軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウォーレス領強化計画 ⑥

「ほう。腹を括られたか」

「今はまだ、公にするつもりは有りませんけれども」

ハインズ様は厳つい相貌だけに猛獣が笑うような迫力が有るね。

テレサはテレサで、ハインズ様に気後れする様子も無くニコリと笑う。

「継承権争いに日和見を決め込む輩だけでは無いからな。十分な力を付けるまでは目立たぬほうが良かろう」

「うむ。公にしたところで暗殺の危険性を高めるだけだ」

頷き合うハインズ様とマルキオお爺様を眺めつつ、ハロルド様が唸る。

「殿下のウォーレス逗留の名目が必要だな」

「国王陛下のご判断次第だが、ドネルク閣下はどう動く?」

マルキオお爺様に向かって、お師様は口角を引き上げる。

「あの方は国士だぞ。好機は逃さんさ」

「戦乱が起こるとなれば、陛下は殿下を王都から遠ざけようとされる、か」

マルキオお爺様が唸り、ハインズ様がハロルド様に目を向ける。

「ハロルド。お前はどう見る」

「罪人護送を名目にウォーレス家が送り出す兵力を知れば、閣下なら、殿下をウォーレス領に留め置くように上奏されるはずだ」

「しかし、陛下は内戦を避けようと苦心しておられるのだぞ?」

「これは犯罪者の捕縛だ。閣下も陛下も誤解するほど愚かでは無い」

国王陛下は凡庸と言われている人だと聞いたはずだけれど、お師様たちの国王陛下に対する評価は違うのかな?

お師様たちの言葉からは、端々に敬意というか、信頼のような物が感じられるね。

地球世界の政治家や王様だって、調整型と言うか、表面上は頼りなく見えるけれど名君だったと後世に評価される人物は、多く居たはずだ。

私にとって、世間一般の評価よりもお師様たちの評価の方が信じるに値するのだから、他所の誰かと話すときには評価の温度差を考慮に入れて立ち回った方が良いのかも。

王都の騎士団長様に対してはお師様でさえ格別の信用を置いているのが分かるし、ウォーレス家にとっての最重要人物は、テレサ、王様、騎士団長様、の3人だね。

ハインズ様の目が険しくなる。

「他国の動きはどうだ?」

「王命に逆らう犯罪者を助けに介入するのか? それこそ下策だ」

お師様は好戦的な笑みを浮かべる。他国は“融和派”へ援軍を出すのか、って話かな。

確かに、他国と組んで悪事を働いていた事を糾弾されているのに他国から援軍が来たら、悪事を働いていますって白状するようなものだよね。

容疑者としての裁判ではなく犯罪者としての粛清が決定的になる。政治や軍事が分からない私でも、それは下策だと納得する。

「介入の憂いも無いとなれば、閣下が動かぬ道理は無いな」

「閣下からの助言となれば、陛下のご判断の名目としては十分だろう」

ウォーレス家をはじめとした“保守派”が戦う相手は国内の“融和派”貴族家のみ。

元・日本人の私からすると、「戦争」と聞けば兵隊さん同士が殺し合うイメージで身構えてしまうけれど、「犯罪者の捕縛」と言われれば武装警察が犯罪組織の拠点へ踏み込むイメージに変わって恐怖心や忌避感が薄くなるよ。

「閣下への働き掛けは?」

「すでに騎士団が早馬を出しておりますわ。わたくしの親書も持たせております」

「なかなかの手際だ」

「お褒め頂いて光栄ですわ」

ハインズ様とテレサが笑い合う。

小さく首を捻ったハロルド様がテレサを見る。

「殿下のウォーレス逗留が認められたとしても、護衛を残さぬわけには行くまい?」

「少数で有れば情報漏洩の心配が無い者も居りますわ」

「魔法術士団はどうする?」

ひらひらとお師様は手首を振った。

「教える必要は無い。バルトロイは知れば五月蠅いだろうが、術士団には“融和派”の貴族家出身者も多く混じっている」

「勇王国の動きを踏まえれば国内戦力の補強を急ぎたいが、身中の虫とは厄介なものよな」

苦々しくハインズ様が唸る。

「だからこそ、ウォーレス家には補強の手段を確立していただきたい、と考えております」

「ふむ・・・。ゆくゆくは国内全体に広げようと?」

「そこまでは考えておりませんが、国内が纏まれば王都騎士団は補強したいですわね」

マルキオお爺様がテレサからお師様へと目線を移す。

「可能か?」

「さあな。今の段階では雲を掴むような話だ」

「それで検証か」

マルキオお爺様は難しそうに唸る。ハインズ様がハロルド様とお師様を見比べる。

「ハロルドもフレイアも出征するのであろう?」

「ならば、儂らは防衛のためレティアを離れるわけに行かん。余分な兵力を遊ばせては置けぬぞ」

「兵が動けばコーニッツの残党を通じて“融和派”に伝わる恐れも有るな」

ああ、そっか。護衛が要るんだよね。

男性陣は揃って否定的みたいだけれど、お師様は鼻で笑う。

「兵を動かさずとも、ルナリアとフィオレに検証を進めさせればいい」

お師様の一言に、ハインズ様たちが顔色を変えた。