軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

血のチカラ ②

ルナリアが落ち着いた後、私は新しいククリ罠の設置に取り掛かった。

若木とストッパーを引っ掻ける杭はそのまま使えそうだから、蔓の先にククリの輪を作って、結び目にストッパーの小枝を挟んで、私の手元を覗き込んでいるアンリカさんや騎士様たちに、それぞれの箇所の働きとワナの機構に組み込んだ時の注意点を説明する。

トリガーまで設置してから、テレサを手招く。

「わたくし?」

「・・・これ、持って」

獲物の脚に見立てる1メートルほどの長さの枝をテレサに持たせる。

「・・・この枝が、シカの脚とする」

「ふむふむ」

枝を持つテレサの手に私も手を添え、足の動きを模して、トン、トン、と、ゆっくり跳ねる動きで枝の先を動かす。

「あっ!」

シカの脚に見立てた枝がトリガーの小枝に触れた瞬間、ククリが枝の先を捕まえて、テレサの手から引っ手繰った。

「・・・こうなる」

「ほーう」

うん。ちゃんと作動するね。

枝を引っ手繰られたテレサは目を輝かせている。

しっかりと枝の先を括ったワナを囲んで、騎士様たちも感心している。

トリガーを設置し直して、落ち葉で隠して偽装して見せる。

ワナを仕掛ける場所、獲物の通り道に障害物を置いてワナへ誘導する方法を説明する。

「・・・獲物の心理を想像するんだよ」

「獲物の心理・・・? 獣の気持ちになるのですか?」

「・・・野生動物は警戒心が強い。安全な場所を選んで通るから、いつも決まった場所を通って獣道が出来上がる。いつも通る場所に障害物が落ちていたらどうする?」

「避けて通る・・・かしら」

「・・・そう。野生動物は障害物を 除(の) けたりしない。避けて通るから、通る場所を誘導できる。ワナへ誘導すれば掛かる確率が上がる。・・・人間なら邪魔な物は除けるよね?」

「普通、除けますわね」

「・・・人間なら邪魔な物を除けるのが分かっているなら、その障害物をワナの起動部分にすればいい。進軍の通り道に木の枝が落ちていて、除けようと枝を持ち上げたらワナが起動する、とかね」

「動物用の罠も、対人用の罠も同じですのね」

「・・・そう。獲物の心理を想像して、獲物の行動を予測するんだよ」

ブービートラップには色々なタイプが有って、私が使っているような自然素材を使ったものだけでなく、手榴弾や地雷を使ったものや、近年の対テロ非対称戦の時代には、強力な野戦砲弾を利用した即席爆発装置(IED)なんてものまで登場した。

どれも、人間の心理を予測して、人間が次に取る行動をトリガーにした。

こっちの世界に爆弾が有るか分からないから、そっち方面のワナは教えないけれどね。

使えそうな場面が有って、必要が有るなら、そのときに教えれば良いや。

「次の行動を予測・・・ですか」

「・・・通りたくなる場所、踏みたくなる場所を考える。対人用なら、触りたくなるもの、触ってしまうもの、踏んでしまう場所を考えるのが大事」

心理を想像する重要性が、対人ワナにも相通ずるものだと聞いて、騎士様たちの目にも熱が入っている。

仕掛けを絵で描き取っている騎士様もいる。

みんなが、あれやこれやと議論を始めたので、私は私の仕事をしようか。

「・・・他の場所にも仕掛けてくる」

「手伝うわ!」

「わたくしも!」

「・・・じゃあ、行こう」

さあ、時間が勿体ないから、たくさん仕掛けるよ。

エゼリアさんたちに手伝って貰ったり、ルナリアとテレサがワナを作るのを手解きしたりしながら、15ヶ所にククリ罠を設置し終える。

今日はたくさんの人間が森に入って、人間の痕跡に野生動物が警戒すると思ったから、仕掛けるワナの数を多めにしてみた。

「これで終わりですの?」

「思っていたよりも早く終わったわね!」

「・・・前に使っていたワナを再利用したからね。・・・じゃあ、対人用のワナでも作る?」

「是非!!」

返事はアンリカさんから返ってきた。

非力な私じゃ使えなかったけれど、人手が有るなら若木じゃなくて竹を使えるね。

水筒作りに使った竹を採りに行って、少し場所を移動して“ 竹の鞭(バンブーウィップ) ”を作って見せる。

ワイヤーやピアノ線が無いから強力には作れないけれど、若木よりは十分に強力だね。

鍛冶屋さんかどこかで針金ぐらいは調達できないかなあ。

立木の幹から水平に張り出すように、しっかりと竹を縛り付ける。

竹の先端近くには、鋭く削って尖らせた短い杭が、櫛状に縛り付けてある。

騎士さんたちにグイグイと竹を撓らせてもらって、竹の先端に蔓を引っ掛けて蔓の反対側の端をストッパーに引っ掛ける。

みんなに下がって貰ってからトリガーに小石を投げるとストッパーが外れて、撓った竹が反発力を発揮してスイングする。

風切り音を唸らせて宙を切った櫛状の杭が当たれば、敵がどんな目に遭うかを想像して、騎士様たちが青くなる。この竹の反発力なら金属甲冑でも貫通するかも。