軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟と決意 ④

「傾注!」

「「「「「はっ!」」」」」

エゼリアさんの勇ましい号令に、一糸乱れぬ応答が返る。おお、すごく軍隊っぽい。

一歩前へ出たお母様は居並ぶ女の子たちを見回した。

「改めて名乗る必要は無いと思うが、フレイア・ピーシスだ。春にはピーシス騎士団へ入団する見込みの者が数人いると聞いている。―――だが、状況が変わった」

一拍置いたお母様の宣言に、女の子たちの顔にピリッと緊張が走る。

「お前たちには、今、この時点をもって任に就いて貰う。―――エゼリア」

「御当主様が仰った通り、お前たちは、現時点をもって次期当主様の側近として召し上げられる! 騎士団への入団選抜は成人を迎えた時点で受けて貰うが、お前たちが就く任務は一般の騎士団所属騎士とは異なるものだ! ウォーレスはリテルダニアの盾で有り、ピーシスはウォーレスの剣! そして、お前たち側近はピーシス家当主の剣であると同時に盾で無くてはならん! 肝に銘じて任務を全うせよ!」

「「「「「はっ!」」」」」

訓示ってやつかな。

進む方向性を示してもらえれば、現場で働く者は道に迷わずに済む。

食い扶持を得るために世間に出て働いていれば、毎日のように、何かの出来事が起こる。

戦略を立てて最終的な判断をするのが経営者だとしたら、日々の問題に直面して解決して行かなければならないのが現場の被雇用者だ。いちいち上司にお伺いを立てて判断を貰えれば現場は楽では有るけれど、現場で起こる問題は一刻を争う場面が多くて、いちいち上司の判断を待っている猶予は無いんだよ。

そんな時に活きてくるのが、事前に上司から示されている大方針なんだよね。

大方針から大きくズレて居なければ、後からでも多少の修正は利く。

一応、これでも私だって高校卒業から13年間も社会人経験が有るんだよ?

平均程度の成績しか残していなかったけれど、営業職に就いたことも有った。

口下手なのに、なぜか私を気に入って下さった社長さんや商店主さんが居たんだよね。

会社だって軍隊だって、個々の役割を果たしながら一団となって利益を目指すのは同じ。

所属組織を一つの 機械(マシーン) に例えることが多いんだっけ?

組織(マシーン) は、個別の役割を果たす 部署(ユニット) の集合体で、部署は 構成員(パーツ) の集合体。

リテルダニアという 国家(マシーン) の中で、ウォーレスという 貴族家(ユニット) が果たすべき機能は国家防衛で、ピーシスという 傍系血族(パーツ) は特に攻撃力を担う。

この理解で間違っていないはず。

自分や家族の命が懸かっている軍隊ともなれば、個々に求められる成果は厳格だろうね。

私もルナリアを支えるために自分が果たすべき役割をしっかりと果たさなくちゃ。

・・・あれ? そう言えば、私もピーシス家を継げと言われたんだよね。

じゃあ、ピーシス家で私に求められる役割って、何?

お母様の傍らで睨みを利かせているエゼリアさんたちの姿が目に入る。

私はエゼリアさんたちみたいになりたいと思っていたんだよね。

エゼリアさんたちが果たしている役割は、お母様を補佐し、お母様と共に戦うこと?

お母様はお母様で、ハロルド様を補佐して、振り回しているように思う。

うーん? 振り回すのは真似しちゃいけない気がするな・・・。

マルキオお爺様も、いつもハインズ様の傍らに居て補佐しているんだよね。

だとしたら、私は最初に目指そうと思っていた通り、エゼリアさんたちがしているようにルナリアを補佐すれば良いのかな。

ん? 誰かが腕を引っ張ってる?

「フィオレってば!」

「・・・何? ルナリア」

くいくい、と、困った顔のルナリアが私のシャツの袖を引っ張っていた。

ルナリアに示された方向を見ると、お母様が半目になって私を見ている。

いつの間にか私の傍に立っていたお婆様が、私のおでこに手のひらを当てる。

「よく眠れなかったみたいだし、まだ体調が良くないのかしら?」

「・・・ふぇっ!? だ、大丈夫です!」

「そう? なら、しゃんとなさい」

「・・・は、はい!」

うわー! 考え込んでいて何にも聞いていなかったよ!

状況から察するに、紹介されたのにボーッとしていて聞いてなかった、ってことだよね!

立ち位置から見て、テレサとルナリアの紹介も終わってるっぽい?

恥ずかしくて、顔が熱くなってきた。

「フィオレ。来い」

「・・・は、はい」

手招きされて、お母様の傍へと歩み出る。

整列した女の子たちと向かい合う位置で立ち止まると、私の一歩斜め後ろにアンリカさんが立ち位置を変えた。

これ、自己紹介しろってことかな?

朝食の時に、今日の予定で、顔合わせって言っていたものね。

女の子たちの「大丈夫かコイツ?」って視線が痛い。

特に、一番年上っぽい明るい栗毛を1本の三つ編みに纏めた子の目が冷たい。

顔立ちがアンリカさんとそっくりなんだけど、この子がアリアナさんじゃないかな。

アリアナさんと言えば、脳筋なアンリカさんから脳筋認定されるほどの脳筋さん。

どうしたものかと私が悩み始めたら、口火を切ってくれたのはアンリカさんだった。

「すでに聞いている者も居ると思うが、“白焔”の後継者に指名されたフィオレ様だ。この意味が分からん者は居ないな?」

「「「「「はっ!」」」」」

「お前たちの上司はコイツだ」って宣告だよね。

でも、ポッと出の幼女に、いきなり従えって言われて従えるものでは無いと思う。

女の子たちの目から感じ取れる心情は、敵意、侮り、猜疑心、だ。

敵意を見せているのはアリアナさんぐらいだけれどね。

要するに、舐められてる。

・・・何となく分かってきたよ。

お母様が「手加減無し」って言った意味。

覚悟を決めておいた方が良いね。

いいや、ここは先手を打った方が良いかな?