軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

血のチカラ ③

私がワナの出来栄えに満足していたら、エゼリアさんたちも盛り上がっていた。

どこにでもある自然素材で簡単に作れる辺りが、ポイント高いんだって。

さらに、穴の底に鋭く尖った杭を並べる“ 落とし穴(パンジスティック) ”や、振り子の動きで杭を生やした丸太が頭上から落ちてくる“ 振り子罠(タイガートラップ) ”も、騎士様たちに手伝って貰って作った。

“振り子罠”は私も初めて実際に作ったのだけれど、作動原理はククリ罠と同じだから、ストッパーの強度以外の部分では苦労しなかった。

歩いていても気付かないぐらいに高い樹上まで丸太を吊り上げる作業が、非力な私には出来なかったのだけれど、私の代わりに騎士様たちが苦労してくれたからね。

“竹の鞭”よりも“振り子罠”の方が、威力が高いことは知識で知っていたけれど、実物を見ると落下エネルギーの強力さに私も若干引いたよ。

あれ、トラックに轢かれるどころの騒ぎじゃないよね。あんなのに直撃されたら、杭を生やしていなくても、人間なんて軽く死ねるだろう。

落とし穴の方は今までにも用いたことが有ったみたいだけれど、馬をコケさせたり敵の進軍速度を遅らせるのが目的だから、それほど殺傷力が高いものでは無かったようで、穴の底だけでなく壁面にまで鋭い杭を据える殺意マシマシの殺傷力を高めた作り方を教えたら、エゼリアさんたちだけでなくルナリアやテレサまで目を輝かせていた。

杭に排泄物を塗り付けて傷口の悪化を促す方法にも動じずに感心する辺りは、乙女としてどうなのかと思わなくもなかったけれど、それを言ってしまうと教えた私も乙女としてどうなのかとブーメランが返ってくるのは分かり切っているのでツッコまなかった。

これ、絶対に近々の戦場で試す気だよね。

如何に上手く偽装してワナの存在を悟らせないか、如何に敵が予想もしない方向にワナを設置するか、かと言って間違って自分たちが掛からないようにと、注意点を滾々(こんこん)と説いておいた。

敵を嵌めるための“ 間抜け罠(ブービートラップ) ”に自分たちが掛かるなんて、間抜け過ぎるからね。

「はいはい。そろそろ帰り支度を始めましょうか」

「はーい!」

「わかりましたわ!」

エゼリアさんが掛けた声に、ルナリアたちが元気に返事をする。

撤収予定時間になってレティアの街へと出発する頃には、テレサに付いてきた王都の騎士様たちまで、みんなホクホク顔になっていた。

今後、ウォーレス家やリテルダニア王国騎士団と敵対する者は酷い目に遭うのだろうね。

私にとっても、ウォーレス家やリテルダニア王国に敵対してもらっては困るから、尊い教訓として被害に遭う人たちに同情はしない。

私たちの平穏を脅かそうとする敵に容赦なんてするわけがない。

そうだよ。私たちに手を出そうとしたら、エグい死に方をするんだよ。

大切に思うものが増える度に、苛烈だと言われるお師様の気持ちが分かる気がする。

お師様は優しくて暖かい人だからこそ、苛烈になるのだろうと私は感じている。

私たちと敵対しなきゃ良いんだよ。

答えは簡単だろうに。

私たちは大切なものを守りたいだけなんだから。

来た時のルートを遡って私たちは森を後にする。

明朝もワナの様子を見に来ることになっているから、獲物が掛かっているといいね。

2時間ちょっとでレティアの街まで帰ってきた。

「・・・ただいま戻りました」

「おう。帰ったか」

領主館の玄関前まで出迎えに来てくれたお師様のところへ、トコトコと駆け寄って挨拶したら、ぐりぐりと撫でられた。

テレサとルナリアは、まだ、働いてくれた馬たちの鼻先を撫でて労わっている。

領主館に詰めている騎士に馬の轡を預けたエゼリアさんたちへとお師様の目が向く。

「どうだった?」

「凄いですよ! めちゃくちゃ使えます!」

口を開き掛けたエゼリアさんよりも先に、拳を握りしめたアンリカさんが声を上げる。

主語が無かったけれど、エゼリアさんたちが興味を持っていた、ワナの話だろうね。

「お前は、少し落ち着け」

「あうっ」

お師様の目の前にまで迫った鼻息が荒いアンリカさんは、面倒くさそうに手のひらで顔を押し退けられた。

アンリカさんって大人っぽい人なのに、戦闘が絡むとテンションが上がるよね。

普段から雑さが滲み出ているディーナさんたちと同じ感じになるのが面白い。

扱いが雑だけれど、お師様とアンリカさんたちの、心の距離の近さが察せられる。

エゼリアさんが私を見て微笑む。

「拠点防衛戦向きの技術かと。レティアの住民だけでなく、領内すべてに広く普及させるべきですね」

「対人用だけでなく、狩猟用も普及させましょう!」

「文盲の領民でも技術の習得は可能でしょう。食用肉の収穫量が増えれば領民も潤います」

「ふむ。ハロルドの承認を取っておこう」

「お願いします!」

エゼリアさんがお師様に優しい目を向ける。

「御大や親父様も、お喜びになるでしょう」

「そんなもん、どうでもいい」

「またまた、御冗談を」

素っ気なく言い放ったお師様は、揶揄う目で笑うエゼリアさんと目を合わせる。

数瞬後、すいっと目を逸らしたのはお師様の方だった。

「ふん」

不満そうに鼻息で返事をしたけれど、お師様、照れてる?

ぐりぐりと私を撫でるお師様の耳が少しだけ赤くなっていた。