軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

血のチカラ ⑪ ※アンサンブルキャスト面

「アンリカ!」

「はい。ルナリア様」

「わたしのカップを出してちょうだい!」

「あ。ルナリア、私のもお願い」

スッと手を挙げたテレサを認めて、ルナリアはもう一度アンリカを見る。

「テレサのカップもよ! でも、テレサはわたしの無事を確認してからだからね!」

「分かりましたわ」

勢いで突き進もうとしているように見えて、ちゃんとテレサを気遣っているルナリアに、柔らかい笑みを浮かべたテレサは素直に従う。

面白そうに目が笑っているアンリカは、一応、確認を入れる。

「お二人とも飲まれるんですか?」

「そうよ! ディーナもエゼリアも大丈夫なら、毒では無いはずだわ!」

「それが目的で来ているわけですし」

「どうされますか? ハインズ様」

2人の意思を確認したアンリカは最高司令官を見る。

「ふむ。エゼリアよ、本当に毒では無いのだな?」

可否判断を回されたハインズは格別の信頼を置く女性騎士を見た。

フレイアの副官として実績と信頼を積み上げてきた歴戦の猛者で有る彼女は、要人の側近だけあって毒物に関する知識も深い。

「間違いありません」

「良かろう」

エゼリアの答えにハインズは頷いた。

「ありがとう! お爺様!」

パッと表情を輝かせた孫娘が、いそいそとマグカップを片手に木桶へと歩み寄る。

牡鹿の真下に置かれた木桶の中から凝固していない血液を汲んで、ルナリアはカップに口を付けた。

少しだけ口に含んだ血液を嚥下して、ルナリアは首を捻る。

「んー・・・? 血ね」

「でしょう?」

共感を得たエゼリアが、不満そうに膨れっ面をしているディーナを見る。

「わたしが倒した鹿は、こっちだったわよね?」

「そうですね」

ディーナと視線で闘っていたエゼリアは深く考えずに生返事で答えた。

トコトコと牡鹿の隣に吊られている雌鹿の下へと移動したルナリアは、木桶にマグカップを突っ込んで、汲んだ血液に迷い無く口を付けた。

エゼリアの視界の端で、こくりと動いたルナリアの喉が嚥下を示す。

「・・・・・。―――ぶふっ!?」

突然、口に含んでいた血を噴き出したルナリアの姿に、エゼリアは目を剥いた。

足元がふらついたルナリアの細い肩をアンリカが慌てて支え止める。

「ルナリア様!?」

「おい! どうした!?」

血相を変えるエゼリアとハインズに、涙目のルナリアはマグカップを示す。

「こ、これ、お酒みたい・・・」

「ルナリア様―――ッ!!」

糸が切れたようにガクリと力尽きるルナリアの手から落ちそうになったマグカップをアンリカは危うく受け取ったが、即座に気持ちを立て直してルナリアの容態をじっと観察している。

「また酒だと!?」

「落ち着いてください! 御大!」

駆け寄ってきたウォーレス血族の長に負けない大声で制止する。

フィオレに続いてルナリアもブッ倒れたが、アンリカの反応を見る限り緊急性は無いと思われる。

「しかしだな、エゼリア!!」

「アンリカ」

チラリとエゼリアと目線を交わしたアンリカは、躊躇いなくルナリアが飲み残したマグカップに口を付ける。

思い切った行動に、興奮していたハインズも動きを止めてアンリカに注目する。

毒物を疑っているなら、安易に口を付けたりはしない。

「・・・・・ん? んんん?」

しばらく口の中で血液を転がしたアンリカは、首を捻りながら嚥下した。

数瞬ほど沈黙していたアンリカが、二口、三口とマグカップの中身を飲み始める。

「ホント、お酒みたいね」

「ほらぁ!」

勢い付いて大声を上げたディーナに喧しそうな視線を投げつつ、エゼリアは状況の確認に取り掛かる。