軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟と決意 ⑦

「・・・行くよー!」

「えっ!?」

ちゃんとアリアナさんに聞こえるように声を掛けてから、私は足を踏み出した。

チリチリと訓練場の地面を削る風の壁が動いて、アリアナさんの顔が引き攣った。

大きく飛び退いて避けられたから、アリアナさんを全力ダッシュで追い掛ける。

「ちょっ! 待って待って!」

「・・・ヤダ!」

私を中心に固定したまま、風のバリアーは私と一緒に移動する。

アリアナさんから見れば、円柱形の竜巻が迫ってくる感じに見えるかも。

私が止まらないと見るや、アリアナさんは身を翻して一目散に逃げ出した。

私の全速力で走っても、足の長さからしてアリアナさんの方が長いから追いつけないね。

「・・・まあ、良いや」

呆れた顔で私たちの追い駆けっこを眺めている女の子たちの方へクルリと進路変更した。

アスリート・ダッシュで突撃する。

私を舐めていたお前ら全員、バリアーの露と散るがいい。

「「「「「嘘っ!? こっちへ来る!!」」」」」

「ギャ―――ッ!」と、色気の無い悲鳴を上げる女の子たちを狙って突進すると、蜘蛛の子を散らしたパニック状態で大混乱に陥った。

剣を抜いて私を迎え撃とうとした子が剣ごとバリアーに弾き飛ばされてひっくり返るけれど、犠牲者を顧みずに次のターゲットを手当たり次第に追い回す。

お師様が居るからケガしても治してあげてくれるでしょ。

「・・・ふひひっ」

いやあ、楽しくなってきたなあ!

方向転換しようとして、ショートカットした私に追い付かれた子が、風に弾かれて明後日の方向へとヘッドスライディングして行く。

一昨日は訓練場の外周4キロメートル以上を走れたからね。まだまだ走れるよ!

高校生ぐらいに見える子になると、直線で逃げられると追いつけないことが分かってきたから、中学生ぐらいに見える子たちにターゲットを絞って追いながら、接近したら急に方向転換して油断している年上の子たちへ標的を変える。

「・・・成敗!」

今、私に轢かれたのは、アリアナさんと同年代ぐらいの子だったね。

「わははははは!!」

目の前を通過したら、お母様やお婆様がお腹を抱えて爆笑していた。

アリアナさんを轢きたいんだけどなあ。どこへ逃げたかな?

「は、放して下さい!」

「自分から挑んでおいて、逃げるな馬鹿者」

「・・・あ。居た」

走りながら見回したら、厩舎前の反対側でディーナさんに捕まっていた。

ターゲット・インサイト! 我、速やかに突撃す!

「見つかった!」と言った感じで私を見て顔を引き攣らせているアリアナさんを目指して一直線に厩舎前の空間を横断する。

「フィオレ様! どうぞ!」

「・・・ありがとう! ディーナさん!」

「いやいやいや! おかしいでしょう、コレ!」

「・・・問答無用!」

「ギャ―――ッ!」

イイ笑顔のディーナさんに投げられたアリアナさんが、バリアーに弾かれて宙を舞う。

墜落したアリアナさんが動かなくなったのを確かめて、拳を天へ突き上げた。

「・・・勝った!」

主敵は倒したから、バリアーを解除する。

ようやく終わったと見たのか、巻き込まれた被害者たちが安堵に崩れ落ちた。

私を侮ったのは、貴女たちだよ?

カッとなってやった。今も反省はしていない。

「勝負有り!」

「・・・ふぅ」

私に向けて手を挙げたアンリカさんの判定が下って、私は袖口で額の汗を拭う。

良い汗かいたよ!

「はあ。笑った、笑った」

「お疲れさま。フィオレちゃん」

ディーナさんの肩に担ぎ上げられたアリアナさんと一緒に戻ると、笑いすぎて呼吸が荒いお母様と、笑い涙を指先で拭っているお婆様に、ぐりぐりと撫でられて迎えられた。

ルナリアとテレサは背中を丸めてしゃがみ込んで、肩を震わせている。

二人とも、泣いてるんじゃないよね? 笑っているだけだよね?

轢いた覚えは無いんだけど? と、思ったら、地面に倒れているエゼリアさんは笑いが収まらずに腹筋が痙っているだけみたいだ。

最後まで轢かれずに逃げ切った子は3人かな?

内、2人は、身体能力が高い獣人族の子たちかあ。

野生の勘、って言うか、方向転換にも引っ掛からなかったから、獣人族対策が必要だね。

逃げ切った残りの一人は一番幼く見える子だったのが意外だったよ。

こっちの子は、私が行こうとする方向の逆側へと先読みするように動いていた気がする。

目立たない子だから、後回しにしちゃってたんだよね。

「・・・次は全部倒す!」

「も、もう、勘弁してぇ」

生存者を 捕捉(ロックオン) したまま決意を口に出したら、エゼリアさんの痙攣が酷くなった。