軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ②

「勘・・・? ああ。そういうことですか」

「上手いこと言うね。僕も合点が行ったよ」

思案顔から一転して、何かに思い当たったのか、ケイナちゃんもレイクスさんも納得顔で頷いた。

「・・・んん? 勘だと思っていなかったんですか?」

「テツは気配に敏感なのかと考えていたんだけど、勘と言った方がしっくりくるよ」

「はい。人や魔獣だけじゃなく、テツさんは“危険なモノ”は何でも分かるそうですし」

顔を振り向けたレイクスさんと見上げてくるケイナちゃんの視線に、テツさんが頷き返す。

「何でもかどうかまでは分かんねえが、避けようと思えば避けられるからな。 “危ねえ”と感じるものは、基本的に全部避けるようにしてる」

ふぅん・・・。察知しているものの定義が違うってこと?

いやいやいや。それこそファンタジーかオカルトじゃん。

「昔から」って言ってたよね?

だったら、こっちの世界へ来てから身に付けた技術じゃないんだろうし、勘としか言いようがないでしょ。

「・・・へぇ。魔力が無い“物”も分かるってことかな? それ凄いね」

ワナも避けられるのだとすればショージョーよりも厄介じゃん。

勘で攻撃を避ける人と言えばジアンさんもそうだけど、避けられる上にあの常識外れな防御力と考えれば、手の打ちようが無いんじゃない?

危なっかしいギャンブルも仕掛けてくるしなあ。

面倒そうだからテツさんとは敵対しないようにしようっと。

とは言え、だ。

ゾロゾロとエントランスホールを抜けながら考える。

「・・・ふむ」

対応策は用意しておかないとね。

こうやって1人目が現れたのだから、2人目、3人目と同じような人が現れる可能性が有る。

どうしても敵対しなきゃいけなくなったら・・・、深さが数百メートルぐらいある落とし穴にでも落として地中深くへ埋めるかな。

直接は倒せなくても、呼吸が出来なきゃ死ぬでしょ。

クマムシみたいに宇宙空間へ放り出しても死なない生命力を持っていた場合は、魔力が続く限り“蒼焔”を撃ち込み続けて我慢比べでもするしかない。

魔力の手で包囲して、面で捕まえるぐらいなら出来るんじゃないかな。

長時間の拘束は無理でも、短時間の拘束で動きを封じている間に運搬するのはどう?

ウォーレス領やピーシス領の領地を焼いて荒らすのは不本意だから、ナーガ川の南岸へ放り投げてカリーク公王国の領土ごと焼いてみよう。

敵国の土地なら、どれだけ焼いて荒らしても私の心は痛まない。

テツさんたちに敵対の意志は無いと思うけど、最悪の事態を想定しておくのは必要なことだよ。

なんてったって、私たちは領地と領民を守るのがお仕事で、土地は持って逃げられないからね。

私たちに逃げ場は無い。

どんな手を使ってでも守り切る他に選択肢は無いんだよ。

正面口の扉を抜けると、午後の日差しの下で帰還準備が整えられている。

人の動きを大きく分ければ、エゼリアさんたちとジアンさんを中心としたレティア帰還組と、代官のマリッドさんを中心にしたピーシス領残留組だね。

ピーシーズ残留組のネイアさんとオーリアちゃんは、ピーシスガードの残り1個小隊が乗って来た乗馬を整列させていて、アスクレーくん部隊の人員は荷馬車へ乗り込み始めている。

私の姿を見付けたマリッドさんが従妹のミセラさんを伴って近付いてくる。

「フィオレ様」

「・・・お疲れさま。またしばらく仕事を押し付けちゃうことになるけど、お願いね」

「ワールター殿のご助力もいただいていますから、こちらのことはご心配なく」

そっか。ワールターさんか。

本当に丸投げしっ放しで申し訳ないなと思ってたんだけど、ニコリと笑ってマリッドさんは首を振る。

新領民の大量流入で人口分布の偏りも出てきているはずだから、管理するのも大変なはずなんだけどね。

建設が進んでいる仮設住宅は狭い領都に収まりきらないから城壁の外の原野を拓いて建てているぐらいだし、根本的に都市計画からやり直さないと城壁の再建にも手を付けられない。

じゃあ、あの半壊した城壁を使って再建するのかと言えば、町が収まりきらなくて住民を守れない城壁なんて再建するだけの意味がない。

だから、再建ではなく丸ごと新造することになるんだろう。

「・・・領都を動かす計画で行くんだよね?」

「いくらかは、ですね。有事にレティアへ兵を送る必要が有りますので、南寄りに置いておく方が便利でしょう」

「・・・じゃあ、アレを移動させる必要は無さそう?」

私が指せば、みんなの目が家屋の上へヒョコッと顔を出している“獰猛くん1号”の両腕に向いた。

「ええ。こちら側からも森を拓くので有れば考える必要は有るでしょうが、今のところは原野を開拓した方が楽ですね」

誤解なく“アレ”が何を指すのかを理解してくれたマリッドさんが頷く。

原野の開拓か・・・。

ウォーレス領に―――、というか、隣国の脅威にビビっていたんじゃないかと思われる旧コーニッツ領の領都は、国境から距離を取るように領境から離れている。

国土と領民を背中に隠して守るように、国境ギリギリに置かれているレティアの町とは全然違うんだよ。

ウォーレス血統の気風を色濃く残しているピーシス家系が町を作り直すなら、マリッドさんのように国境へ寄せるように町を置こうと考えるのは理解できる。

旧コーニッツ家が逃げ腰だったお陰で、お誂え向きにウォーレス領寄りの土地は未開拓の原野だらけだからね。

「・・・分かった。動かす必要が出てきたら言ってね」

「了解しました。―――、それと、お客人を乗せる馬車が用意できております」

マリッドさんが指した先には、ピーシス領軍の兵士さんたちがテツさんたちを乗せる2頭立ての荷馬車を牽き出してくれていた。

「・・・ありがと。―――、テツさんたち、荷馬車で大丈夫?」

「おお。済まねえな。俺たちはぜんぜん構わねえよ」

平民というか、日本人のテツさんだけでなく、元王族のレイクスさんやケイナちゃんも気にした様子がなく頷いている。

「・・・じゃあ、テツさんたちも荷馬車に乗ってもらって―――、およ?」

私たちも出発準備を、と言い掛けたところへ、メイド服姿の女性が駆け寄ってくる。

息せき切って走ってきたのはダーナさんだ。