作品タイトル不明
血のチカラ ⑧
「大昔のエルフ族が遺した学説らしいのですが、エルフ族は滅亡してしまいましたから、謎のままです」
「・・・エルフ族・・・」
色々なファンタジーに登場するけれど、総じて魔法に長けた種族って位置付けだよね。
それは、こっちの世界でも例外ではないらしい。
お師様の授業でも出てきたけれど、特殊な魔法を使うだけだと受け取っていたら、学術的にも魔法に関して長じていたんだね。
「自分の体内の魔力ではなく周囲の魔力を利用するとされている“精霊術式”は、自然の魔力が濃い“魔の森”では無類の強さを誇ったらしくて、“精霊術式”を習得したがっていたフレイア様も、昔からエルフ族に会いたがっていましたよ」
「・・・お師様が?」
「エルフ族を―――、エルフ族だけじゃ有りませんね。神教会は亜人種族全般を人間ではないとしていて、迫害し続けているんですよ。フレイア様は、神教会のせいで魔法術式は発達できないと、よく怒っていました」
「・・・迫害」
お師様が魔法の探究にも妥協しないことは、そうだろうなあ、って思うけれど、ルナリアたちが神教会を毛嫌いしていることとも繋がった。
「王国にも定期的に国内の亜人種族を捕縛して引き渡せと要求してきますからね。王国や辺境周辺の国々は拒否していますが、噂によると、神教会に引き渡された亜人種族は二度と故郷に帰って来ないとか」
「・・・何それ」
得体が知れない怖さに背筋が寒くなる。
ジェノサイドでもやってるんだろうか?
略奪や自分たちの権益拡大を目的とした侵略とは、根っこが違う気がする。
地球の歴史でも特定民族を消そうとした事例は多数ある。
その事例に当て嵌めるなら、神教会とやらがしていることは民族浄化どころか、ホロコーストのようなものだ。
しかし、その特定民族の居住地を手に入れるわけではなく、滅ぼすことだけを求める?
地球の歴史の事例にも当て嵌まらない、言い表しようの無い狂気を感じざるを得ない。
神教会って、何なんだろう?
すごく危険な存在なんじゃないだろうか。
「ご存知でしょうが、辺境地帯では、亜人種族だろうがヒト族だろうが、等しく大事な労働力ですから、神教会なんぞの言いなりにはならないのですが、国力が弱い小国の中には神教会の圧力に耐えきれない国も有ります」
「・・・そういう国は、亜人種族を差し出しちゃうの?」
「他国へ逃がす、なんて対策を取っている国も有りますが、圧力に折れた国では亜人種族狩りを行っているようですね」
「・・・酷い・・・」
昨日まで同胞だと信じていたお隣の住民が、自分の国が宗教の圧力に屈した途端に自分たちを襲う敵になるの?
ディーナさんの目にも強い嫌悪感が見て取れる。
「国民が有ってこそ国家を維持できます。神教会に国民を売ってしまった国に未来なんて有りませんよ。そうなったら国家は終わりです」
「・・・だよね。ルナリアが嫌うわけだ」
故郷や同胞を守ることに血族すべての総力を結集し、結束しているウォーレス家とは、決定的に相容れないはずだ。
「フィオレ様は勇王を倒すんですよね?」
「・・・いつかは。そのつもり」
「でしたら、神教会もフィオレ様の敵ですよ」
うん。きっと、そうなるのだろうと私も思う。
「・・・自分の国を興しても、勇王と神教会は仲がいい?」
「仲が良いかどうかは怪しいですが、神教会の意向で勇王が動いているのは確かでしょう。現に勇王国が小国連合諸国へ侵攻を仕掛けたときの大義名分と要求項目にも、亜人種族の排斥と引き渡しが有りました」
「・・・勇王の後ろに神教会が居る?」
「間違いなく。少なくとも、両者が協力関係にあるのは疑いの余地が有りません」
「・・・そう。じゃあ、神教会の倒し方も考えなきゃ」
いつかは、なんて曖昧なものではなく、勇王と神教会は、私の敵だ。
ドラゴン、見たい! なんて言っている場合じゃ無くなっちゃったなあ。
ルナリアを守りたい、お師様たちの期待に応えたい、というのが私の強くなりたい理由だったけれど、強くならなきゃいけない、もっと明確で切実な理由が出来た。
具体的な外敵の存在と目的意識は人間を強くする。
でも、私一人が強くなったところで王国が負けたら元も子もないから、みんなで強くなる方法を探すべきだろう。
かと言って、今の私では、戦う力も、知識も無い。
敵を知り己を知れば百戦危うからず、だっけ?
訓練だけじゃなく、勉強もがんばらなきゃ。
私が決意を固め直していたら、微笑ましそうにディーナさんが見ていた。