作品タイトル不明
血のチカラ ⑱
「あら。わたくしだけ仲間はずれにするっていうの?」
小さく首を傾げるテレサの視線に、ぱちくりと瞬きしたルナリアは、ぺったんこな胸をグッと張る。
「無いわね!」
「ルナリアのそういうところ、好きよ」
ハッキリと言い切るルナリアに、テレサはくすくすと笑い声を漏らした。
うんうん、分かるよ。
ルナリアは裏表が無いからね。
堂々と正しく振る舞おうとする姿が可愛くて面白いんだよ。
状況がよく分かっていなくても、ルナリアなら勢いで乗り切ってしまいそうだよね。
そういえば、線引きはどうするんだろう?
聞こうとした時にルナリアが目を覚ましたから、聞きそびれていた。
「・・・お師様。テレサは秘密にしたいって言ったけれど、団長様には?」
「言わなくていい。あいつが知ったら納得が行くまで調べたがって、王都へ帰らなくなる」
お師様は嫌そうに顔を顰める。
毛嫌いしている感じじゃないけど、お師様ってバルトロイ様を避けてない?
お互いに遠慮しない間柄っぽくて、付き合いは長そうなんだけどね。
「・・・じゃあ、秘密で。テレサも、それでいい?」
「国内が落ち着くまでは、そうした方がいいでしょうね」
テレサと私の遣り取りを見ていたルナリアが首を傾げる。
「秘密って、何?」
「・・・整理して報告するように言われてるから、後で、お爺様たちと一緒に話そう」
「そうなのね? 分かったわ!」
「軽々しく喋るような連中では無いが、エゼリアたちにも口止めしておかんとな」
大まかな話し合いが終わったのを見ていたかのようなタイミングで、扉がノックされた。
「入れ」
「失礼します」
扉を開けて静かに入ってきたのは、ショートカットボブで背が低めの女性とセミロングのスレンダーな女性たちだった。
身長の低い方がイディアさんで、セミロングの方がトリアさん。
腰に剣を佩いているのが示している通り、どちらもお師様直属の女性騎士さんだよ。
二人とも胸が大きいけれど、トリアさんはスレンダーだから胸が特に目立つ。
背が低いイディアさんは胸が大きいせいでコロッとした体形に見えるけれど、ウエストやお尻はキュッと引き締まっているトランジスタグラマーさんだ。
お師様の部下には、おっぱいが小さい人はなれないのかと疑ったことも有ったけれど、マキアナさんやエレーナさんやノイエラさんは普通サイズなので、お師様の「巨乳好き説」は無事に否定された。
お師様の「巨乳好き説」が否定されたのなら、「ウォーレス女性巨乳説」が強まるのだけれど、婚姻でウォーレス領外から入ってくる女性だって居るはずだから、「よく食べるウォーレス領の食文化が巨乳を育てる説」を私は提唱したい。
ウォーレス領で育てば私だって巨乳に育つ可能性が高いと信じたい。
イディアさんは弓が上手くて、トリアさんは体術やナイフや暗器の扱いが上手いらしい。
イディアさんはいつも誰かの一歩後ろに居る人で、トリアさんはあまり喋らない人なので、二人がペアを組んでいると、すごく静かなんだよね。
エゼリアさんたちは、みんな特別な訓練を受けているのか足音や衣擦れの音をさせないけれど、この二人は特に気配が薄くて傍に居ても存在を忘れることがある。
「お嬢様方の軽食の準備が出来ております」
イディアさんの報告に頷いたお師様が私たちを見る。
「三人とも、体調が悪くないなら着替えろ。腹が減っているだろう」
「はーい!」
元気に応えたルナリアに続いてテレサと私も椅子から腰を上げた。
「イディア、トリア。エゼリアたちはどこへ行った」
「乗馬訓練場です」
私たちの寝間着を脱がせながらイディアさんが端的に答える。
スッとお師様が目を細めた。
「殿下たちを放り出してか?」
「はい。お嬢様方と御大方を私たちに押し付けて、アンリカ様とディーナも一緒に」
「そうか、そうか。そんなに訓練がしたければ、しごいてやるとしよう」
お師様は美しい笑みを浮かべるが、その目は1ミリも笑っていない。
澄まし顔で私たちの着替えを手伝っていたイディアさんとトリアさんが目線を交わし、無言でコツンと拳をぶつけ合った。
こりゃあ、仕事を押し付けられた意趣返しかな。
チラリとルナリアを見たら、ルナリアと目が合った。
ついでに言えば、ルナリアの向こうに居るテレサとも目が合った。
私の視線の先に気付いたルナリアはテレサともアイコンタクトして、小さく頷き合う。
そういうことね? 分かった。
「叔母様。訓練場へ行くの?」
「お前たちは食事が済んでから訓練場へ来るといい」
「エゼリアさんたちの聞き取りをするのですわよね?」
「そのつもりだが、・・・何だ?」
私たちが目線で何らかの意思疎通をしたことに、お師様が気付かないわけがない。
怪訝な目で意図を量るお師様に応えて、私が代表して手を挙げる。
「・・・私も体を動かしたい」
「わたくしもですわ」
「わたしも!」
別に、おかしな事をしようといているんじゃないよ。
体に力が漲っていて落ち着かないから体を動かしたいんだよ。
私個人としては、魔力保有量の増加という予期せぬ事態が体力にも影響しているのかを検証したいと考えているけどね。
体力が無い、という私の致命的欠点を自覚した以上、欠点克服の突破口が見つかるかどうかの瀬戸際なのだから、じっとなんてして居られない。
きっと、テレサとルナリアも私と同じ気持ちなのだろうと確信している。
呆気に取られたように私たちの顔を見回したお師様は、苦笑しながら頷いた。
「なら、ドレスでは無く乗馬服に着替えておけ」
「はーい!」
「食事が終わったら訓練場へ連れてきてやれ」
「はっ。そのように」
微笑まし気に見ていたイディアさんたちは、お師様からの指示に一礼して応えた。