軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世界 ⑪

塩と魔法道具かあ・・・。国内で両方とも自給できればなあ。

輸出入収支が改善すれば、国内の整備や防衛戦力の増強にもっと予算を掛けられる。

私が見付けた岩塩鉱床で、いくらかリテルダニア王国の財政状況が改善されるとして、それだけでは慢性的な綱渡り状態から脱却できないよね。

今までは戦略物資の相互依存でパワーバランスが取れていたものが、一方的に魔石という戦略物資を依存しなくてはならなくなると、各国のリテルダニア王国に対する野心を刺激してしまう恐れが有りそうな気がするんだよね。

「無ければ奪え」の原始的精神に則れば、侵略圧力は高まるだろう。

面倒くさいなあ、外交関係って。

塩を自給自足しても侵略圧力が高まるのなら、魔法道具も自給自足できれば鎖国状態で引きこもるのも有りな気がしてきたよ。

どこかに落ちていないかなあ、魔法道具職人。

「聞いているか? フィオレ」

「・・・もちろん聞いてる」

ジト目を飛ばしてきていたお師様に、片眉を上げられてしまった。

いやいや、ちゃんと聞いてたよ?

「・・・でも、ちょっと、色々と考えてた」

「ほう?」

にんまりと目を細めて、クイッと顎をしゃくった。言って見ろ、ってことかな?

「・・・魔法道具を自給したいなあ、って」

「商人から買っちゃダメなの?」

「・・・ダメでは無いよ。でも、高いし、敵国に握られるのは、もっとダメ」

無ければ有る場所から持ってくれば良いというグローバリズムの考え方は、緩やかな自殺だよ。

私は自分の生殺与奪権を赤の他人に握らせることを良しとしない。

他人の勝手な都合で殺されて堪るか。

断固、拒否する。

テレサは小さく頷いているけれど、ルナリアは、まだよく分かっていない感じかな。

魔法道具が家電製品的な位置付けで、脅威に感じにくいのかも。

「・・・全部を自給できなくても良いけれど、調達先は、いくつも持っておくべき。他にも調達する手段が有ると知れ渡るだけでも相場の値段が下がる」

「どうして?」

ルナリアが首を傾げる。

値段の話かな? 調達ルートの話かな?

両方、答えれば良いか。

「・・・今までリテルダニア王国が買っていた分の魔法道具が売れなくなれば、余った魔法道具を商人は値段を下げてでも売り捌かなきゃいけないんだよ。商人が手元に持っているおカネも無限に有るわけじゃないからね」

商品というものは、買って売って動かすからこそ利益が生まれる。

商人だって生き物だから、稼いだおカネを消費して食わなきゃいけない。

おカネの動きが止まる、ということは、おカネがおカネを生まず、消費だけが発生することになる。

それなりに纏まった量の商品を倉庫かどこかに保管しているなら、尚更、商品を抱きっ放しには出来ないから、利益が目減りしても現金化しなくてはいけなくなる。

どんな商売でも、安く仕入れて高く売った差額を得るのが原則で、例外は無い。

おカネを増やすための行為で例外が有るとすれば銀行預金ぐらいだろうけれど、銀行預金は銀行に預けたおカネに金利が付くから僅かに増えるだけで、自宅の貯金箱に貯め込んだところでおカネは増えない。

商人が倉庫に商品を貯め込んで動かさないのは貯金箱に貯め込むのと同じだからね。

戦争が近いとか、品薄になって高騰するタイミングが見えているので無ければ、商品を倉庫で寝かせても確実に値上がりするわけでは無いから、利益が有る内に現金化したいのが商人の心理だよ。

それに、近くにある仮想敵国のカリーク公王国やトキオ勇王国から商品を買うのを避けていることを商人たちは知っているから、リテルダニア王国は他の国よりも高く買わされている、って話は、さっき聞いたばかりだよね?

「・・・お前は他に魔法道具を手に入れる手段を持っていないだろう、って王国の足元を見て高く売りつけているだけだから、商人のボロ儲けが普通の儲けに下がるだけで、魔法道具に関しては他国との関係が今よりも悪くなることは無いだろうし。だから、自給する手段を持つのは、とても大事」

「確かに、そうですわね」

テレサは深く頷いた。

ルナリアは眉尻をハの字に下げる。

「でも、リテルダニア王国では作れないわよ?」

「・・・うん。魔法道具を国内生産するってことは、製造技術を持っている人を他国から引き抜いてくることになるよね。そうすると、絶対に引き抜かれた国との戦争になる」

「それは困りますわね。“融和派”と“保守派”で国内が大きく割れている今の王国では、敵を増やし過ぎるのは危険ですもの」

「・・・だから、どこかに魔法道具職人が落ちていないかなあ、って」

「魔法道具に関しては、古い書籍を読み解くことで国内生産できる可能性も有るがな」

「懐かしいわね。フレイア」

「そ、そうか?」

からかうような目線を送るお婆様から、お師様がスッと視線を逸らした。

「・・・うん?」

「子供の頃にね。フレイアも、フィオレちゃんと同じことを言っていたのですよ」

お婆様がクスクスと笑うと、お師様は私から見えないハロルド様の方へと完全に顔を背けてしまっていた。