軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

義母の出陣 ② ※アンサンブルキャスト面

「では、親父殿、おふ―――、お母様。こちらのことは任せるぞ」

「うむ。しっかり務めを果たしてこい」

「終わっていない大仕事が有るのだから、ちゃんと帰って来なさい」

「分かっているさ」

義父に厳めしい騎士の顔で見送られるのは、いつものことだ。

何度も繰り返してきた出陣の挨拶で、今までに無かった課題を提示した義母の言葉に、フレイアは不安そうにしている「終わっていない大仕事」本人たちへと目を向ける。

「・・・お母様。ハロルド様・・・」

「お父様。叔母様・・・」

「そんな顔をするな。私やハロルドが”融和派“のボンクラどもに後れを取ると思うのか?」

フィオレとルナリアが首を振る。

王女殿下の顔にも、いつもの穏やかな笑みは無い。

「そうですよ~。私たちが付いているのに、フレイア様やご当主様には指一本触れさせませんとも」

「まあ、お二人とも、自分から斬り込んで触れに行っちゃうんですけどね~」

気を利かせたらしいディーナとマキアナの軽口を鼻息一つであしらい、フレイアは両腕を 義娘(むすめ) と姪の首に回して2人を抱き寄せる。

ハロルドもまた、フレイアの抱擁を受けている2人の頭を撫でている。

「私たちの心配は要らん。それよりも、殿下の護りはお前たちに任せるぞ」

「・・・分かった」

「誰にも指一本触れさせないわ!」

不安や悲しみを忘れさせるには、慰めるよりも仕事を与える方がいい。

ぎゅっと抱き返して応えた2人を放し、テレサも抱擁する。

「殿下も。殿下はお一人では無いのだから案ずるな。レティアで学べることは多いぞ」

「ありがとうございます。しっかりと学びますわ」

本来なら不敬と断ずるべきスキンシップが、テレサの心中にある曇りを和らげてくれた。

フレイアから解放されたテレサは、慈しみの目で見ていたハロルドを見上げる。

「ウォーレス卿。お父様とお母様のこと、お願い致しますね」

「ウォーレスは王国の盾にして剣。この誓いに賭けて、必ずや、お守りしましょう」

固めた右拳を胸に当てたハロルドの宣誓に笑みで返したテレサは、旅立つ面々を順に見渡して頭を垂れた。

「ピーシス卿もウォーレス卿も、そして皆様も、ご武運をお祈り申し上げておりますわ」

気丈に応える王女殿下の姿を確かめたアンリカは、子供たちの背後へと向き直る。

「アリアナ」

「姉様・・・」

声を掛けられたアリアナだけでなく、居並ぶ少女たちの背筋も伸びる。

「あなたたちも。これから暫くは本格的な有事態勢が続きます。初めての大きな任務なのだから、気を抜かず、しっかり励みなさい」

「レティアの護りは任せますよ」

「「「「「はっ!」」」」」

しれっと乗っかってきたエゼリアの激励を受けて、「ピーシーズ」という愛称が馴染み始めてきた少女たちの緊張した面持ちにも、昂りと責任感の色が混じった。

「さあ、行くか」

「ああ。総員、乗馬せよ!」

ハロルドの号令で、各々に出立の挨拶をしていた騎士や兵士たちが一斉に馬上の人となり、彼らの家族や知人たちが馬列の外へと急いで退避する。

出征する彼らの準備が整い、見送りの者たちが馬列から離れ終わったのを確かめて、ハロルドは腰の剣を抜き放ち進軍方向を指した。

「出撃!」

「「「「「おう!」」」」」

軽く腹を蹴られた馬が歩みを始め、激励の大歓声が彼ら、彼女らの背中を押す。

護送馬車の速度に合わせて、王都まで、早くて7日。

“融和派”を一掃するための出征が幕を開けた。