軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法というもの ①

ぽっくりぽっくりと蹄の音を鳴らして街道を歩く馬の鞍で揺られていると、隣に並んだ馬の背からルナリアがジト目を飛ばしてきた。

「さっきのアレ、何だったの?」

「・・・風カッターを変形させただけ」

アレってソレのことだよね?

何か違うモノだとでも思っていたのか、ルナリアは大きな目をぱちくりと瞬く。

「そうなの?」

「・・・だから、ルナリアも出来る」

「そうなのね!」

チョロかわいい。自分にも使えると聞いただけで機嫌が良くなった。

ルナリアとは反対側に馬を並ばせているテレサが首を傾げる。

「フィオレの魔法術式って、おかしくないかしら?」

「・・・そう?」

練習で私が目線の斜め上に浮かせたままの風の塊をテレサが見上げる。

私の頭上に風魔法が浮いているのは見慣れた光景になりつつ有るらしくて、もう領主館の中では誰も驚かないようになってるよ。

今、頭上に魔法を浮かべているのは私だけ。

テレサは光魔法が得意でルナリアは火魔法が得意だけれど、光と火は両方とも遠目にも目立つから、安全が確保されていない森の中では浮かべちゃダメと言われて凹んでいた。

まだ慣れていない風や水の魔法は維持するのが疲れる様子で、二人は今、休憩中だよ。

「普通、風の術式は、あんな使い方はしないわよ」

あんな、って、 防御壁(バリアー) を攻撃に使ったことかな?

「・・・普通の使い方って見たこと無いし」

自覚は有るけど、とぼけるよ。

だって、イメージの原型は巨大ロボットアニメに出てくるようなバリアーだもの。

何でも防ぐバリアーが有るなら、バリアーを張ったまま突撃すれば「点」ではなく「面」で制圧できて最強じゃない? って、いつも思ってたんだよ。

でも、地球で生きた記憶と経験を私が持っていることは家族会議で決まった機密事項だから、テレサであっても言えない。

こっちの世界の普通って、防御魔法を張ったら敵が攻撃してくるのを黙って待つのだろうか。

シールドチャージ? シールドバッシュだっけ? 剣術でも盾で攻撃する技が有るんじゃないの?

訓練で盾を使う騎士様たちも盾で相手を殴ったり体当たりしていたけど、敵から攻撃されるのを待つ意味ある?

私には理解できない感覚だな。

「そういうものかしら?」

「・・・うん。たぶん」

魔石の扱い方も、今はまだ秘密。

自分の魔力量が増えていることをテレサが秘密にしているのと同じ扱いで。

テレサには悪いけれど、秘密にしたいって言ったのはテレサ自身だし、バルトロイ様や騎士団が王都へ向けて出発するまでは、魔石の使い方も秘密にして置いた方が良いと思うんだよね。

無詠唱での魔法の使い方を教えろとテレサからせがまれているけど、それもバルトロイ様たちが居なくなってから、という約束になっている。

今日の護衛さんは“保守派”の騎士様ばかりらしいけれど誰が見ているか分からないし。

程なくして、森への進入地点へと到達した馬列は、街道から逸れて木々の間隔が空いた場所から“魔の森”へと突入する。

しばらく進むと頭上を覆う木々の枝葉が密度を増し、視界が薄暗くなるに連れて低木や下草が無くなってきて、道幅に制限が有った街道を進んでいたときよりも馬列は緩い隊列に広がった。

今日はお母様とお婆様も同行するから、松の大木の場所を把握しているお母様が先頭で馬列を率いていて、エゼリアさんたちが周囲を固めている。

お母様たちの後ろに付いている私たちの周りは「バリアー被害者の会」のみんなが周囲の警戒に当たっていて、王都の騎士様たち20人ほどが後方を固めている。

昨日と違うのは、馬列の最後尾に食肉加工場の荷馬車が2台、付いてきていることかな。

ワナに獲物が掛かっているかも分からないのに、お仕事を横に置いて付き合わせちゃっているのが申し訳ないのだけれど、獲物が捕れれば、そのまま獲物を加工場へ持ち帰って貰った方が効率良いのは間違いないから仕方無いか。

荷馬車には、それぞれ数人ずつが乗っていて、その内の半分は兼業の猟師さんらしい。

あ、そうそう。今日は馬に乗れないレーテさんも大きな鞄を抱えて荷馬車に乗ってるよ。

猟師さんにもワナの技術を教えてやれってことらしいけれど、手配が早くて、昨日の今日で身軽に人が動くのも脳筋揃いのウォーレス領っぽいよね。

せっかち、というよりも、よく訓練されている印象を受ける。

よく訓練されている、といえば、アリアナさんたち女性騎士候補者の子たちもだね。

うーん。いちいち「女性騎士候補者」って呼ぶのは長いなあ。

“ピーシーズ”で良いかな? みんなピーシス領の出身らしいし。

おっぱいが大きい美人さんのメリーナさんと、ファッションモデルみたいにスレンダーな美人さんのネイアさんは、アリアナさんと同じ14歳だって。

14歳にして、あの巨乳。

悪い虫が寄り付かないように目を光らせておかなければ。

よく喋る人懐っこい仲良しペアがクラリカさんとメイリスさんで2人とも12歳。

狼系獣人族の2人はマーミナさんとマーリカさんの双子で11歳。

アリアナさんと一緒にノビていた2人はアイシアちゃんとオーリアちゃんで、共に10歳。

マーミナ・マーリカ姉妹と同様に風バリアーから最後まで逃れきった3人の内の1人が大人しそうなナンナちゃんで、驚いたことにピーシーズの中で最年少の9歳だった。

まだ10歳にもなっていない子を親元から離して大丈夫なの? と思ったけど、才能が有って側近に選抜されるような子は剣や魔法のお師匠様に弟子入りしたりするから、ピーシス領では早くに親元を離れるのも珍しくないんだって。

戦闘技術の英才教育かあ・・・。

私も似たようなものかな。