軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世界 ⑭

それにしても、人間、誰でも得手不得手は有るだろうし、個人個人の魔力保有量だって違ったはず。

今、こうしている私も、少し筋肉に魔力を流し続けていただけなのに、胸の中の魔力の熱がいくらか温度を下げている気がする。

そこそこ魔力を消費するのに、みんながみんな、ずっと身体強化魔法を使い続けられる?

「・・・これ、魔力保有量が少ない人はどうするんだろう?」

「自前の筋肉で補えば良いじゃないですか」

「・・・ああ、そっか。そうだね」

そう言えば、ウォーレス家関係の人たちは、みんな脳筋だったよ。

あくまで身体強化魔法は補助的なもので、結局は日々の鍛錬で自分を鍛えるしか無いんだね。

あるいは、ガス欠を起こさないレベルまで魔力保有量を底上げするか、と。

お母様たちが検討しているように、メカニズムは分からないけれど、現象として獲物の血を飲んで魔力量が増えるのなら、細かい理屈は気にせずに目を瞑って続けるべきだろう。

これも、「継続は力なり」なんだよ。たぶん。

長期展望では効率化を図るとして、短期目標としては魔力消費効率の悪さに目を瞑ってでも身体強化魔法の習得が先かな。

慣れで効率化できるものと信じよう。食堂へと到着すると、ドアの前で待機していたノイエラさんとトリアさんが、音も立てずにドアを開く。

「なんだ。母上、もう到着されていたのか」

先頭で食堂へと足を踏み入れたハロルド様が声を上げ、既にテーブルに着いて上品にお茶を飲んでいた乗馬服姿の女性が手を振って応えている。

いつもならハインズ様が座る席に着いていらっしゃるので、仔馬の出産から帰って来ていない一族の長の代理という立場なのだろうことが察せられる。

「奥方殿。腰の加減は良いのか?」

「フレイア。年寄り扱いするのは止めなさい」

手にしたティーカップとソーサーをテーブルに置いて、お母様を見据える。

お婆様と同じぐらいの年代の、これまた艶やかな色気のある美人さんだ。

叱られたお母様が笑っているから、おどけて怒って見せているのだろうと想像は付くけど 目力(めぢから) が凄い。

「そんなつもりは無いが」

「どうだか」

「セリーナ。貴女、馬で来たんじゃ無いでしょうね?」

「ちゃんと馬車にしたわよ。お陰で随分と時間が掛かってしまったわ」

お婆様が、お母様に説教するときのような調子で溜息を吐いて、美人さんは慣れた感じで肩を竦めて返す。

この人がセリーナ様か。

お婆様やテレサから聞いていたけど、ハインズ様と大恋愛の末に結ばれた奥様で、お婆様の幼馴染みの親友で、国王陛下の叔母上様で、テレサの大叔母様で、ハロルド様のお母上様で、ルナリアのお婆様で、お母様のお師匠様の一人。

並ぶ肩書きだけで、もう凄い。

国王陛下がご成婚されて王妃殿下に派閥を譲る前までは、王国を代表する大貴族の御令嬢として社交界の 首領(ドン) を務めておられた、国内最大級の影響力を持つお方だったとか。

「ルナリア。いらっしゃいな」

「はいっ」

裏返った返事を即座に返したルナリアが、固くなった感じでテーブルの端を回り込んでセリーナ様の傍へと向かう。

落ち着いた物腰のセリーナ様の目には慈しみの光があって、ルナリアは・・・何か、緊張―――、いや、警戒してる?

「ルナリア!」

「むぎゅっ!?」

「よくぞ、無事で帰ってきましたね! 心配しましたよ!」

「あばばばばば」

それはもう、獲物に飛び掛かって捕食する肉食獣のような素早い動きだった。

捕食距離に踏み込んだ瞬間、ルナリアが捕まって力一杯に抱きすくめられた。

グリグリと音が聞こえてきそうな勢いで頬ずりされているルナリアの首がもげそうになっている。

お母様もお婆様もハロルド様も特に反応しないから、これが平常運転なんだろうなあ。

きっと、大事な孫娘に対する悪意の無い愛情表現なのだろうから、多少、過激であってもノーカウントなのかもしれない。

ハインズ様の時は空を飛ばされてたしね。

「テレサ」

「は、はい」

満足したのかルナリアを解放したセリーナ様が手招きしていて、解放された途端に崩れ落ちたルナリアの姿に戦きながらも、今度はテレサが恐る恐る近付いていく。

いつの間にか音も無く接近してルナリアを回収したエゼリアさんが目を回しているルナリアをセリーナ様の隣の席へと設置している。

ひっくり返っていても隣の席なんだ?

エゼリアさんのナチュラルな鬼畜行為に戦慄している間にも次の犠牲者は生み出される。

「お、お久しぶりです。大叔母さ―――、ふぎゅっ!?」

「テレサ! 1年ぶりかしら! 背が伸びたわね!」

「あわわわわわわ」

ルナリアの時よりも、ほんの少し程度の遠慮は感じ取れるけれど、テレサも捕食されてグリグリ頬ずりの刑を食らっている。

レーテさんや王都の騎士様たちは、もう諦め顔だ。国王陛下の叔母上様ともなれば、苦言を呈するのも難しいのかもしれない。

「くっ・・・!」

満足いくまで頬ずりされたテレサは足元が怪しいながらも卒倒せずに耐えきった。

偉いよ、テレサ! 強い子だね!

さすがはリアルプリンセスだよ!

待ち構えていたエゼリアさんの手で回収されたテレサは、セリーナ様の向かい側の席へと隔離されるようだ。