軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ⑥

「そうなるだろうと予想はしていたが、やはりそうなったか」

仕方ないな、という感じに笑うお母様が近付いて来て、バイザーとベンテールを跳ね上げられた。

は~。新鮮な空気が美味しい。

「やはり」ってことは、私が至った結論を予測してたってことかな?

「・・・んん? じゃあ、なんで私にも甲冑を?」

「身を守れるなら魔力の手でも構わんのだが、御大と親父殿がな」

「・・・ああ。そういうこと」

お爺様たちの名前が出て納得した。

現代の地球ならプレス機でガシャコンガシャコンと型抜きして作るのだろうけど、銃火器が発達して無用の長物と化すまで、甲冑というものは鍛冶師の手による 一点モノ(ワンオフ) で作られていたものだ。

アーメットの凝った機構が表すように、高度な鍛冶技術が求められる工芸品のようなものでも有って、必然的に1領の甲冑を作るにも高額な制作費が掛かる。

それも、体が成長すれば着られなくなる子供用なんて、とてもじゃないけど実用性が有るものとは言い難い。

まだまだ成長期なピーシーズが正式な護衛任務に就くまで革鎧を着ていたのも、そのせいだ。

次期領主の側近として選ばれたエリートの特別扱いで、作り直さなきゃいけなくなる甲冑が支給されていたんだよ。

1度しか袖を通さない七五三の着物と同じで、お爺様たちは孫の甲冑姿が見たかったんじゃないかな。

孫の晴れ舞台に華を添えてあげたいという親心を無下にするほど、私も人情に疎くはない。

前世の私には縁が無かっただけで、そういうものなのだという知識ぐらいは社会人時代に仕入れていたからね。

私の解釈が正しかったことをお母様を開示する。

「実際には着ることが無くとも、楽しみにしているから見せに行ってやれ」

「・・・分かったー」

お母様の指示に、素直に従う。

軍服で参戦したいとお爺様たちに交渉してみるかなー。

次期領主であるルナリアの甲冑には派手な装飾が施されているけど、地味めな私の甲冑もルナリアのものと同じ意匠で、私もルナリアと同等に扱って貰っていることは十分に理解している。

家族に期待されたなら、それに応えるのは私の義務。

思う存分、見て貰いに行こうじゃないか。

「ルナリアも特に不具合はないな?」

「すごく重たくて動きにくいけど、不具合はないと思うわ!」

お母様の確認にルナリアも「不具合はない」と頷いて返した。

「ヨシ。では、お披露目に行くぞ」

「「はーい」」

問題なしと判断したお母様に答えて、えっちらおっちらと重たい足を運んで廊下へ出る。

確かにルナリアは「不具合はない」と答えた。

不具合はなくても甲冑の重さという問題は残るんだけどね。

そうなると、どうなるか。

「お~も~い~」

「・・・つ~ら~い~」

全身甲冑ってワンセットでどのぐらいの重量だったかと記憶を探って思い出す。

確か、成人男性用で25キログラムとか30キログラムとかじゃなかったかな。

子供用だし、もっと軽いとは思うけど、日本基準で6歳女児の平均体重って20キログラム未満だよ?

甲冑を着せられて以降、私たちは20分間近くも自分と同じ体重の重荷を背負い続けているわけだ。

そりゃあ疲れもするし、泣き言だって口をついて出てくる。

「フィオレ~。乗せて~」

「・・・仕方ないな」

私の背中に抱き付いてきたルナリアの機転に内心で「ナイス!」と賞賛を贈りながら、大義名分を手に入れた私は魔力の手でルナリアと一体化して宙に浮く。

天井にヘルムを擦って傷を付けたらお披露目に支障があるから水平に近い角度へ体を前傾させると、私の背中の上でルナリアが寝っ転がっている格好になる。

アレだよ。親亀の甲羅の上に子亀が乗ってるような感じ?

バイザーを跳ね上げていれば前は見えるからね。

首の動きに自由が利くアーメットで本当に良かった。

「ノーアもー」

おっ? 乗ってくかね?

お姉ちゃんたちが何かをしていれば一緒にやりたがるのは妹の習性なのだろう。

ヨーシヨシヨシ。お姉ちゃんに任せなさい。

「・・・仕方ないな。おいで~」

「にゃっ」

私は時代の要請に応えただけだよ?

「にゃふ」

決して私が楽をしたいわけじゃない。

私が魔力の手で掴まえるまでもなく、身軽なノーアはピョンと跳び上がってルナリアの背中に跨がった。

「・・・ケイナちゃんも乗る? 硬くて座り心地は良くないと思うけど」

「いいえ。私は―――」

ヨッ、カノジョ、乗ってかなーい? 的なナンパ行為にお堅いっぽいケイナちゃんが難色を示した。

ハイエースされたいと?

「・・・問答無用。とりゃーっ」

「きゃっ」

魔力の手でケイナちゃんを引っ摑んでノーアの後ろに跨がらせる。

異世界ハイエース体験に小さな悲鳴が上がった気がするけど、それもまた試練じゃ。

「・・・HAHAHA! 迂闊に隙を見せるなど、まだまだじゃのう」

「もうっ」

お怒りを表明して、ケイナちゃんがペシッとお尻の下の甲冑を叩いたけど、それはルナリアで私ではない。

残念だったな!

俯せの「気を付け」で顔だけが前を向いている私とルナリアが縦積みされた上にノーアとケイナちゃんがライドしていて、細く短くした複数の触手でワサワサと廊下を歩く。

触手で悲鳴を上げそうなのはレイクスさんぐらいだろうし、気にすることは何も無いね。

俯せに寝たまま廊下を浮いていく私たちの姿に、エゼリアさんたちも面白そうに目を細めている。