軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟と決意 ⑤

「フィオレ様」

「・・・はい」

一つ、深呼吸して、一歩前へ出る。

順に一人ひとりと目を合わせて女の子たち全員の顔を見回す。

「・・・フィオレです」

「「「「「・・・・・」」」」」

誰もが無言のまま、間が開く。

それだけ? って視線を感じるけれど、それだけだよ?

この後の展開に予想が付くのだから、これ以上の言葉なんて要らないよね。

「フィオレ様。宜しいでしょうか」

「・・・何?」

やはり、と言うか、口を開いたのは、集まった女の子たちの代表ポジションであるらしいアリアナさんだった。

見るからに女の子たちの中でも一番貫禄が有るから、代表かな、って思っただけだけれど。

隠す気も無さそうな敵意の中に私を小馬鹿にした嘲りを含む、アンリカさんによく似た深緑色の目に睨み据えられる。

さすが姉妹だよね。髪の色は違うけれど、本当によく似ている。

「お手合わせ願っても?」

「・・・良いよ」

ほら来た。

アリアナさんの目をジッと見たまま、コクリと頷く。

「ちょっ! フィオレ!?」

「ルナリア。黙っていろ」

「でも、叔母様!」

「黙っていろと言った。何度も言わせるな」

私の方が前に居るから見えていないけれど、顔色を変えているルナリアを見もせずにお母様が却下している姿が、ありありと想像できる。

エゼリアさんたちもお婆様も止めないのだから、私の予想が正しかったのは明らかだね。

腰に佩いた訓練用の鉄剣の柄を撫でながら、アリアナさんが首を傾げる。

「宜しいのですか?」

「・・・遅かれ早かれ、だよね? なら、早い方が、面倒がない」

「そうですか」

敵意に満ちていたアリアナさんの目が僅かに緩む。

イジメだって、逃げちゃダメなんだよ。

こういうのを乗り切るには、立ち向かって自分の力を示すのが手っ取り早い。

例え勝てなくても、舐めて掛かったら痛い目に遭うことだけは分からせる必要が有る。

相手が脳筋なら、なおさら。

日本で育った頃に、庇護者が居なかった私は、それを嫌と言うほど経験してきた。

「フィオレ様。どうぞ」

「・・・ありがとう」

アンリカさんから手の中に握らされたのは、深い緑色の魔石だった。

この魔石、ちょっと大きいね。

一昨日の立派な牡ジカのやつかな?

魔石を使う技術は大っぴらに知られない方が良いと言われているから、魔石が見えないように拳の中に握り込む。

アリアナさんが首を傾げているけど、私は剣では戦わないよ。

だって、剣なんて、まだ教わっていないし、剣を握らせて貰ったことも、まだ無いもの。

森で暗殺部隊に追われた時に較べれば、敵は目の前の一人だけ。

どこから狙われるか分からない状況よりも勝ち目は有る。

「・・・お母様。・・・良い?」

「構わんとも」

振り向いて問えば、面白そうに目が笑っているお母様は一つ頷いた。

トコトコと広い場所まで移動すると、アリアナさんは黙って付いてきた。

さて、どうするかな?

アリアナさんは剣を振り回してくるはず。

私がアリアナさんと同じように風ジェットカッターを振り回しても、技術で私に勝ち目は無い。

走り回って逃げても体格差で追い付かれるし、それなら魔法に集中した方が良い。

今まで何度も見たエゼリアさんたちやお母様の模擬戦を思い返せば、アリアナさんも同じように立ち位置や間合いを変えて、縦・横・斜めに刺突と、縦横無尽に剣を振ってくることは予想が容易い。

しかも、こっちの世界には「身体強化魔法」なんてものまで存在していて、ハリウッドのコンピューターグラフィックス映像や中国映画のワイヤーアクションみたいな3次元軌道で飛び回って戦うんだよ。

身体強化はディーナさんとトリアさんが得意な魔法だね。

ロクに身動き出来ない幼女が、そんな相手とどうやって戦うのか?

お母様の―――、お師様の魔法を見てから、ずっと考えていたんだよね。

剣でも魔法でも、防御しなきゃならないなら、どうすれば防げるのか、って。

森で暗殺部隊に蹴り飛ばされたときは、めちゃくちゃ痛かったし。

5メートルほどの距離を空けて、私とアリアナさんは向かい合う。

「武器は使わないのですか?」

「・・・まだ教わって無いし」

「そうですか」

アリアナさんが柄を握って剣を鞘から抜くのに併せて、魔石を握った拳を目の高さに掲げた私は風ジェットカッターを発動する。

ずいぶんと使い慣れてきた感がある魔法は、私がイメージした通り、瞬時に唸りを上げて円を描き始める。