軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟と決意 ⑨ ※アリアナ面

明朝は、私たちの成長度合いを確かめる模擬戦が行われるであろうことを、皆と認識を共有しておく必要が有りますね。

一夜明けて、領主館に隣接した訓練場は駐屯している騎士団のテントで埋め尽くされていましたが、レティア領主館の敷地はピーシス領の敷地よりも遙かに広いので、厩舎前の広場でも模擬戦を行う程度は何の問題も有りません。

遅番なのか非番なのか、ヒマそうな男性騎士が見物を始めましたが、ウォーレス領軍の騎士や兵士は如何わしい目で見るような下品な輩は居ないようです。

ウォーレスの女は男よりも強いのですから、当然なのでしょうか。

まあ、騎士団の一員として迎え入れれば同じ戦場で命を預ける可能性は否めませんから、女として色目を使うよりも先に、私たちの力量を見極めようとする目になるのでしょうね。

「今から、お前たちの成長を確かめさせてもらう。一人ずつ模擬戦を行うので、武器は好きなものを使え」

整列した私たちの前でエゼリア様が宣言し、雑然と木箱に放り込まれている訓練用の武器を指しました。

私たちは木箱へ群がって、それぞれが得意とする武器を手に取って素振りし、具合が良さそうなものを選び出します。

訓練用の剣は刃を潰してあるので斬れないし、槍には重さを調整する金属の環が棒先に嵌められているだけで穂先が付いていません。

とはいえ、まともに剣が当たれば骨折ぐらいはするし、槍―――、というか棒で突かれれば刺さることも有りますから、気は抜けませんね。

武器を選び終えた私たちは再び整列しました。

「先ず、アリアナ! 出ろ!」

「はっ!」

「どの程度できるようになったか見てあげましょう」

「お願いします!」

列から離れて広い場所へ歩み出た私の前に立ったのは、アンリカ姉様でした。

私と姉様は同時に剣を抜きましたが、片手で剣先を下げて自然体で立つ姉様には、一分の隙も有りません。

どこへ斬り込んでも軽くいなされて逸らされました。

姉様は私の動きを見てから動き始めているのに、弾かれて、躱されて、腕を、足を、腹を打たれます。

「くっ・・・!」

一打、一打が強いので、身体強化で腕力を底上げしないと剣を弾き飛ばされそうです。

やはり、姉様は強い。

速い。

これでフレイア様やエゼリア様のように剣を振りながら攻撃術式を使うのだから、そんじょそこいらの騎士や兵士では姉様に傷一つ付けられないのも当然です。

私が目標にしてきた姉様は、私が思っていたよりも遥かに遠い存在でした。

変幻自在の剣に翻弄されるだけで、一本すら取れません。

右から打たれると構えれば左から打たれ、受け止めようと剣を上げれば剣が上がりきる前に額スレスレで姉様の剣が寸止めされています。

「そこまで! 交代しろ!」

「あ、ありがとうございました・・・」

エゼリア様の号令で、アンリカ姉様はスッと剣を鞘に納めます。

フッと表情を緩めた姉様が姉の顔を覗かせました。

「まだまだだけれど、よく鍛えていたようですね」

「本当に、まだまだです・・・」

手も足も出ませんでした。

10分間も経っていないのに、ボロボロの、けちょんけちょんにやられました。

これが戦場だったら、私はこの10分間で10回も20回も死んでいます。

ずっと頑張ってきたのに、悔しいです。

落胆していたら、ポンと姉様に背中を叩かれました。

「まだ身体強化術式の維持に意識を取られているようですが、これから、使い物になるまで私たちが鍛えてあげます。胸を張りなさい」

「はいっ・・・!」

そうですね。これからは姉様たちが傍に居るのだから、鍛えていただけます。

列に戻った私は、希望に目の前が明るくなった気がしました。

まだ女性騎士見習いの一歩手前の候補者でしかない私たちの中でも、最年長者の私でもコテンパンにやられたのだから、他の子たちがご当主様の側近に勝てるはずが有りません。

死刑台に上るような顔色で前へ出る子たちは順に叩きのめされましたが、ひとり一人に不足している部分が告げられています。

悔しいし、情けないし、未熟な自分たちの現実を突きつけられて落ち込みますが、やる気を失う者は居ない様子でホッとしました。

「そこまで! 整列しろ!」

「「「「「はっ!」」」」」

私たちは目の前のことに必死で気付いていませんでしたが、スッとエゼリア様が譲った場所に、フレイア様が立たれました。

溜息が漏れます。自然体で居て、どこにも隙が有りません。

乗馬服を日常的に愛用されていると聞いていましたが、片肩だけに掛けた純白のマントは、王都魔法術師団の中でもフレイア様だけに許されているものです。

剣を交えるまでも無く伝わってくる圧倒的な強さ。

勇者を除けば大陸一と称えられる強者の風格に私の肌が粟立ちます。

静かで在りながら、凛としたよく通るお声が、訓練場に響きました。

「改めて名乗る必要は無いと思うが、フレイア・ピーシスだ。春にはピーシス騎士団へ入団する見込みの者が数人いると聞いている。―――だが、状況が変わった」

一拍置いたフレイア様の宣言に、私たちの間にピリッと緊張が走りました。