軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウォーレス領強化計画 ②

「・・・お師様」

「おう。来たか」

訓練用の剣を肩に載せたお師様に声を掛けると、私たちが近付いてきたことに気付いていたらしいお師様は、肩越しに視線を投げてきた。

お師様の足元には、目がバッテンになった汗だくのエゼリアさんたち3人が伸びている。

硬く踏み固められた訓練場の土が抉れたり穴が開いたりと荒れ果てている状況から察するに、相当に激しい模擬戦が行われたのだろう。

トコトコと近付いたテレサがエゼリアさんの傍へしゃがみ込んで覗き込む。

「あの。大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃありません」

即答している時点で大丈夫そうだと判断したのか、テレサは私たちの元へ帰ってきた。

寝転がったままで絶望の表情を浮かべたエゼリアさんは、お師様の視線が戻って来ると再び目をバッテンにする。

死んだフリだよね?

「死んだフリよね? エゼリア」

「ちょっ! ルナリア様!?」

「早く立たんか。エゼリア」

「ルナリア様―――ッ!!」

「あっ! ごめんなさい!」

しまった! って顔でルナリアは謝るけれど、心配したテレサに即答している時点で死んだフリできて居ないよね?

仕方ないなあ。

助けてあげるか。

トコトコと近付いた私はお師様を見上げる。

「・・・お師様。一昨日と同じで良い?」

「ふむ。そうだな、無理が無いか体調に注意しながらやってみろ」

「・・・分かった。行こう」

「うん!」

「ええ」

お師様の意識がエゼリアさんたちから私たちへと移って、お師様と目をキラキラとさせたエゼリアさんたちに見送られた私たちは、それぞれに小さな魔法術式を発動させて乗馬訓練場の外周に沿って走り始める。

走り始めて100メートルも過ぎた辺りで私は気付いた。

「・・・一昨日、よりも、すごく、楽、なんだ、けど」

「わたくし、も、一昨日、よりも、楽に、感じ、ますわ」

「わたしも、だわ」

身体が軽い。

昨日は走り始めてすぐに肺が熱くなって呼吸が苦しくなったのに、今日はまだ全然苦しくならない。

もちろん、走っているのだから徐々に息は上がってくるけれど、肺が焼けるような熱さにまではなっていない。

テレサとルナリアも、一昨日は運動しながらの魔法の維持に苦しんでいたのに、今日はケロッとした表情のままで走れているし、魔法も揺らいでいない。

一昨日も周回したこの乗馬訓練場は、田舎の高校のグランドほどの広さがある人間用の訓練場の2倍ほども広さが有って、縦辺400メートル、横辺300メートルも有る長方形をしている。

外周の内側に沿って1周すれば、おおよそ1キロメートルと少しを走ることになる。

風ジェットカッター魔法のデモンストレーションに使った人間用の訓練場にはサッカーのフィールドがスッポリと2面は入る大きさで、乗馬訓練場はその倍、と言えば、広大さをご理解いただけるだろうか。

普段の訓練は領主館に併設された人間用の訓練場を使って行われるのだけれど、今はまだ、コーニッツ・ムーア殲滅戦で召集された騎馬軍団の宿営地として訓練場が占拠されているために、訓練場のさらに向こう側に在る乗馬訓練場が私たち並びに集結中の人員全てが使う人間用の訓練場に当てられている。

自分たちの訓練場を追い出された馬たちは、と言えば、レティアの城壁内には同じような規模の馬場が何カ所もあるので何の問題も無いらしい。

この町、本当に広いんだな。

こんな訓練場考察を考えながら走っている余裕すら今日の私には有って、一昨日と同じぐらいゆっくりとしたジョギングほどのペースだけれど、お師様に追い立てられなくても3人ともペースが落ちてこない。

あれよ、あれよ、という間に1周を走りきれた。

「まだ行けるか!?」

「・・・はい!」

「ヨーシ! 行けるところまで行って見ろ!」

剣を肩に載せたまま見守るお師様と座り込んだままのエゼリアさんたちに見送られて、お師様たちの前を走り抜けた私たちは足を止めずに2周目へと突入する。