軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウォーレス領強化計画 ① ※アンサンブルキャスト面

土煙を巻き上げて下段から斬り上げられた切先が跳ね上げられた槍の柄で逸らされ、テコの動きで半回転して来た槍の石突が泳いだ背を打ち据えようと迫る。

逸らされた攻撃の慣性で泳いだ体勢を止めるのではなく更に一歩踏み込んで石突の軌道から逃れ、ダンスを踊るようにクルリと一回転させた体と共に反対側から体重と遠心力が乗った重い一撃が、石突を跳ね上げてがら空きになった脇腹を狙う。

大きく一歩を後退しても避けきれず、重い一撃を逸らしきれないと判断したディーナは、槍の動きを無理に制御するのでは無く柄が回転する勢いを活かして穂先を地面に突き立てて、斜面になった柄の陰へと体を潜り込ませた。

ガキン! と槍の柄を打ち据えたエゼリアの剣は登り坂になった柄の斜面を滑って上へと跳ね上げられ、強打の勢いに押されたディーナは穂先が地面を抉った軌跡を残して後退する。

渾身の一撃を逸らされたエゼリアも上体が泳いでしまっているので追撃できない。

油断なく睨み合うが、間合いが開いて互いに続行する隙を見付けられずに肩の力を抜く。

構えを解いたエゼリアは訓練用の剣を鞘へと収めた。

「腕を上げたわね。反応が良くなったんじゃないかしら?」

「力が有り余ってるんですよ。多少、崩されても力で何とか修正できます」

剣での強打を受け止めたディーナも納めた訓練用の槍を肩に載せて、いくらかの痺れが残る手のひらをプラプラと振る。

「私も調子が良いのよねえ」

「正直、信じて居なかったけれど、フィオレ様の感覚は正しかったのね」

首を捻って手のひらを頬に当てるエゼリアを眺めつつ、腕組みしたアンリカが唸る。

エゼリアもディーナも、いつもより明らかに動きが良かったのだ。

眉唾だったけれど、アンリカ自身も身体の奥底から力が湧いてくる感覚を感じ取っている以上、何らかの効果がある事は認めざるを得ない。

思案顔で佇むエゼリアの肩に、ポンと手が載せられた。

「そうなのか? どれほど調子が良いのか、私が直々に評価してやろう」

「ヒッ!!」

「フフフフフフレイア様!?」

文字通り飛び上がったエゼリアが悲鳴を上げ、声を掛けられるまで気付かなかった主君の接近にディーナが背筋に鉄芯が入ったような直立不動になる。

8人居る側近たちの中でも上位を占める3人にすら気付かせない気配の消し方でフレイアが現れたということは、これっぽっちも3人を逃がす気が無いのだろう。

数秒後に始まるであろう過酷な訓練を予想して、エゼリアとディーナは脂汗を滲ませる。

「おい。アンリカ、どこへ行く」

「あ、あは、あはははは・・・」

フレイアの視界の外で、抜き足差し足で離脱を図っていたアンリカは、一段低くなった声に呼び止められて誤魔化し笑いを浮かべる。

逃亡に成功するとは思っていなかったが、視界に入っていないアンリカの動きまで正確に把握していると言うことは、フレイアはかなり怒っているのだと、アンリカたち3人は悟る。

つまりは、今、迂闊に動くと一刀両断に斬られる。

ギギギ、と軋むように顔を向けたエゼリアは、引き攣りそうになる頬を全力で制御して渾身の愛想笑いを浮かべた。

「ご、ご報告前に、お嬢様方の体調の変化について検証をすべきと判断しましてですね」

「ほう? 殿下や御大を放っ放り出してまで検証せねばならんほど顕著な変化が見られたのか。ならば、尚のこと私の目で確認してやらんとな」

微塵も笑っていない目で、フレイアは美しく微笑む。

経験上、本気で怒っているフレイアの前で言い訳は悪手だ。

ビシッと姿勢を糺したアンリカと、コンマ1秒のズレも無くピッタリと息を合わせたディーナは、身体を半分に折って90度の角度で頭を下げた。

「「すみませんでした―――ッ!!」」

「ちょっ!? 裏切り者―――ッ!!」

言い訳を試みたのが自分一人になったことに気付いたエゼリアが抗議の声を上げる。

フレイアの目がジロリとエゼリアを捉える。

「ヨシ。エゼリア、検証するぞ」

「頑張れー! エゼリアー!」

愕然とするエゼリアに人柱が決定したと見たアンリカは全力で声援を送るが、ディーナは直立不動のままだ。

「アンリカ、ディーナ。お前らもだ」

「ええー!?」

声を上げるアンリカと膝から崩れ落ちるディーナに視線を送り、フレイアは口角を引き上げる。

「ほう。不満か?」

「「「滅相もございません!」」」

フレイアの低い声に、3人は一瞬で姿勢を糺して屹立した。