軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㊹

「“危険なモノ”って意味では、“敵意”だろうが他のものだろうが関係ねえと思うがなあ」

「・・・それはそうだけど、そのレイスに危険は無いってこと?」

何か自信が有りそうだなぁ。

「昔から、“危ねえ”のは分かるんだ」

「・・・ははぁん? “分かる”ねぇ」

第六感的な?

自分の勘に絶対の自信を持ってる?

さっきもテツさんが自信ありげに言っていた理由がそれってことで良いのかな?

バカみたいにタフなことと投石以外にも特技を持ってそうだなぁ。

言葉通りに捉えれば、テツさんは“危険なモノ”を察知する勘と投石の命中率に絶対の自信を持っていて、それは、こっちの世界に来る前からだと。

そして、その勘が問題のレイスを“危険のないモノ”と捉えているってことだよね。

テツさんは自分を強く見せようと大袈裟に誇張したり嘘を言ったりするタイプじゃなさそうだと思うんだけど、テツさんの勘をどこまで信じて良いものか。

「何だ?」

「・・・いや。別に」

テツさんの顔をジーッと見つめていたら首を傾げられた。

やっぱり、“嘘・大袈裟・紛らわしい”は無さそうだよね。

テツさんって動物的な本能に従いつつ自分をコントロールして生きてるタイプっぽいから、どこかの倫理向上機構みたいに偏った思い込みの判断では無さそう。

だったら、最低限の警戒心は残しつつ安全なモノとして考えてみるかな。

「見た方が早いよ」

私たちの睨み合いに苦笑したレイクスさんが、大きめサイズのスマホというか、小型サイズのタブレットパソコンみたいな大きさのプレートを2つ取り出してテーブル上に置く。

見やすいように、だろうけど、身を乗り出してテーブル上の”呪物"を私たちの方へズイッと押し出して来た。

ほほう。これが“呪物”かぁ。

お母様とルナリアと私の3人で首を伸ばして覗き込む。

さすがに3人とも、いきなり無警戒に手に取ったりはしない。

乳白色というか、火葬した後のお骨みたいな色に見えるのは、“骨と血と何やかんやを焼き固めた”と聞いていたことによる私の思い込みだろうか?

スマホの背面に見える部分の真ん中には、暗い灰色に濁った紫色の魔石が金具で固定されている。

あれは死霊系の魔石だね。

アクティブソナーを放つほどの距離じゃないから”呪物“に意識を集中すれば、確かに魔力の反応を感じ取れる。

「・・・ふむ?」

ひんやりとした特徴的な魔力の感触は、王都で暗殺者が使った魔法道具に嵌まっていた魔石から感じたものに似ているね。

魔石が内包している魔力の反応だけでなく、そこに”何かが居る”と感じる。

この感覚が死霊系の魔物の気配ってことで良さそう。

ルナリアと2人でジーッと”呪物”を凝視していると、サーベルに手を伸ばしているお母様が警戒心を隠さない声で注意を与えてくる。

「ルナリア。フィオレ。近付き過ぎるなよ」

「「はーい」」

興味津々なのに私たちの3人ともが手を伸ばさないものだから、面白そうに顔を綻ばせているレイクスさんが手を伸ばしてきて、コトリ、コトリと2つの”呪物”をひっくり返した。

「僕としては霊体系の能力を模倣して魔法道具の機能に再現しようとしただけなんだけどね。まさか、レイスそのものを利用できる可能性が有るとは思っていなかったよ」

スマホで言えばタッチパネルにあたる部分は黒い鏡面状に磨き上げられていて、呼び起こすようにレイクスさんが鏡面をタップ―――、指先でツンと突っつく。

「「「―――、!!」」」

鏡面にボウッと浮かび上がったのは、明らかに人間のものと分かる骨格のバストショットだ。

お母様はサーベルに手を掛けて、ルナリアと私は目を輝かせて、3人同時にガタリと椅子を押し退けて立ち上がる。

「本物のレイスか!」

「・・・ふおおおっ! 骸骨だよ! 骸骨!」

「これがレイス!?」

『クカカカカカ! コレガレイス!?』

私たち3人のものとは違う聞き覚えのない笑い声が食堂に響く!

聞く者を不安にさせるような声は、乾ききったような嗄れ声だ!

「「喋った!!」」

『ケケケケケケ! シャベッタ!』

マジか―――っ!

私たちが発した言葉をオウム返しに復唱してるじゃん!

何だコレ!? ゴースト何とか、って映画に出て来た騒がしいタイプ!?

幽霊って日本的イメージで元気のない声じゃないかと想像してたけど、この幽霊、めっちゃテンション高いよ!?

まだ剣は抜いていないけどサーベルの柄には手を掛けたままのお母様は、動くものを前にした猫みたいに身構えている。

「害は・・・無さそうか?」

「そう思うんだけどねー」

ゆるゆると暢気な声でレイクスさんが答える。

この人、緊張感ないなあ。

一応、魔物と呼ばれる非生物が目の前に居るんだけど、この余裕はどこから来るんだろう?

緊張感がないと言えばテツさんもだ。