作品タイトル不明
覚悟と決意 ⑩ ※アリアナ面
「お前たちには、今、この時点をもって任に就いて貰う。―――エゼリア」
指名を受けたエゼリア様が一歩前へ出られました。
「御当主様が仰った通り、お前たちは、現時点をもって次期当主様の側近として召し上げられる! 騎士団への入団選抜は成人を迎えた時点で受けて貰うが、お前たちが就く任務は一般の騎士団所属騎士とは異なるものだ! ウォーレスはリテルダニアの盾で有り、ピーシスはウォーレスの剣! そして、お前たち側近はピーシス家当主の剣であると同時に盾で無くてはならん! 肝に銘じて任務を全うせよ!」
「「「「「はっ!」」」」」
エゼリア様に代わって、アンリカ姉様が一歩前へ出ました。
「先ず、王都から、第3王女、アリストテレジア殿下が滞在されている。殿下の身の回りのお世話は我々が行っているが、お前たちにも我々の補佐に就いてもらう。―――、殿下。一言頂いてもよろしいでしょうか」
「ええ」
フレイア様の後ろに控えていた大人しそうな少女が歩み出てきます。
殿下は髪の色も瞳の色も、ウォーレス血族の色に近いですね。
ウォーレス家始祖であるレティア様はリテルダニア王家の傍系ですから、当然と言えば当然なのでしょうか。
「アリストテレジア・リテルダニアですわ。みなさん、よろしくお願いいたしますね」
「「「「「はっ!」」」」」
王女殿下から頂戴したお言葉に、私たちは敬礼で応える。
この方が・・・。
いずれ、私たち“保守派”の旗頭となられるお方。
御歳はルナリア様と同じ5歳でしたか。
ウォーレス血族から見れば、遠い遠い親戚にあたる方ですが、柔らかに微笑んでいるだけでも隠し切れない気品と育ちの良さが滲み出ていらっしゃいますね。
凡庸と評される今代の国王陛下が生んだとは思えないほどに聡明なお方だと聞きます。
軽く会釈した王女殿下はフレイア様の後ろへと下がられました。
王女殿下に一礼して労を労ったアンリカ姉様が私たちへと向き直ります。
「すでに聞いている者も居るかと思うが、ルナリア様がウォーレス家次期当主に決まった。―――、ルナリア様」
「分かったわ!」
次に前へ出ていらっしゃったのは、亡くなられたウォーレス家ご当主様の奥方様、レオノーラ様にそっくりな少女です。
華やかな色の金髪は現ご当主様譲りでしょうか。
レオノーラ様には私も何度かお目に掛ったことが有りましたが、レオノーラ様を小さな少女に戻せば、ルナリア様と瓜二つなのではないでしょうか。
ルナリア様は小さな体で胸を張り、腰に手を当てて胸を反らしました。
「わたしがルナリアよ! みんな、励みなさい!」
「「「「「はっ!」」」」」
元気なお方ですね。
他領では、横柄で我儘などと評されていると聞きますが、うじうじと縮こまる方よりも好感が持てるでしょうに。
本当に他領のボンクラどもは見る目が無い。
ルナリア様が元の立ち位置へ戻られるのを見送って、アンリカ姉様が視線をずらす。
ルナリア様の隣に立っているのは、まだ紹介を受けていない、残りの一人。
あれが・・・。
人形のように整った顔立ちですが、確かに異国人ですね。
見事な銀髪と言えば、文献で目にするのはエクラーダ王国人でしたか。
ボーっとした感じの子ですね。
王女殿下やルナリア様が同席されている場で・・・、気に入りません。
「続いて、フィオレ様。・・・フィオレ様?」
全員の視線が少女へ集まりますが、反応が有りませんね。
「フィオレ様?」
「ちょっと、フィオレ!」
アンリカ姉様が首を傾げ、業を煮やした様子のルナリア様が声を掛けられました。
「フィオレってば!」
「・・・何? ルナリア」
くいくい、と、ルナリア様にシャツの袖を引っ張られ、ようやく少女は反応を返します。
主君であるルナリア様を呼び捨てですか・・・。
フレイア様も半目になって少女を見ています。
歩み寄ったシェリア様が、少女のおでこに手のひらを当てました。
「よく眠れなかったみたいだし、まだ体調が良くないのかしら?」
「・・・ふぇっ!? だ、大丈夫です!」
「そう? なら、しゃんとなさい」
「・・・は、はい!」
初対面の顔合わせの場で、本当にボーっとしていたのですか。
呆れますね。
「フィオレ。来い」
「・・・は、はい」
フレイア様に手招きされて、熟れた林檎のように赤面した少女は歩み出ました。
整列した私たちと向かい合う位置で立ち止まると、少女から一歩後ろへ下がった場所へアンリカ姉様が立ち位置を変えます。