?」

言ってみろ、と、フレイアがミリアに顎先で促す。天気の話でもするように口を開いたのはアレイオスだ。

「フレイアの義娘、フィオレだったか。彼女の許婚に、アレースかアスクレーはどうかと思ってね」

「良いのか?」

子爵家の娘婿に後嗣が決まっていない侯爵家の子息を出すなど、そう起こる話では無い。

子息を出した侯爵家に何か問題が有るのでは無いかと耳目を集め、出された子息本人は評価が下がり、何かと低く見られる恐れがある。

心配顔のハロルドに、アレイオスは平然と頷いて返した。

実のところ、王宮で共に働く盟友・グラウス・リヒテルダート侯爵を通じて、ドネルク騎士団長からの意向により、フィオレという少女についての情報収集は“様々な手段”を用いて進められている。

ドネルク閣下の意向ということは、国王陛下の意向と同義だ。

ウォーレス領でどのように過ごしているかは勿論、出自や背後関係を探るために“出身地”にまで調査の手は伸びている。

バルトロイたち“彼の国”へ渡った経験の有る者たちが口を揃えて血統を指摘するのだから、恐らくは、何らかの情報が得られることだろう。

その上で、アレイオスとミリアはフレイアに縁談を申し入れているのだ。

調査結果が本人に明かされる未来が来るのかは、まだ誰にも分からないが、王国として、“白焔”を継ぐ件の少女を王国に縛り付けておく必要がある。

その程度のことは、母親のフレイアは勿論、ハロルドも承知の上で話している。

王国東部で“魔の森”と対峙するファーレンガルド侯爵家にとっても、次代のウォーレス家との婚姻を結んで血縁を強めることは悪いことでは無い。

危急の際に援軍を頼める先が有ると無いとでは雲泥の差になるのだから。

何食わぬ顔でアレイオスは壁際で女中が抱く我が子を見る。

「三人目が生まれたからね。とは言え、4つも年下のアンリでは難しかろう」

「あいつらは、いくつになった?」

「アレースが8歳。アスクレーは6歳だ」

「歳回りは悪くないか」

平然と構えているフレイアに、ミリアは首を傾げる。

「驚かないのね」

「顔を合わせて早々、フィオレの名前を出しただろう。何となく想像は付いていた」

「そういう姉様の話が早いところ、好きよ」

にんまりと笑みを浮かべるミリアに、フレイアはパタパタと手を振る。

分かりきっている思惑など、フレイアはいちいち聞かない。

早々にフィオレの許婚を決めてしまうことで有象無象の策謀を封殺するつもりなのだ。

どこから情報を得て、どこまで知っているのか、ミリアは既に、フィオレにそこまでの価値を見出している。

「しかし・・・、アレースは長子だろう。大人しいアスクレーの性格で、ウォーレス領で持つか?」

「あら。私もウォーレス領で育ったんだけど?」

「お前は―――、まあ、そうだな。どこででも子供は育つか」

意味ありげな笑みを「ん?」と向けるミリアに、苦笑したフレイアが前言を撤回する。