作品タイトル不明
ウォーレス領強化計画 ⑦
「まさか、平民を使う気か?」
「殿下も同行されるなら、護衛を平民には任せられんぞ」
「・・・お爺様。平民って?」
「む? ああ、平民の冒険者のことだな」
「・・・冒険者」
ムーアの町で見た、あの武装した民間人のことだろうと想像がついた。
でも、お師様たちやお爺様たちを見慣れてしまうと、あの冒険者たちが強いようには思えないよね。
「冒険者など使わんでも、丁度いい連中が居るだろうが」
首を振ったお師様が、膝の上のテレサ越しに視線を上げる
「アンリカ。アリアナはいくつになった?」
「はっ。14歳です」
澄まし顔のアンリカさんは短く答える。
「なるほど。アリアナたちか」
「ふむ。騎士団へ入団前の女性騎士見習いなら、兵とは呼べぬな」
ハインズ様とマルキオお爺様が唸るのを見もせずに、お師様は続ける。
「どの程度、育った?」
「アリアナは来春には騎士団へ入団する見込みですので、一般騎士程度には母が仕上げていることでしょう」
アンリカさんのお母さんが? アンリカさんのお母さんも騎士様だったのかな。
お師様はアンリカさんから視線をずらす。
「エゼリア。入団見込みの数は?」
「来春で確実は3名。2~3年内の見込みまで含めれば10名前後かと」
「全員を任務に就けるには、早くはないのか?」
眉根を寄せるハインズ様に、お師様が肩を竦める。
「騎士団に入るのを待ってルナリアの配下に付けるつもりだったが、状況が変わった」
「フィオレの護衛も有る。増員を考えねばならんか」
「いや、フィオレの配下に付けて、フィオレをルナリアの傍に付ける」
「ふむ・・・。悪くないな」
マルキオお爺様はお師様の意見に賛成みたいだね。でも、私にまで護衛を付けるの?
私がルナリアを守るつもりだったのに、私に護衛なんて、おかしくない?
大人同士の話し合いの場で私が口を突っ込むのもどうかと思うから、後でお師様に聞いてみよう。
お師様はハロルド様に視線を移した。
「どうする?」
「良いのではないか? 今からルナリアたちに付ける意味は有るだろう」
ハロルド様も賛成みたいだけれど、ハインズ様は呆れた顔でお師様を見る。
「女性騎士見習いたちにも実験で魔獣の血を飲ませるつもりか?」
「当然だろう。騎士団への入団前に魔力保有量が増えるなら、本人たちのためにもなる」
「ううむ。本当に何らかの効果が有るなら将来の戦力補強にも繋がる、か」
勝負有ったかな? ハインズ様も納得したみたい。
そう言えば、聞いておいた方がいいよね?
私がアンリカさんを見たら、私の視線に気付いたアンリカさんは首を傾げる。
「どうしました? フィオレ様」
「・・・あの。アリアナさん、というのは?」
「私の愚妹です」
「アンリカ。構わんか?」
お師様の確認にアンリカさんが頷いた。
「お好きに使ってやってください。頭の中まで筋肉なので戦闘力で人を測りがちですが、フィオレ様なら問題無いと考えます」
「・・・私?」
アンリカさんは、悪戯っぽく笑うだけで、説明をする気は無さそうだね。
「ヨシ。入団見込みの連中を呼んでおけ。明朝から同行させる」
「承知しました」
「待て。明朝だと?」
マルキオお爺様の問いに答えるのでは無く、お師様は私を見た。
「明日は私が同行する。今朝も罠を仕掛けたのだろう?」
「・・・あっ、はい」
お師様は、今度はしっかりとマルキオお爺様と目線を合わせる。
「時間的余裕もあまり無いが、個々のバラつきも気になるからな。解明までは行かずとも、危険が無い範囲の目処ぐらいは付けておく必要が有る」
「ふむ。それもそうだな」
マルキオお爺様が頷く向かい側で、今度はハロルド様が小さく嘆息した。
お師様が片眉を上げる。
「何だ? ハロルド」
「いや。お前が手伝ってくれると書類が捗るのでな」
「それは元々、お前の仕事だ。頑張れ」
「もちろん頑張るとも」
諦め顔のハロルド様は肩を竦めた。
これで、お話は一段落かな?
大人たちの顔を見回しても新たな議題が出てくる様子は無いね。
私、何か忘れてる・・・?
あっ、そうだ。お肉!
「・・・お師様」
「どうした?」
「・・・どこか作業場を使いたい」
「作業場? 何をする気だ?」
「・・・干し肉を作りたい」
「おう。あれか」
怪訝そうに問うたお師様の表情が、嬉しそうに緩んだ。本当に、気に入ってたんだね。
「あれは美味かったな」
お爺様たちも頷き合っている。作り甲斐が有るなあ。
念押しで、お師様に向かって首を傾げる。