軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ①

「隠形術の訓練なら、私たちも協力できますよ」

ゾロゾロと食堂を出て廊下を歩いていると、ターバンの人たちが話し掛けてきた。

この人たち、話し合いの間、ずっと黙っていたから名前も知らないんだよね。

エゼリアさんたちやピーシーズの行動パターンに照らし合わせれば、同席していても主の顔を立てて口を開かなかったのだろうと想像は付く。

だとすれば、この場合に許可を得るべき相手はレイクスさんだよね。

「・・・良いんですか?」

「構わないよ。エルフ族の 守人(もりびと) は 狩人(かりゅうど) でも有るからね。隠形術が得意な者が多いんだ」

レイクスさんに顔を振り向ければ、アッサリと許可が出た。

“守人”って“ 防人(さきもり) ”的な役職かな?

“狩人”はそのまま猟師さんってことだろうから、隠形術との親和性は理解できる。

現代日本では“単独忍び猟”と呼ばれている“待ち伏せ猟”なんかだと、他者の気配に敏感な草食動物が接近してくるのを獣道で待ち続けるから、気配を殺して自然に溶け込む必要が有るんだよ。

もっと分かりやすく言えば、軍隊の 狙撃手(スナイパー) が用いる 偽装(ハイディング) 技術だね。

景色に溶け込みやすいように、草木に見せ掛けて身体の輪郭線を暈かすための繊維クズを衣服に縫い付けた 偽装服(ギリースーツ) なんてものまで着用したりする。

スナイパーって標的が現れるまでの丸1日とか、草木に埋もれたまま微動だにせず待ったりするらしいよ。

さらに古いところで言えば、“ 万川集海(まんせんしゅうかい) ”だっけ?

江戸時代初期に伊賀忍者だったかがまとめた忍術書にも記述が有るんだっけ。

中世日本の忍者が用いた“ 遁術(とんじゅつ) ”の中でも、“ 木遁(もくとん) ”と呼ばれる偽装技術が有った。

確か、戦国時代が終わった”大坂夏の陣”から50年後ぐらいにまとめられた文献だったはずだから、実在した技術なんだろうね。

有名な忍術だと草葉に隠れる“木の葉隠れ”や木の上に隠れる“狸隠れ”かな。

木の上なのに何で 狸(タヌキ) ? って思うかも知れないけど、タヌキはイヌ科の動物のくせに木登りするんだよ。

私のホームグラウンドだった山でタヌキは獲れたことがなかったけど、電柱に登って降りられなくなったタヌキの動画がインターネット上に投稿されていたりするからね。

特に日本のタヌキは大陸のタヌキとは骨格から違う固有種で、アニメやマンガなんかのサブカルチャーから情報が広がって欧米では”実在するファンタジー生物”扱いだった。

ファンタジー生物扱いと言えばエルフ族も同じか。

タヌキとエルフ族の親和性―――、いやいや。狩猟と隠形術の親和性は狩猟に携わってきた私も認めるところだし、大いに納得できる。

「・・・狩人ですか。道理ですね」

そしてだ。ここで、ちょくちょく耳にする“隠形術”。

隠形術が得意というエルフ族に実際に森で遭遇したことで気付いたことが有る。

レイクスさんが首を傾げる。

「道理って、何が?」

「・・・森で会ったときに気配が小さかったな、と」

あれって単に気配を殺して潜んでいたわけじゃないと思うんだよね。

意識的にか無意識にかは分からないけど、魔法的に何かやってる気がする。

今、こうして顔を合わせている状態で感じる魔力の強さに較べて、あのとき感じた魔力の強さが違うんだよ。

あのときの方が明らかに魔力の反応が小さい―――、いや。弱かった。

私の指摘に、レイクスさんをはじめとしたエルフ族の面々が目を丸くする。

「あっ。そうだよ。僕やケイナは兎も角、よく他の4人まで見付けたよね」

「・・・気配を消していても、魔力の反応は消せていませんでしたよ?」

理屈で考えるなら、魔力に敏感な魔獣を待ち伏せするのに使うのが隠形術だというので有れば、魔力の反応を小さく抑えられれば魔獣に察知される危険性を最小化できる。

視覚や聴覚による情報だけに頼らず、魔力の反応を探すアクティブソナーだから探知できたけど、魔力に注視していなかったら私も見落としていただろうね。

レイクスさんが目を真ん丸にする。

「魔力―――、魔素の反応が分かるの?」

「・・・分かりますよ? やり方を覚えれば見えない場所に隠れていても分かりますし、探知範囲が広がれば魔獣の襲撃を受ける前に守りを固められます」

魔力が見える特殊な目を持っている人が、何で驚くかな。

魔獣だって魔力を察知するんだから、人間にも察知できない道理は無いじゃん。

私がアクティブソナーを使えるようになった経緯を思い返してみれば、肝になる部分は魔力の“質”を感じ取るように練習を重ねたことだったんじゃないかな。

恐らく私は、魔力に敏感な魔獣と同じことをしているんじゃないだろうか。

「テツさんの“危険物センサー”みたいですね」

「俺? 俺は魔素ってのがイマイチ分かんねえからなぁ」

見上げるケイナちゃんの視線を受け止めてテツさんが首を傾げる。

何? そのネーミング。

テツさんらしいと言えば、“らしい”感じはするけど。

“危険物センサー”ねぇ・・・?

「・・・“危ないのは分かる”って、そういうことか。やっぱりテツさんって”勘”で敵の存在を察知できるんだ?」

「どうだろうな? 考えたこと無かったが、勘と言われればそうなのかもな」

歩きながらテツさんを見上げれば、テツさんは本当に“それ”が何なのかを考えたことが無かったのか、眉根を寄せた。

私のアクティブソナーがファンタジー寄りだとすれば、テツさんの危険物センサーはオカルト寄り?

勘のいい人って普通にいるけど、勘なんて科学的に証明できていないじゃん。

霊能者という怪しいアレとは少し違うみたいだけど、幽霊が見える人って本当に居るらしいし。

ケイナちゃんも首を傾げている。