軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

流通阻害無効化作戦 ⑭ ※アンサンブルキャスト面

「グライアレー侯爵領だ」

現・当主の名前は、サリトガ・グライアレー。

宰相本人だ。

当主の身柄が王城に囚われている以上、侯爵領は状況の現状維持から動かない。

身罷った第1王妃サリエラが遺した第2王子カレリウスはサリトガにとって姪孫に当たり、宰相サリトガが握る権勢の根源とも言える。

器量が良かったサリエラを可愛がっていたサリトガはカレリウスに甘く、入り浸って遊び呆けるのを咎めず、カレリウスの好きにさせ続けてきた。

当然ながら、事件との無関係を決め込んでいるサリトガが、“金の卵”を余人の手に渡すことなど絶対に無い。

「宰相閣下の保護下に有るなら、人質にされて余計な手を取られる心配は無さそうだ」

「あの馬鹿者め。状況判断も出来ぬ“ 虚(うつ) け”だから 立太(りったい) できぬと、なぜ分からぬのか」

「カレリウスの 己(おのれ) に甘い 性質(たち) が原因だろうよ。それを思えばテレサはよく出来ている」

「アレはまだ幼すぎる。アレを立太させては、まだまだ国内が納得すまい」

首を振るオーグストに、フレイアは肩を竦めてみせる。

「なに。陛下があと10年頑張れば良いだけだ」

「これから10年もか? 簡単に言ってくれる」

「少しでも簡単にするために兵を挙げるのだ。面倒事を、子らに遺したくは有るまい?」

憂鬱そうに溜息を吐くオーグストにドネルクは苦笑を投げる。

恨めしそうなオーグストが、言いたい放題のフレイアを見る。

「そういうお前の義娘はどうなのだ? なかなかの器量と噂になっておるようだが」

「あれは伸びるぞ。私どころか奥方殿を超えるかも知れん」

フレイアはニヤリと笑う。

フィオレの容姿まで王宮内に伝わっているのはウォーレス領に王都からの間諜が入っていた証拠でもあるのだが、その程度のことは歯牙にも掛けない。

「セリーナをか? そこまでの逸材か」

「ルナリアだけでなく、御大と親父殿まで、あっという間に立ち直らせたからな」

表情を緩めたハロルドも頷いている。

シェリアと二人でアマリリアの教師を務め、陰謀と欲望が渦巻く社交界を、己の知略とウォーレス家の武力を背景に取り仕切り続けたセリーナは、オーグストとドネルクにとっても頭が上がらない相手の一人だ。

あの女傑以上の素質ともなれば、誰もが欲しがる。

「有象無象が近付けぬようにせねばならんな」

「やらんぞ。ちょっかいを出してくる奴は骨の1本も遺さず焼き尽くす」

フレイアのジト目にオーグストもジト目を返す。

「分かっておるわ。勇王国を通じて神教会が暗躍している可能性がある以上、南部の護りを疎かには出来ん」

「ま。ミリアが何やら企んでいるようだ。私たちは戦で手が放せなくなるだろうが、御大と親父殿だけでなく、奥方殿とお袋殿も付いている。悪いようにはならんだろう」

「ミリアにも苦労を掛けておるな。事が片付いたら、セリーナとシェリアにも、アマリリアの顔を見に来てやって貰いたいものだが」

「カリークが大人しくしていてくれれば、一緒に来ていただろうよ」

仇敵の名にドネルクとハウマンの目が鋭くなる。

王国を護る者にとって、逆賊カリーク公王国は不倶戴天の敵だ。

遠く離れた南部国境の話とて無関心では居られない。

「新しく発見された岩塩鉱床が目当てだったか」

「恐らくだが、近いうちに御大から領有宣言の建白書が届くぞ」

「本気か?」

領有を宣言すると言うことは、「“魔の森”を拓いてみせた」と他国に喧伝することだ。

カリーク公王国の失敗を笑い煽ってきたで在ろうウォーレス家が同じ轍を踏むとは考えられないが、悪い意味での先駆者である彼の国が指を咥えて座視しているわけが無い。

それは、西部に続いて南部国境でも戦端が開かれるとの宣言でもある。

傷口に塩を塗り込まれて逆上した仇敵から鉱山を防衛できる算段が、すでに出来ているということか。

「フィオレは本気だな。現実性が有るだけに、奥方殿とお袋殿も、そう動くだろう」

「フィオレ、だと?」

「私の自慢の義娘だよ。“白焔”なんぞ、オマケに過ぎんと私は思っている」

王国を代表する才女の口から意外な名前が出て、ハロルドとフレイア以外の全員が瞠目する。

南部で進行している計画は、フレイアが引き取った子供が立てたものらしい。

「今回の事件の被害者だったな」

「テレサと同じ歳だと聞いたが」

「報告書に拠れば、純血のエクラーダ人だとか」

口々に言う王都組の目が、件の女児と実際に会ったバルトロイに集まり、バルトロイは眉尻を下げて首を振る。

バルトロイからはウォーレス領に滞在中から何度も報告を受けているが、件の子供について、そこまでの逸材だとする報告は無かった。

「利発で物腰の静かな子供でしたが、まだ5歳ですよ? そこまで知略に秀でているとは。確かに、本人の口からも自らの手で魔獣を狩る技術を持っているとは聞いていましたが、記憶喪失だとも聞いていましたし・・・」

「お前は尋問に掛かりきりだったからな」

「教えてくれても良かったんじゃないか?」

「なんだ? 魔法術師団長殿には人を見る目が無いとでも言うつもりか?」

恨みがましく見るバルトロイをフレイアは鼻で笑う。

ハロルドが首を振る。

今から戦を始めようというときに、味方の面目を潰してどうする。

「フレイア。その辺りで勘弁してやってくれ」

「ウォーレス卿・・・」

助け船の感動に顔を輝かせるバルトロイにハロルドは苦笑する。

他国まで名が轟くほど超一流の魔法術師のくせに、どうにも、この男はフレイアに弱い。

「ウォーレス領の秘蔵っ子の情報だ。多少の秘匿はクローゼリス卿も勘弁してくれ」

「それもそうだな」

すんなりと納得したバルトロイの、この素直さに育ちの良さが出ている。