軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪名 ①

「えっ? ケイナ、行っちゃうの?」

朝食の席で上がった話題にルナリアが驚いた顔をする。

ルナリアの視線を受け止めたケイナちゃんがクスリと笑う。

「ギルドの依頼がまだ残っているのですよ」

「・・・そんなこと言ってたね」

仕事の途中での事故というか後始末というか、万が一の問題を避けるために撃ち漏らした可能性が有る魔獣を追ってきて、偶然、私たちと鉢合わせた結果が今の状況だから、仕事に戻るのは当然の流れだろう。

「まあ、直ぐに戻ってくることになるだろ」

「そうなの?」

引き留めてゴネるほどルナリアは幼くないけど、宥めるようにテツさんが笑う。

テツさんの予想をケイナちゃんも追認する。

「ギルドの依頼ですよ。迷宮調査の」

「あっ。そっか」

残念そうにしながらもルナリアは納得した。

傍にいるべき家族を何人も失ったせいか、ルナリアは人との別れに敏感なところが有る。

でも、お仕事なら仕方ないよね。

しばしの別れってヤツだ。

もっと気楽に行き来できるようになればテレサとだって会いやすくなるんだけど、馬での移動が最速って世界で500キロメートルの距離は簡単に会いに行けるものじゃない。

ルナリアと私だけなら“足”で飛んで行けば高速道路をブッ飛ばすよりも速く行き来できそうだけど、護衛も無しに小旅行ってわけにも行かないしね。

王都とウォーレス領の間を往復するだけでも10日間ぐらいは掛かる。

私たちが大人になれば、いくらかは自由が利く部分もできてくるだろうけど、私たちの立場を思えば、護衛も連れずにフラっと出掛けることも難しい。

ルナリアの気を逸らすために話題の転換を試みる。

「・・・魔法道具の開発ってどうするの?」

「王都の拠点には鍛冶場も有るからな。俺たちは冒険者としての依頼消化も有るから掛かりきりには出来ねえしよ」

「まあ、そっちは僕の領分だよ」

大きめに切ったベーコンの塊をモッシャモッシャと食べているテツさんに続いて、上品にカトラリーを使いこなしているレイクスさんが答える。

王都の冒険者ギルドの裏手に、テツさんたちはクランの拠点を持っているらしいという話は聞いていた。

鍛冶場を使うのはロブウッドさん父娘なのだろうけど、レイクスさんも使うのかな?

今の言い方だと、冒険者の仕事がメインで王都へ戻るって意味だろうし、魔法道具開発がメインになるはずのレイクスさんが行動を共にする意味って有るんだろうか?

「・・・なのに、レイクスさんも王都へ行くの?」

「王都でどんな素材が手に入るか調べておきたくてね」

「それに、冒険者登録もしておいた方が良いかと思ってな」

ああ。なるほど?

私は一応納得したけど、ルナリアは首を傾げる。

「なんで冒険者登録?」

「身分証になるんだよ。関所を通りやすくなるし、税金の優遇が有ってな」

「そんなのが有るんだ?」

冒険者が運ぶ獲物は冒険者ギルドで税金を徴収するから、領境の関所では獲物に対する通関税を取られないんだっけ。

そのことは授業で習ったから、ルナリアが知らなかったのは身分証の方かな。

最低限の身元保証という意味では冒険者ギルドという管理者がいる分、関所の通行が緩和されるのだろう。

魔獣素材の流通は国策でも有るから、各地の領地貴族が通行を阻害するわけにも行かない。

身元を探られたくないエルフ族にとっては“使える”身分証だよね。

引っ掛かるのはもう片方の用事だよ。

「・・・素材かぁ。王都にはウォーレス家の王都邸が有るし、ピーシーズとピーシスガードの子たちも駐留しているから、必要なら買い付けて貰うことも出来るけど?」

私が農作物を買い集めて貰ったのと同じだよ。

素材の買付なんて自分でする必要なんてないじゃん。

無用な身バレのリスクを増やす結果になるんじゃないかと提案してみれば、レイクスさんは首を振る。

「そのうち頼むことになるかも知れないけど、特に宝玉は、どの程度のものが手に入るのかを僕自身の目で見ておく必要が有ってね」

「・・・宝玉って鉱石だっけ?」

知識としては知っているけど、ウォーレス領では採れない素材だから、私には馴染みが無いんだよね。

確か、宝石みたいに鉱山で採れるけど、宝飾品に使う宝石とは全く違うもので、宝石ほどは高価じゃないものだと聞いたはず。

「そ。砕いたものを回路を刻むときに使うんだけど、そろそろ手持ちがなくなりそうでね。品質の良い宝玉って黒龍山脈で採れるんだよ」

へー。そんな場所で採れるのか。

まさに鉱石って感じだね。

「黒龍山脈で?」

「・・・王国も山脈に面してるけど? 例えば、ドネルクさんの領地もそうだったはず。王都で買わなくても、採りに行った方が早くない?」

テツさんは、その黒龍山脈を目指しているんだから、ドラゴンに挑むのが時期尚早でも下見をしに行く価値は有りそうに思う。

しかし、レイクスさんは頷かなかった。

「うーん・・・。恐らく採れるんだろうけど、この国で採掘するのは魔獣が強すぎて無理じゃないかな」

「そうなの?」

「・・・強すぎて?」

魔獣が出るような場所で採れるんだ?

いやまあ、どこから襲って来るか分からないのが魔獣だけどね。

それでも、アクティブソナーや索敵レーダーで魔獣との遭遇を避けることは出来そうな気がするんだけど。