軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ⑦

「それ、本当に便利そうですね」

「・・・筋肉要らず!」

感心しているエゼリアさんにドヤって返せば、アンリカさんが困ったように眉根を寄せて首を傾げる。

「筋肉は必要ですよ?」

「そうですね」

「・・・ですよねー」

多勢に無勢で即時撤回した。

ディーナさんを筆頭に、お母様の側近たちがアンリカさんに同意を示して頷いている。

ここで抵抗すると私をターゲットにした模擬戦が始まり兼ねないのだから、粘ってはいけない。

筋肉なんてどうでも良いとばかりに、お母様が話題を素っ飛ばす。

「お前、剣術の訓練も続けてるか?」

「・・・い、一応。でも、槍の方が合ってるのかも?」

拙い。どんどん上達していくルナリアと違って、まるで上達しない剣術の話題は私にとって鬼門だよ。

深くツッコまれないように話題を微妙にずらす。

「ふむ? そうか。槍でも剣でも構わんが、近接武器の扱いは覚えておけ」

「槍なら私が教えますよ」

「・・・ああ、うん。お願いします」

上手く話題を逸らすことが出来て、「我、作戦に成功せり!」とか考えていたら、槍が得意なディーナさんの追撃を受けた。

ディーナさんも槍の名手だし、稽古を付けて貰えるのはとても有り難くは有るんだけど、生存本能に秀でたディーナさんは先生役をマルキオお爺様に譲っちゃったりするからなぁ。

ディーナさんの槍のお師匠様でも有るお爺様が出てくると、隔絶しすぎていて訓練にならないんだよね。

だって、お爺様はお母様の魔法のお師匠様でも有るんだよ。

私が槍の基礎を教わったと聞いたお爺様が手合わせをしてくださったことは何度か有る。

外国にまで槍の名手と知られているお爺様は、槍と魔法を組み合わせた戦い方をするから、すごく参考にはなるんだけど、どこからどう攻めれば良いのか分からないぐらいの高みに居る。

そりゃあ、脳筋度上位に名を連ねるディーナさんが、巻き込まれないように逃げちゃうぐらいだからね。

「わたしは剣の方がいいかなぁ。槍はちょっと苦手かも」

ほらぁ。私と一緒に何度かお爺様にヤラレたルナリアが、槍に苦手意識を持っちゃってるじゃん。

ところが、ディーナさんに苦手意識なんて甘っちょろいものは通用しなかった。

「大丈夫ですよ。苦手じゃなくなるまで鍛えれば、苦手じゃなくなりますから」

「えっ? ああ、そうね? んん? そうなのかしら?」

ルナリア! 騙されないで! それ、ただの根性論だから!

どこかの政治家か何かが、“〇〇構文”とか命名される、こんな感じの論理を展開していた気がする。

そんなことを話しながらわいわいと廊下を進んでいけば、下働きさんたちが集まっているのを確認しに行っていたレヴィアさんが、領主執務室の扉の前で待ち構えていた。

「・・・あ。レヴィアさーん」

ヤッホーと小さく手を振れば、ニコリと笑い返してきたレヴィアさんが、「扉を開けろ」と身振りで合図するお母様に応えて執務室の扉をノックした。

お父様の声で答えが返っている間にケイナちゃんから声が掛かる。

「下りますね」

「ノーアもー」

「・・・はいはい」

ノーアがルナリアの背中からピョンと飛び下り、ケイナちゃんがヨッと下りている間にも、レヴィアさんが扉を開けてお母様が入室してしまう。

「待たせた」

「うむ。構わぬ」

「それで、どうだ?」

ハインズお爺様とお父様の声が聞こえて、お母様から催促が飛んで来る。

「おい。早く入って来い」

「はーい!」

ルナリアが即座に返事をしたけど、よほど体が重くて億劫なのか自分で下りるつもりは無いみたいだね。

執務室に入ってから下ろせば良っか。

「・・・よっこらせ、っと」

「むう・・・?」

「何なんだ? それは・・・」

ルナリアが扉の枠に頭をぶつけないように頭上注意で扉を潜れば、怪訝な顔をしたお爺様たちが唸る。

「乗せて貰ってきたのよ!」

「・・・重すぎて歩くのが大変だったので」

一応、あっけらかんと返すルナリアの擁護を試みたけど、お父様も呆れた顔をしている。

マイペースなルナリアが私の背中をペチペチと叩いてきた。

「下ろして、下ろして」

「・・・あー、はいはい」

無理に自分で下りようとすると、バランスを崩してひっくり返りそうなのだろうね。

気持ちはよく分かるから、魔力の手でルナリアを掴んで、そっと床の上へ下ろしてあげる。

背中の上から重石が退いたので、私もそっと床の上へ着陸した。

移動中は休憩になっていたけど、2倍に急増した体重を支えた両足の疲労はまだ回復しきっていない。

それはルナリアも同じだったようで、真っ直ぐに立っているだけで頭がフラフラしているのは目にも明らかだ。

私もヤジロベエみたいに足元がフラフラしている自覚が有るし、傍目にはルナリアと同じように見えているのだろう。

私たちを視線で示してお母様が肩を竦める。

「まあ、まだ少し甲冑は早かったな。身動きも出来んようでは話にならん」

「まだ6歳だしな。仕方あるまい」

目を細めているお父様が、お母様の評価に同意する。

「しかし、“次”は参戦させるのであろう?」

「ルナリアは本陣から動かさなければイケるか?」

心配顔で眉を顰めるマルキオお爺様にハインズお爺様が意見を求め、マルキオお爺様が首を振り返す。

おっと。これは“カリーク公王国軍侵攻”に備えた具体的な配置を決めようとしているのかな?

「万が一にも矢が届かぬとも限らん。本陣から動かずとも、身を守る意味で甲冑は必要だろう」

「ふむ。座っているだけなら出来るか」

お爺様たちの意見を聞いたお父様が思案顔になる。

マルキオお爺様の視線が私へ戻って来た。

「フィオレの方はどうだ?」

「甲冑は無しの方が良いんじゃないか?」

おお! お母様が私の意見を推してくれている!

ここで許認可を貰えれば、半紙の上へ置かれた文鎮みたいに動けなくなる状況を避けられるかも!